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顧客満足度(CS)向上のための「3つの土台づくり」と「9つの具体策」

SNSや口コミの影響力が高まる中、顧客満足度(CS)向上は、今まで以上に企業にとって欠かせないテーマになっています。一方で、「施策が単発で終わってしまう」「何から手をつければいいのかわからない」といった悩みも少なくありません。本記事では、CS向上を一過性で終わらせず成果につなげるための「3つの土台づくり」と、すぐ実務に活かせる「9つの具体策」をわかりやすく解説します。

顧客満足度(CS)向上とは?

「顧客満足度を高める取り組み(自社の商品やサービスを利用したお客様の満足度を高める取り組み)」と聞いて、皆さんが思い浮かべるイメージはどのようなものでしょうか?「満足度調査の実施」「挨拶キャンペーン」などでしょうか?

もちろん、それらも効果的な施策ですが、全体像の中のほんの一部にすぎません。顧客満足度向上とは、単に「お客様に喜ばれること」を目指した取り組みではありません。お客様の満足感を高め、それを顧客継続率(リピート率)や良いクチコミの拡散につなげ、最終的には、企業収益につなげていく一連の取り組みのことを言います。

顧客満足度(CS)向上で目指すゴール

[図1]顧客満足度向上の目的_コラム:顧客満足度(CS)向上のためのシンプルな3つの法則

この観点から考えたときに、CS向上では何が大事になるのでしょうか。本記事では、そのポイントを「3つの土台づくり」と「9つの具体策」に分けて解説していきます。

顧客満足度向上が、今また重要視される理由

「顧客満足度」は、以前から経営の重要テーマですが、今あらためて注目が集まっています。その理由を見ていきましょう。

SNSの普及で口コミの影響力が上昇

SNSやインターネットが普及したことで、もともとは個人的なものだった顧客体験が、動画や投稿を通してあっという間に拡散するようになりました。

好意的な口コミは新しいお客様との出会いを生み出してくれる一方、不満の声も同じスピードで広がるようになり、顧客の口コミが企業に与える影響力は大きくなっています。

2022年にLetro(レトロ)が行った「生活者の購買行動におけるUGC(口コミやレビュー)の影響度調査」によると、生活者が商品購入や来店を意思決定する際に最も重要視する情報源は、

  • 1位:店頭(20.0%)
  • 2位:検索エンジン(15.8%)
  • 3位:SNSやネット上に発信される一般人からのクチコミや情報(10.2%)

の順となっています。口コミは顧客の購買行動を左右する無視できない情報源になっていると言えます。

[図2]顧客満足度の向上から生まれる良い口コミの重要度が増している_コラム:顧客満足度(CS)向上のためのシンプルな3つの法則
※「生活者の購買行動におけるUGC影響度調査 2022(Letro調べ)」を元に弊社作成

競合との差別化が難しくなった

似たような商品やサービスがあふれる時代になったことに加えて、顧客自身がインターネットやSNSを使って情報を簡単に手に入れられるようになりました。結果、他社製品との比較や口コミのチェックも容易になり、機能や価格だけでなく、トータルの顧客体験で勝負しなければ勝てなくなっています。このような時代の流れからも、顧客満足に取り組む重要性が増しています。

ロイヤルカスタマーづくりが競争力になるから

顧客満足度を高めるとどのようなメリットがあるのか?この問いに対する結論は論文によって少し違いますが、概ね共通しているのが次の3点です。

  • 顧客維持率の向上
  • 良いWOM(口コミ)の拡散
  • 顧客一人あたりの支出額の増加

たとえば、ヴィカス・ミッタルらが著した論文では、顧客満足度は「顧客維持率」「WOM(口コミ)」と強い相関を示し、「支出(購入点数や契約アップグレードの有無など)」「価格(価格満足度や支払い意思額)」とは中程度の相関があると結論づけています。

つまり、顧客満足度は単なる「感じのよさ」の指標ではなく、企業の業績に影響を与える重要な経営指標だということです。新規顧客獲得の難易度が上がっている現在、CS向上を通した「既存顧客の維持」や「ロイヤルカスタマーづくり」にあらためて注目が集まっています。

