【第7回クオリティサービス・フォーラムレポート】 各スタッフが主体的に取り組む環境を 文化として根づかせ成果を出し続ける



株式会社MASHU

URL:http://www.mashu.jp
代表者:増成進 代表取締役社長
所在地:大阪府東大阪市小阪本町1-12-5
設立:1989年4月
事業内容:美容サロンの運営
展開するブランド:リュミエ・ドゥ・マッシュ店、マルケ・ドゥ・マッシュ店、あべのNiNi店、NU茶屋町店、グランバーズ店、アドベ店、マシェラ店、aTe店
社員数:正規196名、パート・アルバイトなど10名


※『季刊MS&コンサルティング 2014年冬 特別号』掲載
※記載されている会社概要や役職名などは、講演(掲載)当時のものです。ご了承下さい。


スタッフに響く言葉選びを重視  企業理念を理解し共感してもらう

競争の激しい理美容業界において選ばれる店になるためには、顧客感動を創出するおもてなしが不可欠となっている。成功のプロセスとしては、まず社員のやり甲斐を創造し、それをお客さまへしっかりと伝え、満足してもらう。そして、その結果として、業績にもつながる。こうした成功の連鎖を生む「サービスプロフィットチェーン(SPC)経営」が求められている。


このSPC経営を実践し、顧客満足度を高め、再来店率を向上させているのが、大阪府内で美容サロン10店舗を展開する株式会社MASHU(マッシュ)だ。美容業界における顧客満足度調査の平均スコアが167・5点であるのに対し、同社では、直近3か月の平均で180点にほぼ近いスコアを獲得。新規再来率は57・7%で前年比108%、総客数は1,512人で前年比112%と伸長させている。

「マッシュの目標は、世界平和」と話すのは、代表の増成進氏。「家庭を守る主婦に魅力的になってもらい、心豊かに過ごしてもらうことで家族平和をつくり、その家族平和の集合体によって、世界平和を生み出していくことを目指します」と説明する。

このようなインパクトのある表現で企業のビジョンを語るのは、増成氏が「言葉」を重視しているからだ。「美容室のスタッフは若い人が多いので、経営理念や地域の貢献といった難しい言葉を並べても響きません。言葉を吟味しながら分かりやすく表現して、現場に理念を伝えることに時間をかけ、企業風土を培っていくようにしています」(増成氏)

同社の使命として掲げているのは、“一人でも多くのお客さまに常に美しく、魅力的になって頂き、より豊かな日常を過ごして頂くこと”。これを実現するためにスタッフ全員で知恵を出し合い、取り組んでいる。


努力の先に何があるのか 目標のイメージを明確にする

顧客満足を向上させるために実践している取り組みは、すでに他店との違いを打ち出す同社の強みとなり、文化として根づきつつある。その特徴は主に「生み出す文化」「やり続ける文化」「変化を続ける文化」の3つだ。


生み出す文化では、スタッフ一人ひとりが主体性を発揮できる環境づくりを行っている。同社で意見を発するのに経験年数は問われない。スタイリストは経験からのアドバイスを行い、アシスタントはお客さまの声を代弁するなど、それぞれの立場から課題を上げる責任を与えている。

「例えば、ラーメン屋のスタッフが汚い指でラーメンを運んで来たら、美味しさも台無しです。お客さまは、本来お店が売る商品や技術以外の部分で不満を持っていることが多くあります。その不満を最も吸い上げられるのが、お客さまに一番近いアシスタントの若いスタッフなのです」(増成氏)


より多くの意見を効率的に吸い上げ、その意見をしっかり考え、具現化する工夫として、例えば、あべのNiNi店では、スタッフ総勢26名を3つのチームに編成した。各チーム、各個人に対して、適性を考慮しながら役割を設定した上で、それを可視化。リーダーには、達成度を把握できるチェック表を与え、PDCAが回る仕組みを構築している。

「スタッフから出される多くの意見の中から優先順位をつけて具現化していくことで、お客さま目線によるお店づくりができるようになりました。これがお客さま満足につながり、さらには社員満足も実現しています」(マッシュあべのNiNi店 店長の網城裕子氏)

次に、やり続ける文化においては、共通認識、具現化、継続力という3つの要素を踏まえ、目標とそれを実行する目的をスタッフ一人ひとりに浸透させながら、目標の達成を後押しする。


店長やチーフ、スタイリストなど各ポジションの各個人に対する使命を可視化することで、個人レベルで使命への共感認識をもってもらえるように工夫。隔週で店舗の目標やテーマを掲げるとともに、各個人の目標を設定する。また、店長は、各スタッフの目標達成度を管理表にマル・バツをつける形でチェックを行う。
「チェック機能を簡単にすることが、続けるための秘訣です。難しいことを簡単なことに置き換えられるように工夫し、効果を出せる環境をつくっています」(網城氏)

また、変化を続ける文化を築くために実施しているのが、「お客さま会議」だ。来店客にもっと喜んでもらうために何をするべきかに関して、毎日意見を出し合って作戦を立てる。昨今では、顧客の来店予約を管理する表が、その作戦を記した書き込みで埋め尽くされるようになったという。


「変化を続けるためには、いま現在の行動や努力が未来にどのようにリンクするのか、目標を具体的にイメージさせることが重要です。しっかり未来をイメージできれば、今の行動も変化するはず。そうなれば、誰かに言われて『何かをやらなくちゃ』ではなく、自らが『やりたい』『したい』という気持ちに変わり、成果をより早く創出できるサイクルを構築できます」と網城氏は語る。

スタッフの知恵や努力の積み重ねによって生まれた顧客の感動は、実はこうした文化の土壌において育まれているのだ。

記事のPDFをダウンロード

pagetop