装置産業からの脱却が求められるゴルフ練習場

株式会社ゴルフパートナー

東京都中央区日本橋本町3-7-2

ウェブサイト:http://corp.golfpartner.co.jp/


『季刊MS&コンサルティング 2009年春号』掲載
取材:小林貴志、文:西山博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

ゴルフ練習場運営において、装置産業からサービス産業への転換を目指す株式会社ゴルフパートナー。これまでの用品ショップ運営の中で培ったノウハウと、ミステリーショッピングリサーチ活用の二本柱で、「半日楽しめる練習場づくり」に取り組む。取締役兼執行役員FC本部長 後藤泰明氏、FC開発部主任 柳数也氏に、その具体的内容を伺った。

装置産業からの脱却が求められるゴルフ練習場

ゴルフの練習場というのは、これまで「装置産業」の考え方が強く、立派な設備を作って、外装を綺麗にすることが重視されてきました。特に、バブル期のブームに乗って投資案件のような発想で作られた練習場では、そういう考え方が根強く残っているところが多く、「サービスに力を入れる」ことに対する優先順位が低いというのが現状です。しかし、それではいけないと。昔はハードさえしっかりしていれば、お客様に来ていただけましたが、ゴルフ人口自体が以前に比べて大幅に減少している中、サービスに力を入れることで、お客様に満足してもらう練習場ではなく、感動してもらえる練習場にしなければいけないという思いが、我々にはありました。

ゴルフ用品のショップを運営している弊社がゴルフ練習場運営に参入していったというのも、そういう想いがあったからで、ショップで培ったサービス精神をそのまま練習場運営に持ち込むことができれば、お客様に本当に喜んでもらい、感動して頂ける練習場が作れるのではないか、それが業界の活性化にもつながるのではないかと考えたのです。

取締役兼執行役員FC本部長 後藤泰明氏

最初は、経営が厳しい状態にあった練習場を買い取るところからスタートしたのですが(図表1)、挨拶や接客、クレンリネス等を、ショップと同じ考え方で運営してみたところ、お客様がみるみる増えて、今では片道一時間もかけて来て下さるお客様がいらっしゃるまでになりました。

弊社がミステリーショッピングリサーチ(以下、MSR)を導入したのも、こうした我々のサービスレベルを向上させるための様々な取り組みについて、定量的・客観的に測る尺度として使えるのではないか、結果指標の一つとして使えるのではないかと考えたからです。

図表1


お客様は「施設」だけで練習場を選んでいないことが実証された

MSRの調査結果を見て一番に感じたのは、「私たちの仮説は間違っいなかった」ということです。というのも、練習場によっては、設備が立派で見た目もきれいな新しいところよりも、やや老朽化しているような練習場のほうが、点数が高いという結果も出たのです。設備と顧客満足度が必ずしも相関するわけではないこと、言ってみれば「お客様は、施設だけで練習場を選んでいるわけではない」という仮説に確信が得られました。このようなデータを得られたことは、FCを運営していくSV部隊として非常に有意義で心強いことだと考えています(図表2・3)。


図表2:ドライブタイム別会員構成比(多摩練習場)

約4割のお客様が40分以上かけて来場している。
ドライブタイム別会員構成比や顧客意識調査からも、立地やハード(施設・設備)よりもソフト(雰囲気・サービス)に対する評価が、ゴルフ練習場選びに大きく影響している結果が読み取れる。


図表3:顧客意識調査アンケート結果

Q:当練習場(ゴルフパートナー直営練習場5店舗)へご来場いただける理由をお聞かせ下さい。
1位 気軽に練習ができるから(38.0%)
2位 試打できる、クラブが探せるから(26.4%)
3位 雰囲気がよく入りやすいから(17.0%)
4位 ボール、マット等が良いから(14.0%)
5位 その他(4.5%)


また、MSRの良い点として、FCの日常の運営全体を見渡せるという点が挙げられます。直営店に関してはレンジもショップも全て運営できるわけですが、FCに関しては、ショップ以外にはなかなか目が行き届かないし、口を挟みにくいという面があります。

しかし、レンジとショップを一体化して運営できるということが、弊社の練習場における顧客満足度には重要となってきます。ショップで販売しているクラブの試打がすぐにできるのは、他の練習場にはない特色ですから、その特色を十分に活かすためには、ショップだけではなく、レンジの部分と上手に連携が取れているということが必要なのです。その点MSRでは、これまで見えにくかったFCのレンジ部分の運営にも目が行き届くようになりますので、私たちが提唱している「ゴルフパートナー流の経営」ができているかどうかも一目瞭然になります。


