「比較して試したい」ニーズを正面から捉えた店舗

コスメネクスト取締役の遠藤宗氏。同社は「アットコスメ」を運営するアイスタイルの100%子会社。
今では珍しくない“クチコミサイト”や“レビューサイト”だが、99年末にオープンした化粧品クチコミサイト「アットコスメ」は、それらクチコミサイトのパイオニアともいえるだろう。さまざまなブランドの化粧品について横断的に、かつ膨大に一般ユーザーの意見が聞ける仕組みは、多くの女性に受け入れられ、現在ではユニークユーザー600万人、クチコミ件数800万件という規模になっている。
アットコスメがプロデュースする「アットコスメストア」は、その名の通り、同サイトと連携した店舗だ。売り場には、サイトのコンセプトと同様に、多数のブランドの化粧品が並列に置かれている。複数ブランドを扱うという点では百貨店やドラッグストアも共通しているが、同店の際立った魅力は、複数ブランドの商品を比較しながら紹介してもらったり、試したりできる点にある。サイト上でのランキングを表示するランキングコーナーや、人気商品が試せるトライアルコーナーなど、他の化粧品販売業態にはない独自の販売方法を採っている。

化粧品クチコミサイトとして女性に親しまれている@cosmeとの連携により、他店ではできない情報提供や売り場展開が可能になっている。サイトでクチコミをチェックして、店舗で試したり、実際にアドバイスを受けたりと、お客様にとって自然な流れが構築されている。
同店を運営するコスメネクスト取締役の遠藤宗氏は、同店の特長についてこう話す。「化粧品の販売方法には、百貨店などで販売員がお勧めする『カウンセリング』と、ドラッグストアなどでお客様が自分で選ぶ『セルフ』があります。百貨店の販売員は通常ブランドに所属していて、自社ブランドについてのみ説明します。ですが、お客様の側からすれば、ブランドAとブランドBの化粧水を比べたい、というケースが非常に多い。そこでアットコスメストアでは、ブランド横断的に対応できる販売員を置き、なおかつお客様自身でも自由に試せるコーナーや環境を充実させて、カウンセリングとセルフの両軸をカバーできるようにしたのです」。
この意図は、「違うブランドの商品を比べて選びたい」「説明を聞きたいときもあるが、自由に見たいときもある」といった女性のニーズを真正面から汲むこととなり、旗艦店のルミネエスト新宿店は現在1日1500人から2500人の来客がある状態だ。6店舗全体の月間来客数は15万人にも上っている。
顧客満足の結果でしか客単価は高まらない

現在都内5店舗、福岡に1店舗を構える。いずれも坪数や客層が異なるため、「常に模索中」と遠藤宗氏。
同社では、前述の「セルフ」と「カウンセリング」の間に、「ナビゲーション」そして「ライトカウンセリング」という購買方法があると考えている。ナビゲーションとは、たとえばアットコスメのサイトを反映したランキングやクチコミPOPなどのガイドを使ったもの。ライトカウンセリングは、無料の肌診断などだ。同店のスタッフは、ナビゲーションの設置およびライトカウンセリングにあたりながら、ブランド横断的な商品紹介を行っている。
ブランド専属の販売員はそのブランドしか勧めないのが当然だが、それゆえにお客様にとっては「その商品が本当に自分に合っているのか」という不安や、「ブランドは好きだが全てを揃えられるほどの経済的余裕はない」というようなハードルもある。それらを取り払ったのが、アットコスメストアの接客だ。
遠藤氏は、同社の方針として、「お客様一人当たりの単価は追わない」ことを挙げていると話す。「当店のコンセプトは、『楽しく選べる』こと。客単価を上げろと指示すれば、どうしても購入を無理に促す雰囲気が出てきてしまいます。客単価は、お客様が満足した結果でしか高まりません。だから、お客様に満足していただき、また来ていただく、そのサイクルを縮めようというのが店舗との共通認識です」。