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トップスタイリスト育成の秘訣は、経験値を補う教育法

株式会社トニーアンドガイジャパン

http://www.toniguy.co.jp/


『季刊MS&コンサルティング 2011年秋号』掲載
取材:西山博貢、文:高島 知子
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

イギリスで生まれたサロンであるTONI&GUYは、50年近い歴史を経て現在では世界41カ国、405サロンを構えている。世界最先端の流行をさりげなく取り入れたスタイル提案には定評があり、多くの常連顧客を有している。同社が今回新たに導入した研修プログラムと、その教育理念について伺った。

このモデルケースでは、モニター(30代女性・OL職)は初めての来店で、多少の不安もありましたが、写真や図を使ったカウンセリングにより、モニターの期待感がスタイリストの想定以上に高まりました。しかし、カット中は興味の無い話が多くなったため、モニターは期待しているイメージに近付いているのかどうかが分からず、ネガティブな印象を受けました。朝が忙しいOL職であるモニターにとっては、スタイリストが力を入れたセットを再現することを少し面倒に感じたようです。しかし、綺麗になった自分を見て最後には気分良くお帰りになりました。最後の雰囲気と実際の心の様子は少し違ったようです。


「お客様の幸せ」の上に技術やセンスが加わるべき

ヘアサロン業界は、接客の質だけでなく技術力も問われる、競争の激しい業界である。そんな中、世界レベルのセンスを活かした提案力で、ファッションに目が高い顧客をとらえているのがトニーアンドガイだ。日本国内では、関東から九州まで20店舗を展開している。

長年にわたって顧客の心を引きつけるためには、スタイリストの育成が大きな課題になる。「技術力と高度なコミュニケーション力を兼ね備えたスタイリストの育成に、トニーアンドガイではずっと昔から力を注いできた」と、トニーアンドガイジャパン代表取締役の雑賀健治氏は話す。雑賀氏は、かつてロンドンのサロンで活躍し、1984年にトニーアンドガイジャパンを設立した人物だ。

「かつてはカットができれば顧客がついてくるという時代もありましたが、今はそういう考えでは続きません。どうしても職人志向のスタッフが多くなりますが、いくら最先端の完成度の高いスタイルでも、それが本当にお客様が望んでいたものかどうかは、お客様の声を聞かなければ分かりませんよね。もちろん、技術力ありきの仕事ですが、『どうしたらお客様に幸せになっていただけるか』という発想の上で我々のセンスやテクニックを発揮していくべきだ、というのが私たちの教育のベースにある考え方です」。

職人気質だけでは、お客様の期待に応えられない。かといって、サービスや環境だけでリピート来店を促すことはできない。試行錯誤の連続だとしながらも、このバランスが大事だと雑賀氏は強調する。

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雑賀健治(サイガケンジ)氏。1974年ロンドンに渡り、その後TONI&GUY創立者のマスコロ家四兄弟から「五人目の兄弟」と言われるほどの存在になった。1984年日本に帰国し、トニーアンドガイジャパン代表に就任。TONI&GUYの斬新なスタイルを次の世代に伝えるべく、アカデミー開校や講演、ヘアショー等の活動を広く行う。


同社は国内で20店舗を展開。「お客様が本当に望んでいるもの」を理解した上で技術力を発揮するべきというのがモットーだ。


一人前になるまでの失客を減らすために

多様化する顧客のニーズに応えるべく、同社では以前から研修制度を充実させてきた。たとえば独自でモニターを手配して各店に派遣するなどの取り組みを、すでに10年以上前から行っている。職人の世界では、先輩の技術や振る舞いを目で覚えろという考え方もあるが、それよりも積極的に教えたほうが当然ながら習熟するスピードは速くなる。

「店長やトレーナークラスで活躍するスタッフは、年間3,000人以上の施術を10年ほどこなしてきていますから、初めてのお客様でも顔を見て髪を触った瞬間に似合うスタイルや髪質などが分かるわけです。もちろん、『この方はこういうタイプだな』という見極めも早いので、接客力も確実です。しかし、技術は失敗して上手くなるとはいえ、そのレベルになるまでにはたくさんの失客をしているんですね。それは大きなロスなので、失敗をゼロにすることはできませんが、できるだけ早くそのレベルにたどり着いてもらいたい。そのためには、できるだけ現場に近い環境での教育機会において、経験値を補うことが重要なのです」。

