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株式会社ドン・キホーテ(ビッグコンビニエンス&ディスカウントストア)

2万人超の社員&メイト一人ひとりと向き合う
「リアリティ」を貫く組織風土改革

株式会社ドン・キホーテ(ビッグコンビニエンス&ディスカウントストア)

株式会社ドン・キホーテ

事業概要:ビッグコンビニエンス&ディスカウントストア

東京都目黒区青葉台2-19-10

会社ウェブサイト:http://www.donki.com/

『季刊MS&コンサルティング 2014年夏号』掲載
取材・編集:西山 博貢、宮本 紗和/担当:江端 慎二、金澤 則幸
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
創業34期の「ドン・キホーテ」ブランドを全国に285店舗(2014年7月時点)展開する、ドン・キホーテグループ。店舗社員数3,000人、「メイト」と呼ばれるアルバイトスタッフ2万人が活躍する大組織だ。同社は今、自主性と権限委譲を軸としたエネルギッシュな組織文化を土台に、より働きやすい職場づくりと、顧客との関係性を築く取り組みを強化している。その旗振り役を担うヒューマンモチベーション本部の皆様に、取り組みの概要を伺った。

接客レベルの向上に力を入れるようになった背景は?

同社 執行役員 ヒューマンモチベーション本部本部長 田中眞美氏。あの有名なドン・キホーテのテーマソング「ミラクルショッピング」の作詞・作曲・歌手を務め、1994年にアルバイトとして入社して以来、同社を支えてきた。

同社 執行役員 ヒューマンモチベーション本部本部長 田中眞美氏。あの有名なドン・キホーテのテーマソング「ミラクルショッピング」の作詞・作曲・歌手を務め、1994年にアルバイトとして入社して以来、同社を支えてきた。

田中氏:ドン・キホーテの最大の強みは、楽しく買い物ができるアミューズメント性のある店の構造と、商品力(価 格・品揃え)、そして深夜も営業しているという利便性です。これらがなければドン・キホーテではありませんし、そこが一番、お客さまに求められているとこ ろだと理解しています。そういうスタイルでこれまでやってきていますので、接客というのは当社にとってどちらかというと苦手とする分野です。しかし、高齢 化・少子化によって、これまでの当社のメインターゲットであった若年層の割合はどんどん減っていきますから、ドン・キホーテと共に成長していく、30代、 40代のお客さまに楽しく過ごしてもらえる店づくりをしていかなければなりません。ハード面では、以前はあえて狭いスペースに商品を並べ、ジャングルのよ うな雰囲気をつくっていましたが、今は買い回りしやすいお店も増えています。接客についても、よく来ていただいている方のお出迎えや、丁寧な応対の積み重 ねをしていかないと、お客さまは増えません。

上戸氏:以前、ブランド品や高級品を扱うコーナーに「コンシェルジュ」という接客に専門特化したスタッフを配置 したことがありますが、今は、全員が一定水準以上のおもてなしの対応ができるようにしていかないと厳しい時代だと思います。接客レベルを見える化するため に、接客に関するライセンス制度を作り、ライセンスに応じたバッジを配布するといったこともやっています。

「ドンミシュ」はどのような取り組みでしょうか?

同社ヒューマンモチベーション本部 接客事業室 責任者 マネージャー 上戸洋貴氏(左)、ヒューマンモチベーション本部 人財支援 責任者 マネージャー 小林勝己氏(右)。

同社ヒューマンモチベーション本部 接客事業室 責任者 マネージャー 上戸洋貴氏(左)、ヒューマンモチベーション本部 人財支援 責任者 マネージャー 小林勝己氏(右)。

小林氏:ミステリーショッピングリサーチ(以下、MSR)の取り組みを、社内では「ドンミシュ」と呼んでいま す。接客のまずかったところをあぶりだすのではなく、「ドン・キホーテの3つ星はここだ」という形で、良いところを見えるようにして、褒めていきたいと考 え、導入しました。良い部分を称えてあげて、より居心地のよいドン・キホーテを作っていこうとしています。

上戸氏:「MS&Consultingさんという覆面調査の会社が調べてきた結果です」というと、現場 が非常に敏感に反応します。「外から見られるとこんな感じなんだ」と、現場サイドにすごく響きますね。また、当社では2013年8月から仲間同士で感謝の 気持ちを伝えるための「サンクスレター」という取り組みをしているのですが、MSRで名前を挙げて褒めていただいているスタッフには、それを本人に伝える ために、サンクスレターの中で必ず触れるようにしています。

御社の教育方針はどのようなものでしょうか?

