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心がこもった提案のある新しい携帯ショップ 「感情移入接客」で差別化を図る

株式会社ディ・ポップス

http://www.d-pops.co.jp/


『季刊MS&コンサルティング 2010年冬号』掲載
取材・文:西山博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

販売方法の変更による端末価格の上昇が新規端末の買い替えサイクルの長期化を招き、販売台数が減少している携帯電話販売業界。2006年10月開始の番号ポータビリティ(MNP)制度も市場に定着し、新キャリアの参入によって競争はますます激化している。しかし、そのような激動の市場の中でも、ホスピタリティ接客で売上増加を続ける企業がある。株式会社ディ・ポップスだ。携帯電話の流通を通して「喜びと感動」を提供するため、同社が大切にしていることとその実現の方法を伺う。

時代に合わせたコンセプトシフトで、信頼と安心の店づくりへ

株式会社ディ・ポップスの設立は1997年。同年、大宮駅前に総合型携帯ショップ「No.1 SHOP !大宮西口店」(1号店)をオープン。設立12年目となる現在は、『超一等地戦略』のもと、首都圏を中心に超駅近の携帯ショップ23店舗を展開する (2009年11月末日時点)。揺れ動く市場においてもなお同社が好調を続ける理由は、単なる立地の良さだけには留まらないようだ。

「何よりもまず、お客様に信頼と安心を与えられる店づくりをコンセプトの中心に据えています」と語るのは、の取 締役営業本部長の吉岡 修平氏(写真下)。MNP制度の導入は、携帯電話購入の際に消費者が重要視する点にも変化をもたらした。「安く多く販売する時代は終わり、お客様ひとり ひとりに合わせてきちんと提案できる接客が大切になってきた」と吉岡氏は現状を捉える。同社は数年前に店舗コンセプトの見直しを行い、利益偏重ではなく、 お客様のために心を込めた提案ができる人財の育成を目指している。

心を込めて提案する、そうした接客の姿勢を同社では『感情移入接客』と呼ぶ。原点は、同社の後藤和寛代表が、自 ら店頭で携帯を販売していた時代に遡る。「携帯電話という商品を扱う以上、ハードウェアで差別化することは難しい。ならばソフトウェアでの差別化こそが鍵 となる」と考えた代表。「お客様の側に立ち、お客様のためになる提案ができる接客」での差別化を目指し、社員には「お客様はすべて家族。自分の家族が困っ ていたら手を差し伸べるように、お客様にも同じ気持ちで思いやりのある接客を」と訴えてきた。

取締役営業本部長の吉岡 修平氏


ここへきて、『感情移入接客』が店づくりにますます重要とされる一方、その変化についていけず退職する社員やス タッフも出た。しかし、社員が入れ替わる間にも『感情移入接客』の考え方は徐々に広がり、着実に実現され始める。お客様の真の声を取り入れることを目的と して2009年5月から導入したミステリーショッピングリサーチ(MSR)においても、「携帯ショップによって、こんなにも接客が違うことに驚いた」と、 同社の接客を高く評価するコメントが多く寄せられている。


『クレド』に始まる理念浸透に向けた取り組み

『感情移入接客』の考え方や姿勢、理念の浸透に向け、同社では『クレド』の作成や、階層別・テーマ別研修の実施、毎月のMVP表彰など、様々な取組みを行っている。

『クレド』は同社の経営哲学を綴ったもので、社員が立ち返るべき行動指針を18項目にまとめている。5年ほど前 に幹部社員らによって作成された。「自分たちで作ったものなので、いかに浸透させていくかを常に考えている」と吉岡氏が語る通り、社内ではクレドを振り返 る機会が多く、新入社員にはクレドのテストも実施。人事評価制度にもクレドの実践度合いの評価項目が設定され、形骸化させないための工夫が施されている。