研修で「考える基礎」を作り、自立を促す

また、点数として数値化されるだけではなく、我々の取り組みに対する反応が「お客様の生の声」として届くというのも、意味があることだと感じています。サービスレベルの向上というのは、サービスを提供する現場のスタッフが変わらないと実現できないことで、トップダウンではできない、仮にできたとしても一過性のものに終わる可能性が高いものです。もちろん弊社のFCの皆様は、我々の考え方に賛同して下さったからこそ加盟して頂いているわけで、少なくともトップの経営陣は、「サービスレベルを上げていこう」という気持ちを強くお持ちです。でも、現場のスタッフさん達にしてみれば、そんなことは全く預かり知らぬことですから、そういう人たちの意識を変えていくためのツールとしても、お客様の生の声を届けてくれるMSRは、非常に有効に機能していると思います。

実際に、これまで本部が「こういうところを改善して下さい」と再三にわたってお願いしていたFCさんがあります。これまではいくら言っても「もうやっている、できている」という反応しか返ってこなかったのですが、それがMSRを導入して、お客様から同じことを指摘された途端に、すぐさま改善されたというケースがありました。

結局、指導をする、教育をするというのには限界があるということなのでしょうね。人の考え方というのは、そう簡単に変えられるものではありません。それを変えるためには、自分ではできているつもりになっていることが、本当はできていないということに、自分自身で気付かなければなりません。お客様の声というのは、サービスマンにとっては神の声であり、そのお客様から「できていない」と言われて、初めて気が付くことができる。MSRはお客様の声を仲介して気付きを与えるツールなのだと思います。


ゴルフ練習場のディズニーランドを目指そう

我々が理想とするのは、半日いても楽しい、半日遊べる練習場です。たとえば、来週の日曜日にゴルフに行くことが決まったゴルファーが何を考えるか。まずは練習に行きたい。それから、ボールやグローブを新しく買いたい。あとは、もうちょっと飛距離が伸ばせるクラブがあれば良いな…。そういうニーズが、ゴルフパートナーの練習場ではすべて満たせて、ゴルフそのものだけではなくて、その準備のための時間も楽しく快適に過ごせる。実際のところ、何百本というクラブを試打できて、今のクラブの買い取りもできるという練習場はありませんからね。

最近ではよく社員に「ゴルフ練習場業界のディズニーランドを目指そう」と伝えていますが、ゴルフ練習場と遊園地というのは、非常に近い業態なんですね。両方ともこれまで、冒頭でお話した「装置産業」というキーワードで語られてきた業界です。遊園地も、これまでは、ジェットコースターの最大速度であるとか、長さであるとか、そういった部分を売りにしてやってきた業界です。しかし、20年以上前にスタートした東京ディズニーランドが今や業界の中で一人勝ちの状態にあるわけです。それは、お客様に対する姿勢が違うからですよね。立派な装置を置いておけばそれでいいだろうと考えていた遊園地がどんどん潰れていく一方、お客様満足を追求し続けたディズニーランドは過去最高益を出すまでに成長しています。

そして近い将来、ゴルフ練習場も、同じような二極化が進んでいくと思います。ですから私たちは今、ゴルフ練習場のディズニーランドになるために、装置ではなくお客様満足度の向上に取り組んでいるのです。


リニューアル事例:日高練習場 ~before(左)& after(右)~

クラブハウス外装

以前は特に特徴のないゴルフ練習場だったが、

外壁塗装を行い、

のぼりや看板を設置することで遠くからでも目立つ店舗へ。

クラブハウス内装

待合スペースだったところに、

路面店と同様のインショップを併設し、

店内の中古クラブを打席で無料で試打することが可能に。

フロント

殺風景だったフロントの壁、照明を変更し、

店内を明るく見せると共に、

ポスターやPOPを使って楽しい雰囲気を演出。

打席

ショップ導入時に打席マットは全て新品、

ボールは全てレンジ用ツアーステージウレタン公認球に。

定期的な交換で、お客様の使い心地の良さを演出した。



■担当コンサルタントが語る この企業はここが凄い株式会社MS&Consulting 小林貴志

ゴルフパートナー様はゴルフ練習場に自分たちの中古クラブショップを導入するだけではなく、担当者が加盟された店舗に定期的に訪問し、コミュニケーションを取り続けることで練習場の状態を常に知り、練習場の課題をFC店舗の方々と共有して、ともに考えながら改善に向けて活動を行っています。簡単に言えば、ゴルフ練習場をトータルでサポートするコンサルティングを行っているのです。そうした徹底的に改善のサポートをするという姿勢と取組みが練習場からもお客様からも評価され、今日のゴルフパートナー様加盟店の成果につながっているものと思われます。


記事のPDFをダウンロード​​​​​​​

この記事を読んだ人は、こんな記事も読んでいます。

無料メルマガ会員に登録すると、メールマガジンで
「最新記事」や「無料セミナー・イベント」
情報が届きます!

pagetop