【第7回クオリティサービス・フォーラムレポート】 商品、提供品質、サービスを抜本的に見直してCS向上



株式会社麺食

URL:http://ban-nai.com/
代表者:中原明 代表取締役会長、中原誠 代表取締役社長
所在地:東京都大田区大森北2-14-2 大森クリエイトビル6階・7階
設立:1988年5月
事業内容:喜多方ラーメンのフランチャイズ運営
展開するブランド:喜多方ラーメン坂内、喜多方ラーメン小法師、坂内食堂
社員数:正規40名、パート・アルバイトなど255名(直営店のみ)


※『季刊MS&コンサルティング 2014年冬 特別号』掲載
※記載されている会社概要や役職名などは、講演(掲載)当時のものです。ご了承下さい。


成長期を経て衰退期へ 抜本的な改革が必要

レストランチェーンなどを経て8年前に株式会社麺食に参画、2012年6月に代表取締役に就任した中原誠氏より、CS向上のために推進した新商品開発の取り組みや「MS改善プロジェクト」が紹介された。


1988年に創業した同社は、比較的パンチの効いたラーメンが主流の業界において、さっぱりした「支那そば」が特徴。手作りにこだわり、リピーターも多く、2013年9月時点で直営店既存店の前年対比は14カ月連続で100%超となっている。

その背景には、中原氏が指揮を執ったCS向上施策がある。一見、業績は安定的に推移しているようだが、「企業としては成熟期を過ぎ、衰退期に差し掛かっているのでは」という懸念があったという。

「看板商品の喜多方ラーメンと、それに次いで人気のある焼豚ラーメンを押さえれば大丈夫だという考えがどこかにありました。『正直においしいものを提供』すること自体は間違ってはいませんが、やはり競争が激しい業界では取り残されている感がありました。2010年から導入していたMSも、はじめは160点台と決して高くなく、井の中の蛙になっていたと思います」。そこで、質の高い商品を提供する、という原点に立ち返りながらも「改革が必要だ」との思いを固め、

商品開発の改革
提供品質の強化
サービスレベルの改善
の3プロセスの抜本的な改善活動に着手した。


まずは実態を把握するべく出口調査を実施。顧客の年齢層は確かに広いが、30~40代に比べて一般的にラーメンを好む20代が少なかった。今後の企業の成長を考えても、若年層の取り込みがポイントになることが伺えた。

商品開発の面では、その点も含めて、競合店を見るのではなくラーメンを“料理”として捉えて考え直す計画を立てた。中原氏はレストランチェーン勤務時の同僚であったシェフを呼び寄せ、和洋中、エスニックなどさまざまな料理のジャンルからヒントを得ながら、坂内のブランドカラーに合うアイデアを模索。「より顧客にアピールでき、若い人も見据えた開発を考えるうちに、あまりラーメン業態には例がない季節商品の投入を決めました」と中原氏。


「MS改善プロジェクト室」を設置、全社的に取り組む

例えば、若い人が好む辛いラーメンでも、よくある真っ赤なラーメンは競合が多く、坂内にそぐわないのではないか。そうした議論の末、2012年冬に生まれたのが、ペペロンチーノから着想を得た「青唐うま塩ラーメン」だ。白菜やニラなどの季節野菜が豊富な点も評判を呼び、以降の冬にも限定で登場、夏には冷やしにして販売するほど人気が定着した。ほかにも、2カ月ごとの季節商品の開発・投入を今も進めている。


次に注力したのが、提供品質の強化だ。「私は何事も、体験が大事だと思っています」と中原氏。高品質の商品を提供するには、提供側がその良し悪しを知らなければいけない。そこで「おいしいラーメンプロジェクト」と題したプロジェクトを立ち上げ、現場スタッフに「適温のラーメンとぬるいラーメン」「坂内の麺に合う、やさしく湯切りした麺と、荒々しく湯切りした麺」をはじめ、さまざまなパターンの違いを体験する研修を継続的に実施した。

思わぬ効果として、「チームの状態も分かるようになった」と中原氏は話す。「朝と夕方にスープの温度を確認し、本部に報告してもらっていますが、ブレが多い店舗はチームビルディングがうまくいっていないことが多い。品質管理の取り組みから、こうしたことも追えるようになりました」。


サービスレベルの改善には、「MS改善プロジェクト室」を立ち上げ、ミステリーショッピングリサーチ(以下、MSR)を使った抜本的なサービス改善に取り組んだ。調査レポートを基に気づきシートを記入するところから、一連のPDCAを45日間で回すサイクルを標準化。継続的かつ組織的な取り組みとして、各店舗への浸透を図った。「室長に、当社で長くFC店のオーナーを務めてくださった人を迎えられたことも、現FC店オーナーへの説得力という点で非常によかった」と中原氏。


この点も、先の提供品質の体験と同様に、「MSRによるサービス改善を現場に体験してもらうことが大事」だと中原氏は考えた。例えば商品を出す際に「熱いのでお気を付けください」と一言添えるかどうかで、顧客の印象が大きく変わる。「声かけを『しよう』というだけではなかなかできないので、最初はトップダウンで義務化しました。すると見事にMSRに反映され、現場にも、MSRの中にいろいろなヒントがある、もっと活かせるという雰囲気が広がりました」。

ほかにも、東日本大震災の被災地への炊き出し活動を通したスタッフの意識の変化が紹介された。「おいしいものを通して喜んでいただきたい、その原点に立ち返れば店が変わる」と、中原氏は数年にわたる改革の手応えを語った。

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