2008年度から進めてきた研修制度は、現在15に及ぶテーマで実施されている。新入社員は現場に出る前の1ヶ 月間、基礎的な姿勢を研修で学ぶ。店長以下4つに分けられた階層では、15のテーマの中からレベルに応じたテーマで研修を実施。幹部層においては、経営者 としての行動の仕方や人間性を磨くテーマの研修を中心としている。

また、月間MVP、新人MVP、CIS(Customer Impressive Satisfaction:顧客感動満足)MVPの3部門で毎月MVPを選出。社員の投票により決定したMVPは全体会議で表彰される。ひと際目を引く CISのMVPは、社内のイントラネットブログに寄せられた、お客様との間に起きたエピソードが表彰の対象となっている。


『感情移入接客』が生むお客様との強い信頼関係

『感情移入接客』を謳う同社のこと、多くのエピソードが集まるのではとの問いに「レベルが高まる度に、そう簡単 には集まらなくなってきた」と吉岡氏。例えば冬の寒い日にお客様から温かい飲み物をもらうようなことは今では日常茶飯事で、お弁当や旅行のお土産をもらっ たスタッフも。携帯購入の相談がスタッフの携帯に直接入ることも少なくない。吉岡氏も「1年前に来店されたのを私が覚えていたことにお客様が喜ばれ、価格 のご案内もしないうちに、ご購入を即決定して頂いたことがあります」と話す。

従来の携帯ショップのイメージからは想像し得ないエピソードの数々。これらのエピソードを生む元となる、お客様 との強い信頼関係を構築できる人財は、先の教育制度の中で育てられるばかりではない。同社では、上司が自らの体験談を部下に語ることが多い。お客様との実 際のやりとりを元に、会社が目指す『感情移入接客』の姿や意義を互いに確認しあう格好だ。部下にとっては、より実践に近い形で理念のエッセンスを吸収でき る機会となる。

また同社には、契約数などのノルマが一切ない。「時間をかけた分だけ、別のお客様を連れて来て下さる。一人のお 客様の後ろには10人のお客様がいる。10人接客したら100人のお客様を接客したことと同じ」という代表の考えの下、じっくりと丁寧に接客をする。吉岡 氏は「目先の利益を追いかけるのではなく、お客様に感情移入して接客をしてきた結果が、後にエピソードとして返ってきているのだと思います」と振り返る。


クレンリネスの徹底で従来のイメージを払拭

MSRの導入も、スタッフの意識向上に非常に効果があったという。お客様からの評価が高かった店舗は全体会議で発表され、逆に評価がふるわなかった下位3 店舗は、統括マネージャーと店長との面談で対策を話し合う。上位店舗に共通する点を伺うと「理念の浸透とクレンリネスの徹底、最後はやはり、お客様のこと をどれだけ思っているかでしょうね」と吉岡氏は言う。理念浸透のための取り組みは述べてきた通りだが、同社はクレンリネスにも非常に力を注いでいる。営業 中、お客様のいない時間は清掃をするのが基本だ。「商品や床、壁などに少し汚れがあるだけで、『やっぱりこういうお店って汚いね』と、店全体の印象が決 まってしまう。清潔感に欠けるという従来の携帯ショップのイメージを払拭すべく、クレンリネスや身だしなみには特に重きを置いています」(吉岡氏)

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お子様連れのお客様にも安心してご来店頂けるよう、クレンリネスに気を遣い、キッズルームを設けるなどの工夫を施す。


お客様に支持される会社づくりで生き残りをかける

販売方式の変更、そして携帯電話普及率が80%を超えた飽和状態の中で、携帯電話事業が今後伸びていくことは非常に難しいと報じられることも多い。しかし 吉岡氏は「市場がなくなるかといえばそうではない。お客様から支持される、中身のしっかりした会社づくりをしていれば必ず生き残れると考えています」と語 る。現在の目標は売上100億。社名であるD-POPSは、Dream-Produce One’s Pleasure and Shining(人に喜びと輝きをプロデュースする)という後藤代表の夢に由来したものだ。より多くの人々に喜びと輝きを届けるため、ディ・ポップスは今 日も『感情移入接客』でお客様をお迎えする。


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