同社では、売り場のことを「買い場」と呼ぶ。商品を販売すること以前に、買い物を楽しんでもらいたいという想いが根底にあることを示す分かりやすい言葉だ。

同社では、売り場のことを「買い場」と呼ぶ。商品を販売すること以前に、買い物を楽しんでもらいたいという想いが根底にあることを示す分かりやすい言葉だ。

田中氏:以前はどちらかと言うと上昇志向の強い社員が多く、教育や社内制度も「競育(きょういく)」、つまりお互いに競い合う中で成長していくという傾向 が強かったのですが、今の若い世代の人たちは、競争するよりも、周りの人とうまく協調してやっていきたいという人が増えてきています。これまで培ってきた 自主性の高い風土の良さを壊さないようにしながらも、皆で協力して暖かい居心地の良さがある風土もつくっていくことを目指しています。

全社員に配布された「源流」という冊子とは?

「源流」と「メイトコモン」。社内の共通認識となる言葉や考え方が社員向け、メイト向けにそれぞれまとめられている。

「源流」と「メイトコモン」。社内の共通認識となる言葉や考え方が社員向け、メイト向けにそれぞれまとめられている。

田中氏:私は、ドン・キホーテ1号店の時代から、メイトとして当社で働いていましたが、当時は特に何もしなくて も、スタッフの間に共通認識のようなものがあったんですよね。でも、さすがに100店舗を超える規模になる頃から、血が薄まるとでも言うのか、やはり意識 がまばらになってくるのを感じるようになりました。それではいけないということで、2011年4月に経営理念や行動規範をまとめて、冊子にしたのが「源 流」です。メイト向けに読みやすくまとめた「メイトコモン」もあります。

小林氏:「メイトコモン」は、メイトさん向けにページ数も少なくまとめ、文章も噛み砕いて読みやすくしています。他にも、イラストを入れたり、表紙の色にもこだわったりして、とにかく皆に手に取って読んでもらうための工夫をいろいろとしています。

ヒューマンモチベーション本部がまず着手されたことは?

全員が一定水準以上のおもてなしの対応ができることを目指し、接客のライセンス制度を作った。

全員が一定水準以上のおもてなしの対応ができることを目指し、接客のライセンス制度を作った。

上戸氏:当社は「属人性」という言葉が好きで、昔から現場の裁量権が大きく、職種に関係なく「現場に任せられる ところは任せる」という自主性を大切にする方針でやってきました。しかし、メイトさんの評価という面については、明確な基準がありませんでしたので、「店 長が変わったらメイトの評価も変わった」ということも起こり得てしまいます。協調できる風土には、公平感も大切です。そこで、これまで大切にしてきた考え 方や、仕事の内容自体を変えてしまうことなく、「評価はしっかりしていますよ」ということがちゃんと伝わるように、2013年10月からメイトに等級制度 を導入しました。メイトには職位が付き、時給にも差が出るようになっています。

田中氏:何をすれば評価されるのかを明示することで、努力の方向性を示すという意味合いもあります。社員もメイ トも同様に、頑張りたい人には、頑張れる会社にしようということです。ただ、対象が2万人ですので、新しい取り組みは簡単には皆の中に入っていきません。 店舗を回って個別に説明をしに行くことも考えています。コツコツやっていかなくてはなりません。

メイトさんに対して個人面談も行っているそうですね。

ドン・キホーテ後楽園店のオープン準備の様子(2014年8月15日開店)。約130名のメイトを採用し、毎日入れ替わりで10数名ずつ、電話受けや挨拶、ラッピングなどについて一日かけて研修を行った。

ドン・キホーテ後楽園店のオープン準備の様子(2014年8月15日開店)。約130名のメイトを採用し、毎日入れ替わりで10数名ずつ、電話受けや挨拶、ラッピングなどについて一日かけて研修を行った。

田中氏:はい。これは、私たちが直接店舗に行って話をしています。時間は一人あたり30分、1時間とかかってしまうこともありますが、できる限り対応していきたいと思っています。

上戸氏:いろいろな社員やメイトの悩みや不満を吸い上げて、それを解決していくところにヒューマンモチベーショ ン本部としての意義があると思いますので、アンケートの実施やヒアリングには力を入れてきました。店舗を回ると、メイトさんが次々に相談にきますし、メー ルで相談をもらうこともあります。

田中氏:以前、接客事業室というところで5年間、接客を良くするために活動してきましたが、働く環境がしっかり 整備されていないのに笑顔なんか出せないということを、今改めて思います。やはり、社内でストレスが溜まっているとお客さまにも伝わってしまうんですよ ね。面白くないと、ブスッとした表情で歩いたりしてしまいます。不満があると、そこを改善しない限り、研修をしても何も変わりません。まずは、職場環境の 整備と、心の整備が必要です。そうしたES(社員満足)がなければ本当のCS(顧客満足)にはなりません。社員やメイトさんのことをしっかりケアして、皆 が楽しんで働けるような会社でありたいと思っています。

最後に、日頃最も意識されていることは何ですか?

