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外食産業撤退危機で得た気づき 「必要とされる」店舗づくりとは?

株式会社ワン・ダイニング

取材/砺波敬之、編集/宮本紗和
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

食肉小売業から外食産業へ参入し、今では全国に125店舗を展開する外食企業となった株式会社ワン・ダイニング。同社は約10年前から顧客満足度覆面調査「ミステリーショッピングリサーチ」(以下、MS)を導入するなど、全社あげてのCS向上への取り組みを行っている。今回は、代表取締役社長・髙橋淳氏と、執行役員、営業本部人財育成部長・稲田守弘氏の両氏に、独自の経営理念に対する想いやCSの位置付け、今後の展望を伺った。

※MSとは、顧客満足度調査「ミステリーショッピングリサーチ」の略称です。


「必要とされること」こそが、企業価値である

――まずは、御社の経営理念についてお聞かせください。

髙橋氏:我々は経営理念として「価値ある経営」を唱えています。「価値ある」の意味を、我々は「必要とされる」ことであると定めています。お客様に必要とされる店であり、社会から必要とされる会社であり、そして仲間から必要とされる人であり続けるということが、価値ある経営であると考えているのです。

この背景には、2003年に経験した外食産業からの撤退危機がありました。食肉小売業から1993年に外食産業に進出し、当初は焼肉業態の価格破壊を実現して多くのお客様に支えられていましたが、実はその流れで、チルドの肉を店舗で手切りする技術力を一度捨てています。事業拡大にあたってより効率化を図るため、その部分をアウトソーシングしたのです。しかし2003年、BSE問題によって一気に業績が悪化。売り上げが前年比4~5割に落ち込み債務超過の状態に陥りました。その時に、我々の店は価値があるから選ばれていたのではない、価格が安いから選ばれていたのだということに気がついたのです。

この経験から、闇雲に効率を追求するのではなく非合理的で非効率的であることこそが我が社の独自価値であり、その価値こそがお客様に必要とされる部分なのだと認識を新たにしました。


――「MS」の導入背景をお聞かせください。

髙橋氏:MSを導入した約10年半前、我が社は債務超過状態から脱却するために食べ放題業態へ挑戦していました。その過程で「食べ放題はお客様との接点がとても多い」ということが分かったのです。接客力を高めるための人財育成には、時間も予算も多くかかります。しかしこれこそがお客様に必要とされる独自価値になると考え、お客様満足のベースとなる人財育成の仕組みづくりに役立てようと、MSを導入させていただきました。MSの点数は将来業績を示すものだと考えています。初めてのMSの結果は161点でした。それが今では180点。この10年半の間、毎月全店舗で実施し、重要指標としています。


ルールを徹底できる風土づくりには、意識づけと仕組みが重要

――2008年に社長に就任されてからは、どんな施策に取り組まれましたか?

髙橋氏:まずは、店舗ミーティングの重要性を打ち出しました。毎月1回、店舗で行うアルバイト主導の戦略会議です。以前から店舗ミーティングというものは存在しましたが、当時アルバイトの参加率は60%台。店長の独演会、もしくは情報伝達の場になっていて面白くもなんともなかったはずです。そこで、店舗ミーティングでの店長の発言率を10%以下にすること、そしてアルバイト参加率を80%以上にすることをルールとしました。店舗ミーティングにしっかりと役割を持たせることで、店舗や個人の目標設定や意思決定のプロセスを共有することができ、アルバイトの参加意識やモチベーションアップにつながると考えたのです。

やらされ感をなくし、責任感を生み出すための施策だったのですが、現在では参加率も96%までアップしています。



――店舗ミーティングを全社に根付かせるためにどのような工夫があったのでしょうか?

髙橋氏:店舗ミーティングは、今ではさまざまな施策や店舗運営の基盤となるほど重要な役割を果たしています。この状態になるまで5年ほどかかりました。

変化を実感できるに至った理由の一つは、リーダー研修の存在です。各店舗におけるアルバイトリーダーに参加してもらうもので、座学やディスカッションの場なのですが、このリーダー研修の中で店舗ミーティングを充実させるためのアイデアを議論してもらったのです。するとリーダーたちがお互い刺激し合い、自主的にどんどんノウハウをかき集めて自店に持ち帰るということが起き始めました。

このことで、ミーティングの日程やテーマをアルバイトたちが自分で決めるというルールができ、自発的な行動につながり、参加率が96%まで上昇したのです。また、そこから生まれるさまざまな戦略が実行されていくという、まさにPDCAの基盤にもなり、もはやこれをなくして我が社は語れないほど重要なものとなりました。



ほかには「気づきメモ」も大変重視している施策です。

アルバイトが感じたいろいろな気づきを1枚ずつ紙に書き、それに対して社員やほかのアルバイトがコメントするというもので、取り組み当初は2〜3千枚でしたが、今ではひと月2万枚を超えます。店舗ごとにバックヤードに貼り出していて誰でも読むことができるため、一種のコミュニケーションツールにもなっており、また店舗への参画意識も見える化される仕組みです。多店舗経営においては、このような情報を共有化できる仕組みづくりが非常に大きな役割を持っていると考えています。

