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覆面調査を正しく使うための「HERB研修」

株式会社キングファミリー

兵庫県高砂市米田町米田1097

ウェブサイト:http://www.kingfamily.co.jp/


『季刊MS&コンサルティング 2009年春号』掲載
取材:駒澤真由美、文:西山博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

「お客様の思い出の詰まった大切な衣服を無駄にしない」という方針に基づき、「古着屋」ではなく「リサイクルショップ」として全国に80店舗以上を展開するキングファミリー。重量による商品買取、独自の海外販売ルート開拓など、ユニークなビジネスモデルでも注目されている。代表取締役社長 黒川芳秋氏にお話を伺った。

成熟期を迎えるリサイクル業界におけるCSの重要性

ビジネスモデルやブランド名の変更はありますが、弊社ではもう20年以上、リサイクル業態と関わっています。ただ、会社を立ち上げた当初は、リサイクルショップというもの自体が新しい業態であり、これまではその目新しさだけで経営ができてしまう面がありました。もちろん中には、業態の力に頼らず、店舗の力で売上を伸ばしているような店もありますが、残念ながらまだそれが標準化できている状態ではありません。小売業という観点から見ると、最低ラインにさえ到達できていない店舗も多いのではないかと思います。

しかし昨今ではリサイクルショップの数も増えており、業界として急速に成熟化が進んでいます。こうした環境変化の真っただ中にあって、CS向上が重要なテーマとなってきていることはずっと感じていましたが、それを具体的にどうやって実現するかという方法が、なかなか見つかりませんでした。外部講師を招いて勉強会をしてみたりもしたのですが、それだとやはり間接的と言うのか、なかなか参加者の気持ちに入り込まないのですね。そのせいで、どうしても全体に広がっていかない。「話を聞いて、終わり」となってしまい、成果につながらないことに悩んでいました。

そうしたときに、ある埼玉県のフランチャイジーからミステリーショッピングリサーチ(以下、MSR)の紹介を受けたのです。その企業さんが独自でMSRを導入したところ、成果が出て、業績も上がったとのことでした。さらに詳しいお話を伺ってみたところ、「これは是非とも店舗に導入すべき」と思えたので、さっそく2008年8月から全店調査をお願いすることにしました。

代表取締役社長 黒川芳秋氏


良いものは正しい使い方をしなければならない

また、MSRと同時に、HERB研修(※)も導入することにしました。なぜかと言うと、「良いものは、正しい使い方をしなければならない」と思ったからです。

※HERB研修:ミステリーショッピングリサーチによる気付きを促進し、成功事例の共有と改善運動をサポートする研修。

MSRの説明を初めて伺ったときに、良いものだとは感じましたが、一方で、若干の不安もありました。お客様の生の声というのは、スタッフに非常に大きな影響を与えるものですから、それを良い方向に捉えて活用してくれれば良いけれども、知識がないスタッフにいきなりお客様の声だけを見せると、マイナスの方向に捉えてしまう恐れがあるのではないかと思えたのです。

FC本部として新しいシステムを導入する以上は、それを正しく使えるようにフランチャイジーに伝えることも仕事です。弊社にとっては、店舗に来られるエンドユーザーだけではなく、FC店舗も大切なお客様ですから、弊社の顧客満足度を上げるためには、我々がまず、MSRの正しい使い方を理解しておかなければならないということですね。

このように、研修導入を前向きに考えていたところに、SVから「MSRを有効に活用するために、予算外だけど、研修を導入して勉強させて欲しい」という稟議が上がってきたんですよ。これまではあまりそういうことがなかったものですから、MSRの導入を機に、自分達で考える姿勢が出てきたことが、大変嬉しかったですね。


店長の素質を再発見することができた研修会

MSRを実際に導入してみて分かったのですが、拒否反応というか、マイナスに捉える方はごく一部で、ほとんどの方はとても前向きに捉えて下さいます。

研修内容は、店長が「MSRの活用の仕方」、SVは「それを教える技術の習得」と、二つの目的を同時にやろうということで、店長を対象として研修をして頂き、そこにSVが同席するという形で行っています。

研修に参加した店長達からも良い反響をたくさん頂いていて、中でも一番よく聞かれたのは「分かりやすい」「納得できる」という声でした。研修といっても、講師が一方的に話して、それを聞いてメモするというものではなくて、一つのテーマに対してまず自分で考えて、小グループで議論をして、答え合わせをして…というストーリーが組み立てられていたり、ロールプレイングや、ときには身振り手振りなども交えて、体感できるような場面もあり、受け身ではなく、自然と自分から積極的に参加できるような内容になっているのが良いのだと思います。

同席したSVは、今までも店長達に色々とお伝えしてきたけれども、なかなかそれを納得してもらえない、動いてもらえないという点での悩みが多かったので、研修に参加して「こんなやり方があるんだ」と、これまた非常に勉強になったようでした。