圧縮陳列は、売り場ごとに商品陳列を工夫する必要がある上、細かなメンテナンスも必要な陳列手法だ。

圧縮陳列は、売り場ごとに商品陳列を工夫する必要がある上、細かなメンテナンスも必要な陳列手法だ。

小林氏:最も意識しているのは、「リアリティ」です。文字や資料をつくるのは簡単ですが、それだけでは伝わりま せん。現場に行って、個と関わって、初めて相手の状況や気持ちが分かります。昔現場にいたからといって想像だけで決めているのなら、それは古い。タイム リーに、その時の状況を理解した上でやることが、現場に一番伝わると思います。

田中氏:ESの課題のほとんどは、コミュニケーション不足にあると思います。当社でも社内の至る所でコミュニ ケーション不足を感じる場面があるのですが、それは「個」ではなく全体に投げてしまうからだと思うんです。何かを伝えようとするのなら、必ず最後は「個」 の部分に入っていかなければならないというのが、私の考えです。組織の課題を話し合う時にも、名指しができるくらいの「リアリティ」をもっていたいと思い ます。

MEGAドン・キホーテの売場面積は平均約7,000平方メートル、取り扱い商品数は10万点以上とドン・キホーテよりも大型。写真はMEGAドン・キホーテ新川店。

MEGAドン・キホーテの売場面積は平均約7,000平方メートル、取り扱い商品数は10万点以上とドン・キホーテよりも大型。写真はMEGAドン・キホーテ新川店。

私が働き始めた頃からすると、比較にならないくらい大きな組織になりましたが、それでも組織をつくるのは一人一人の個人であることに、今も昔も変わりはありません。

私たちの活動の一番の芯は何かといえば、それは「愛」だと思います。商品に対する愛情だけでなく、人に対する愛 情です。私は、仕事上の立場・役割という以前に、誰かの人間力を高める支援が、人生の役割のひとつであるような気がしています。大変なのは分かっていて も、自分から行動してしまうんです。2万3000人を変えるためには、一人を変えること。それ以外の方法はないと思いますので、時間をかけてでも、着実に 取り組んでいきたいと考えています。

ヒューマンモチベーション本部の取り組み年表

2013年7月 創設 ヒューマンモチベーション本部創設。3名からスタートした後、役割範囲を広げ、2014年7月時点では14名が在籍している。
「メイト賞」の創設 11種類のメイト賞(グッドティーチャ―賞、スマイルあいさつ賞、フレンドリー親切賞、スピード賞、接客賞、ディスプレイ賞、POPアイ デア賞、ナイスセールス賞、クリンネス賞、バックアップ賞、店長賞)の中から毎月4つの章の受賞者を選定。受賞者には商品券を支給している。
「ウェルカムの心得」を制定 入社初日の面談、店内ツアーの実施、「ブラザー・シスター制度」などの一連の制度の運用を開始。
2013年8月 「サンクスレター」の導入 普段言葉では伝えられない「ありがとう」の気持ちを手紙にし、会議やミーティング・朝礼などの場で読み上げたり事務所の壁に掲示することで、現場のコミュニケーションを円滑にし、モチベーションアップにつなげている。
2013年10月 「メイト等級制度」の制定 メイトの明確な評価基準を設け、社員と同様にS(スタッフ)~GM(ゼネラルマネージャー)までの等級を導入。スキルの高い人材が正当に評価されるようにした。
2013年12月 「ウェルカムバックカード」の導入 メイト・社員に対する再雇用制度。本人がもう一度働きたいと思っていて、担当社員や店長が良いと思う人材に対して、再雇用を推薦するカードを発行する。
2014年1月 「店舗唱和」の内容を統一 同社では各店舗にて毎日、大切にしたいことの唱和を実施しているが、店舗によってバラバラであった唱和の内容を統一し、意識を向上させた。
ドンミシュ 店舗を表彰する仕組みとして、優れている部分を褒め称えることをコンセプトに、全店舗にミステリーショッピングリサーチを導入。
2014年2月 「ドンキメイト・コモン」の配布 ドン・キホーテグループで働く全メイトの「共通言語」が記された、働く上でのバイブル本。研修等で内容を共有している。
お悩みセンターの開設 周りの人や上司に聞きにくいことを気軽に相談できる場所として解説。
慰労会制度の制定 店舗内での職場間の意思疎通・結束の強化に向けた食事会を開催。年2回、一人3千円まで会社が負担する。
2014年7月 応募受付センターの開設 これまでは店舗ごとに採用活動を行っていたが、採用を専門化することで採用効率の向上と店舗負担の軽減を狙う。

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