顧客満足度向上に欠かせない「3つの土台づくり」

CS向上に取り組む際は、まず「土台」を作ることが肝要です。この土台がないまま「挨拶キャンペーン」や「接客研修」といった個別の具体策に取り組んでも成果が出にくくなってしまうからです。以下3つの中に自社に欠けているものがないかチェックしてみてください。

[図3]顧客満足度の向上に必要な3つの土台づくり_コラム:顧客満足度(CS)向上のためのシンプルな3つの法則

土台①:CS志向の組織をつくる

顧客満足度の取り組みが失敗する典型例は、「担当者や特定の部署だけが頑張っているケース」です。まずは「CSを上げるのは自分たち全員の役割だ」という空気を会社全体に作りだすことが大切です。この土台がないと、現場のCS施策に対する実行力や、部門間連携から生まれる一貫性のある顧客体験を生み出すことができません。具体策としては、以下のような打ち手が考えられます。

●評価制度や部門目標との連動
CSを高める行動が評価されるように評価制度や部門目標を設計する。
●部門横断の推進体制
:営業・人事・商品開発など、CSに関わる部門が同じゴールを共有し、議論できる場を設ける。

土台②:顧客体験(CX)を適切にデザインする

組織全体がCS志向であっても、提供する「顧客体験(CX)の設計」がずれていると、満足度は高まりません。

たとえば「感動創造」を掲げるディズニーランドでは、清掃スタッフもショーの一員のようにパフォーマンスを行うことで、世界観への没入感を高めています。一方で、低価格で美味しいものを提供することで顧客の支持を得ている飲食店で同じことをしてもCSは高まりません。むしろ「オペレーションを簡素化する」「作業中の歩数を減らす」といった施策に取り組み、価格の安さをさらに追求する方がお客様の期待にあった価値を提供できます。

“誰に・どんな価値を・どう届けるか”というブランドコンセプトが明確か、サービス設計が適切か。この点が曖昧だと、現場の判断基準がブレ、CSは伸びません。

土台③:顧客満足度を計測する

モノづくりの現場で品質を数値化してそのスコアを高めていくように、サービス業の現場でも顧客満足度を数値化してそのスコアを高めていく活動が必須です。見えないものはマネジメントできないからです。CS向上に取り組む際は、顧客満足度(CS)調査を実施して、今の状態を正しく把握することが欠かせません。

3つの土台づくりで、CS・売上を同時に伸ばした成功事例

イタリアンや焼鳥ダイニングを運営する株式会社イーストン様は、中長期計画で「北海道の魅力を伝える」という方針を掲げ、「北海道らしさ」と「生産者のこだわり」が伝わる接客やメニューの見せ方を顧客体験(CX)の核に据え、他社との差別化要因にしています。

そして、この活動がお客様にきちんと届いているかをチェックするために顧客満足度(CS)調査を実施。調査レポートは、アルバイトを含めた全スタッフに共有し、調査レポートから気づいたことを入力する「気づきコメント」の店舗ごとの提出状況を管理指標として追うことで、「CS調査→振り返り→改善」のサイクルを現場レベルで定着させることに成功しました。

また、現場が本気にならなければ成果は出ません。同社は、CS調査スコアを人事評価指標に組み込み、CSを全社の共通目標としました。結果、売上昨年対比100%超えを維持しています。3つの土台をそろえたことでCSと業績の両方を伸ばした好事例です。

「3つの土台」で長期的なCS向上を実現

[成功事例]3つの土台づくりでCS・向上の長期的な向上に成功した事例_コラム:顧客満足度(CS)向上のためのシンプルな3つの法則

顧客満足度を上げる9つの具体策

「3つの土台」を固めたら、次は自社にあわせた具体策に取り組むフェーズです。最終的には、「社員一人ひとりがお客様の方を向いて働く会社」や「CSが改善され続ける仕組み」を作りあげることが強い会社づくりにつながりますが、その実現にはどうしても時間がかかります。本記事では、