また私も前回の研修に同席したのですが、以前から知っている店長が活発に発言している様子を見て、意外というか、失礼ながら「こんな発言ができる店長だったのか」という驚きを感じる場面もありまして、私としては、「本当は高い素質を持っている店長なのに、我々のやり方がまずかったせいで、その力を発揮しきれていなかったんだな」と、自分の至らなさを味わう気持ちでもありました。


ボトムアップでできあがった仕組みは強い

まだ取り組み始めたばかりで、本格的な動きはこれからという段階ですが、今後はMSRを活用して、最初に申し上げた「小売業としての最低ライン」に立つことがまず先決と考えています。これまでは、少しでも多く買い取ろう、品揃えを少しでも充実させようと、目先の課題を何とか解決する形でやってきました。しかし、小売業の基本に立ち戻ると、「お客様の目線で物事を見る」という一番大切な部分がまだまだ不十分だと感じます。まずはその部分を徹底して、小売業のスタートラインに立つことを目指します。

それが実現できれば、次の展開が見えてくるはずです。お客様目線で物事を見ることができるようになるということは、お客様の潜在的なニーズを素早く察知できるということでもあります。そうなれば、それに応じた新しい業種・業態を考えるということにもつながるでしょう。

こうした段階に到達できるまで、早いに越したことはありませんが、私はこの三年が勝負だと思っています。現在の経済状況はリサイクル業にとっては追い風で、昨年度も数字としては十分な成長をすることができています。

しかし三年後には、また状況は大きく変わっているはずです。ですからこの三年間にそうした状況変化に耐えうるだけの組織を作らなければならないと考えているのです。

しかし、先ほどお話したステップを踏んで変革をしていけば、それは十分に実現可能な話だとも考えています。なぜなら、ボトムアップでできあがってきた仕組みというのは、強いものだと思うからです。


真の循環型社会の実現を目指して

お客様から買取させていただいた古着はあらゆる形で、リサイクル・リユース・リデュース致します。サイズが合わなくなったもの、一昔前のデザインやノーブランド品でも大丈夫です。「捨てるのはもったいない、でも…もう着ないし…。」という衣服達は、再度新たな場所で、輝きを取り戻しています。また店内では手頃なお値段で古着が販売されており、「おしゃれ」を楽しむことができます。弊社のお客様の中には「思い出を売って、新しい思い出作りを買っていく」方がたくさんいらっしゃいます。


「お客様の思い出の詰まった大切な衣服を無駄にしない」ために

お客様から買取させていただいた古着はあらゆる形で、リサイクル・リユース・リデュース致します。サイズが合わなくなったもの、一昔前のデザインやノーブランド品でも大丈夫です。「捨てるのはもったいない、でも…もう着ないし…。」という衣服達は、再度新たな場所で、輝きを取り戻しています。また店内では手頃なお値段で古着が販売されており、「おしゃれ」を楽しむことができます。弊社のお客様の中には「思い出を売って、新しい思い出作りを買っていく」方がたくさんいらっしゃいます。

キングファミリーが95%以上(2009年3月時点)の古着を買取れる仕組み
(1)希少価値ではなく、衣服そのものの価値を評価する「重量による買取」
(2)汚れ・破れがあるような衣服以外は、ほぼ全ての商品が買取可能
(3)目効きを必要としないため、多店舗展開が可能


買い取り実績
キングファミリー創立時(2000年)からの累計買い取り枚数は、159,024,000枚。


買い取りシステム
買取コーナーで分類、すべてkg単価にて査定。
・お店で販売できる古着:150円/kg
・服飾雑貨、小物:100円/kg
・リサイクル資源になる衣料:1円/kg
※一部の店舗では衣類を一律30円/㎏で査定。


海外への輸出:古着の輸出シェア国内1位
キングファミリーで買い取りされた古着は、自社のリサイクル拠点に集められ、圧縮梱包される。


海外への輸出
圧縮梱包した古着は、海上コンテナへ積まれ、東南アジア、アフリカ、南アメリカなどの地域へ輸出。


海外でのリサイクル(1)
輸出先で古着として利用可能な古着は、輸出先にて販売される。
海外でのリサイクル(2)
海外の他業者によって綿製品等は、工場で機械の油を拭き取る工場用雑巾(ウエス)として各工場へ。またウール製品等は反毛の原料になり、フェルト等の商品に加工される。


■担当コンサルタントが語る この企業はここが凄い
株式会社MS&Consulting 駒澤真由美

熱い企業です。本部の方々やFC店の店長の方々と接しておりますと、「お客様の思い出の詰まった大切な衣服を無駄にしない」という想いがひしひしと伝わって参ります。その企業理念に共感されたお客様と共に発展してこられたのではないかと思います。かくいう私も、一消費者(顧客)としてキングファミリー様のファンです。
また、FC店を支援されるスーパーバイザーの方々に「アナライザー(計画・分析を重視する勉強家)」が多いのもユニークな特徴の一つかもしれません。そして、趣味か仕事か分からないほど熱中される個性豊かな支援集団は、今後さらに各人の強みを共有し、チェーン店として組織機能のパワーアップを図られることでしょう。


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