実はこの店舗ミーティングや気づきメモを実施する前に、私が最初に徹底させたことが検便の提出率です。

検便は飲食業にとって衛生管理の必須項目です。MSの点数を全店200点にすることは難しいですが、検便の提出なら誰でもできます。しかし当時は提出率が60数%に留まっていました。そこで、やればできることをなぜやらないのか? ということへの取り組みから始めたのです。検便提出率100%にするための意識づけとその仕組みを連結させ、会社としてやってほしい基本を徹底する風土を作ったわけです。

この実績に基づいて、じゃあ次は店舗ミーティングだね、という風に派生させていきましたので、実は検便提出が原点なのです(笑)。



価値ある経営への取り組みに、ゴールはない。

――今後の展望についてお聞かせください。

ありがたいことに、2006年から2019年までの既存店前期比が、2009年の99.9%を除くとすべて100%を超えています。前述の取り組みによって店舗風土を活性化させていくことこそが、人財育成、従業員の成長、そして店舗力の向上につながり、ひいては会社の成長につながるということを感じています。

これからの我々の取り組みにゴールはありません。事業環境が厳しさを増す中、既存店の前期比を0.1%でもアップさせるために、料理と接客のクオリティ、そして居心地感という要素を常に進化できるような考え方や仕組みをつくり、それを継続して向上させることによって価値ある経営を実現していきたいと思っています。

常にお客様の満足、期待感を超え続け、規模よりも価値を誇り続けることができる経営を目指しています。


価値ある店づくりに欠かせないのは、業績よりもMS指標

――「価値ある経営」という経営理念において、MSはどのような位置づけと考えますか?

稲田氏:弊社の理念である価値ある経営のためには、まず価値を誇れる店づくりが必要です。そのためにもMSは最重要の指標だと言えます。

弊社はMSを年間16回という頻度で実施していて、優秀店舗については半期に一度の経営方針発表会で表彰をしています。通常、こういった場面では業績優秀店舗が表彰されることが多いと思うのですが、弊社では業績よりMSの数値を指標にするほど、会社としての位置付けが高いです。

また、アルバイトリーダーやトレーナークラスの従業員に対する年に2回の研修も、2回のうち1回は必ずMSをテーマに行っています。具体的にはMSの改善取り組み事例や成功事例の共有です。そういった研修での共有の中で出た良いアイデアや事例が、そのまま全社の標準になるということもあります。



――MSの実施で、どのような成果を感じていますか?

稲田氏:MSを実施することで、従業員の主体性が上がると感じています。

店舗において毎月必ず実施されるミーティングは、アルバイトリーダー、トレーナーが運営をします。当初は、店長主体の業務連絡の会で、参加者も4〜5人ほどという状況でした。しかし、MS&Consultingさんとのお付き合いの中でミーティングのやり方などに学びをいただき、ミーティングを改革していきました。

このミーティングは、参加率を80%以上にすることがルールになっています。ミーティングに参加することにより、皆で戦略を練って同じ温度で取り組んでもらうことが狙いです。従業員の主体性が上がることによって、実施率やその精度の向上につながりますし、決めたことを徹底してやり続けるということが企業文化になっており、その結果がお客様満足度向上につながっていると考えています。顧客満足度覆面調査「ミステリーショッピングリサーチ(MS)」の資料ダウンロードはこちら>>


1枚の気づきメモが、必要とされる人を育てていく

――経営理念の実現に向けた、独自の取り組みについてお聞かせください。

稲田氏:ひと月に約2万枚集まる気づきメモですが、そのなかから毎月各ブロック長が自ブロックの推しメモを2枚選び、それを社長も含めた幹部全員で共有しています。ここでその月に特に良かったメモを、1枚選んでいくわけです。その1枚が「トップオブザマンス」となり、社内報で全社に発信されるという仕組みになっています。

トップオブザマンスはさらに半年に1度、8000人のアルバイトによって投票され、1位となったメモが「一番の気づき大賞」として経営方針発表会で表彰されます。紙に手書きして共有するという、こんなにSNSが蔓延している時代に非常に非効率な仕組みなのですが、この手書き感が店舗のコミュニケーションに役立っていますし、従業員同士がお互いに気づきを与え合える環境を実現できていると感じます。

こういった数々の取り組みすべてが、価値ある経営という経営理念に紐づいたものです。これらの取り組みの成果が、必要とされる店を作り、必要とされる人になることへつながっています。



従業員満足度調査「tenpoket」(テンポケット)の導入で見据える今後とは

――最近新たにtenpoketを導入されましたが、導入背景はなんだったのでしょうか?

稲田氏:店舗のオペレーションにタッチパネル式の注文システムを導入したことが背景にあります。より便利なものを入れることによって従業員の主体性が下がるかもしれないというご提案を受け、弊社の従業員の主体性がどう変わるのかという推移を見るためにtenpoketを導入することにしました。まずは導入月に1回実施し、導入後の半年後に再度実施して変化を見る予定です。ESがどう変化したのかを見極め、対策が取れたらと考えています。従業員満足度調査「tenpoket」の資料ダウンロードはこちら>>

MSを10年以上実施してきましたが、今後はtenpoketの導入によりCSとESの関係を分析できるようになるということで、さらに大きな指標となることを期待しています。

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