  • すぐに効果が出やすい短期施策

  • 会社の文化を変えていく中長期の本質的な施策

と2つの時間軸にわけて、CS向上の打ち手をご紹介します。実際は自社の状況を分析して、適切な打ち手を選ぶ必要がありますが、「この施策は自社にもあっているのじゃないか?」と発想を広げる参考チェックリストとして以下の情報をご活用ください。

すぐに効果が出やすい短期施策

●「待ち時間」を減らす

顧客満足度を決める要因は、品質や価格など様々ありますが「時間」も重要な要因です。サービスの一連の流れを棚卸しして、次のようなポイントを洗い出しましょう。

・比較的簡単に時間を短縮できそうなポイント(例:梱包材を工夫してラッピング時間を短縮する)
・お客様の負担感の高いポイント(例:お会計時間を短縮する)

「待ち時間を減らす」取り組みは、CS向上はもちろん、同じ時間で対応できる顧客数が増加する=売上向上にもつながる良策です。

●「お客様の手間」を減らす

お客様が「面倒くさいな」と小さなストレスを感じている場面は、CS改善につながるポイントです。顧客接点の一連の流れの中で「お客様に手間をかけすぎているポイント」がないか改めて点検してみましょう。例えば、次のような施策が考えられます。

<お客様の手間を減らす施策例>
・会員登録の項目を「本当に必要な情報」だけに絞る
・レジでスタッフが確認していることの一部を掲示で代替する

「会社にとっては便利でも、お客様にとって手間や負担になっているポイントはないか」という視点で顧客接点を見直してみましょう。

●「お客様の喜びの声」を社員に共有する

「やらねばならない」と「やりたい」では、当然ですが、「やりたい」の気持ちで仕事に臨んでいる社員の方が創造力も実行力も高まります。そして、CS向上というテーマにおいて、社員のやる気スイッチを入れる最強の方法は「お客様の喜びの声を共有すること」です。

お客様から届いたクレームの内容を全体に共有している会社は多いと思いますが、お客様から届いたお褒めの言葉も共有しているでしょうか?

弊社が行っているES調査のデータを分析すると、社員の「仕事への誇り」が高い企業では、CS調査スコアも高い傾向にあることがわかっています。「自分達の仕事はお客様に喜ばれている」、社員のその自信がCS向上の強力な推進力になります。まだ「お客様のお褒めの言葉」を社内で共有していない場合は、ぜひ挑戦してみてください。

●業務マニュアルに「心構え」も記載する

どんなサービスも、そこに「心」がなければお客様に届きません。一方で、マニュアルが覚えるべき業務の羅列になっているケースが多々あります。マニュアルの折々に「この業務はお客様にどのような価値を届けたくてあるのか」や「この業務を通してお客様にどのような体験をしていただきたいのか」といった"顧客目線での業務の意味"を掲載しましょう。特に、仕事の仕方の型を覚える時期にあたる「新人マニュアル」では必ず盛り込んでほしい事項です。

[図4]業務マニュアルに顧客目線も記載する_コラム:顧客満足度(CS)向上のためのシンプルな3つの法則

中長期施策

●重要接点を特定して集中改善する

サービスは、「顧客接点の連続」で成り立っています。とはいえ、すべての顧客接点を一度に改善しようとすると現場に無理が生じます。お客様の心が大きく動く顧客接点を特定し、そこに現場の力を集中させるのが顧客満足度改善の近道です。ある一点に集中することで、現場が「何をすればいいのか」をシンプルに理解できるという意味でも、CSが伸びます。

●サービス提供の「ばらつき」を減らす

サービス業でCSが伸び悩む要因のひとつが、拠点・担当者ごとのサービス品質の差です。「人によって当たり外れがある状態」は、顧客の不安と不満を生んでしまいます。CS調査を行う際は拠点ごとのサービス品質のばらつきを見える化し、改善していくことも重要です。

●CS改善のサイクルが回り続けるようにする

CS向上において大切な点は、CSの測定 → 課題整理 → 改善 → 再測定のPDCAサイクルが回り続ける状態を作ることです。

・月次や四半期でCSを定点調査
・全社や組織単位の課題を整理
・CS施策の立案と実行のマネジメント

など、習慣化されたCS改善サイクルが作れた企業ほど、CSは着実に上がります。このCS改善サイクルを作りあげるのは一朝一夕ではなかなか真似ができないため「強い企業の土台づくり」ともなる良策です。

●評価指標にCSを取り入れる

CS向上を「かけ声」で終わらせないために欠かせないのが、評価指標への組み込みです。現場からよく聞く声は「CSが大事なのはわかるが、結局のところ評価されるのは業績」という声です。これでは、どれだけCSの重要性を伝えても、行動の変化は起きづらくなります。

たとえば、
・管理職の評価に、CSスコアや推奨意向を組み込む
・CS向上に取り組み、業績成果につなげたチームを表彰する

といった形で、「お客様に向き合う行動が正当に評価される仕組み」を作ることが重要です。

●顧客目線で定点観測する

CS向上を実現するには、「自社のサービスが顧客からどう見えているのか」を定期的に確認することが欠かせません。定点観測をすることで、
・サービス品質の劣化を早期に発見できる
・CS施策の効果を検証できる
・改善ポイントを整理できる
・現場に健全な緊張感が生まれる

といった効果が期待できます。「お客様アンケート」「覆面調査」など、複数あるCS調査手法から自社に最適なものを選択しましょう。CS向上を一過性の取り組みではなく、日常の経営管理として根づかせるための重要な打ち手です。

<顧客満足度(CS)調査・代表的な手法>

調査手法(詳細)

概要

来店客調査

来店した顧客に、携帯やハガキでアンケートを依頼。来店客へのCS調査となるため、店舗ごとのCS測定や、店頭キャンペーンの効果測定にも向いている。

ユーザー調査

自社が保有する顧客リストに対してメールでアンケートを依頼する。商品にアンケートを添付する方法もある。

インターネット調査

調査会社が保有するモニター会員の中から、自社や競合ユーザーを抽出し、インターネットアンケートに回答してもらう。大量のサンプルを集められるメリットがある。

店頭調査

来店した顧客に調査員が質問する。顧客の回答にあわせて追加で質問ができるため、深く状況を理解することができる。調査員によるバイアスがかかる点には注意が必要。

グループ

インタビュー

自社の顧客リストや調査会社のモニターの中から条件にあう人を選び、会場に集まってもらう。参加者同士の意見交換を通してニーズや本音を深く掘り下げることができる。

覆面調査

(ミステリーショッピング)

調査員が一般客として店舗やサービスを利用し、その体験を評価する。「設問を多く設定できる」「コメント回答が豊富に集まる」ため、具体的な改善点を把握しやすい。

まとめ:CS向上は「土台×具体策」のかけ算

顧客満足度は、場あたり的な施策の足し算では高まりません。3つの土台(CS志向の組織づくり/CXの設計/CSの計測)で土台をつくり、その上で具体策に取り組む。まずは、この順番を守ることが大切です。
弊社では、覆面調査「ミステリーショッピングリサーチ」をご提供しています。設問設計はもちろん、組織の特性にあった調査結果の活用法の設計まで、専任の担当者がサポートしています。CS調査をご検討の方や、CS調査の活用レベルを一段引き上げたいとお考えの方は、一度サービス内容をご覧ください!サービス詳細はこちら→https://www.msandc.co.jp/msr

コンテンツ開発室 児玉彩子
コンテンツ開発室 児玉彩子
慶應義塾大学 経済学部を卒業後、経営コンサルティング会社に入社。多岐にわたる業界の組織開発コンサルティングに従事。2008年よりMS&Consulting所属。顧客満足度、ならびに、従業員エンゲージメントを高めるコンサルティングを担当後、組織開発や従業員エンゲージメントに関するコンテンツ執筆を担当。JHMA認定ホスピタリティ・コーディネーター。

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