ただし、モニターの派遣においては、仲間内で声をかけて集めたモデルがモニターだと、どうしても緊張感がなくなってしまう。その点で、もっと現場に即したモニタリングや研修ができないかというのがこの数年の課題だったという。そこで今回、同社ではMS&Consultingの美容業態向け新サービス「グルイン・ビューティー」を採用した。担当スタイリストは相手がモニターだと分かってはいるものの、サロンの関係者ではないため、「やはり緊張感が違った」と雑賀氏は話す。事後のスタイリストとモニター双方のアンケートを照らし合わせることで、思いがけず自分ができていなかった部分や、表に出てこない顧客の本当の声を把握することができる。

お客様の顔立ちや好みに合った施術の展開図を頭の中でイメージできるかどうかが、技術のクオリティの鍵を握る。


指導の確実性と教わる側の習熟度を高める

施術中の様子を録画し、皆で振り返ることは、客観的な視点で自分のクセを捉えるのに有効だ。これまでも日々の練習の中で先輩から後輩へアドバイスが行われているが、ひとりの施術が終わってからになるため互いの記憶に頼って話をすることになり、ポイントもずれてしまいがちだった。「映像を見ながら『自分だったらこうする』という先輩の意見を聞けると、指導の確実性も、理解する側の習熟度もぐっと高まりますね。今回の結果をサロン全体、グループ全体で共有して、資料としても役立てていきたいです」。

同社が今ますます教育に力を入れているのは、こんな理由もある。「これから少子化になって、美容師を志す人材の絶対数も減るはずです。しかも、世代が異なり、なかなか辛抱強く邁進できる人も少なくなっている印象があります。駆け出しの頃は苦しいこともありますが、できるだけ早くお客様に喜んでいただくことを味わって、仕事を楽しめるようになってもらいたい。やりがいが出れば、成長するスピードもさらに速くなります。せっかく我々のファミリーになったのだから、早くトニーアンドガイのテイストの作品をつくれるスタイリストになって、活躍してもらいたいと考えています」。

顧客満足度を高めながら、個々のスタッフの可能性を引き出す教育方針と手法には、美容業界のみならず他業界にとっても学ぶところが大きいはずだ。

施術時に撮影した映像やアンケートを基に、接客や施術の方法について具体的に意見し合うことでスキルアップを図る。


ヘアサロン向け新サービス グルイン・ビューティー

モニター調査やグループインタビューによってお客様から見たスタイリストの印象や施術前後の気持ちの変化を明らかにし、スタイリストの予想と照らし合わせることで、お客様との感じ方のギャップを浮き彫りにするプログラムです。実際の施術映像やレポート内容を基にしたフィードバック研修を実施することで、高い納得感の下、被験者にとっての具体的な改善プランを提示いたします。

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●グルイン・ビューティ:体験談「安心感を持っていただける接客を目指して」
スタイリスト:中込亮太さん

私は普段の接客の中で、特にクロージングを課題として意識していましたが、今回の研修でモニターさんが書いた“マインドビュー”では、クロージングに至る前の段階での起伏がほとんどありませんでした。自分で思っていたのとは違う結果となったので、今後はより工夫していきたいですね。また、自分の接客中のVTRからは、姿勢や会話中の距離感が客観的に分かりました。さっそく翌日から表情や会話の内容に気をつけています。

スタイリスト:中込亮太さん


接客で最も重要なのは、顧客の心の声を「聴く」力

同社本部の大井拓人氏によると、トニーアンドガイにおける失客率の平均は、全体で14.7%、初回の失客率は61.6%、2回目の失客率は41.3%(2011年8月現在)。3回目に来店する、つまり新規の固定率は約25%だという。「初回では、当然ながら第一印象が大切です。しかし、見た目や服装、最初の発声、お客様との距離などは、気づけばすぐ変えられますが、なかなか自分では把握できない。その点、今回のモニターさんの声や施術中のVTRはとても有効でした」。

また、2回目の対応について「まだ緊張感がありながら、初回での担当スタイリストのクセや人柄をイメージして来られるので、そこで期待はずれになると固定化は見込めません」と大井氏は続ける。

しかし、教育には難しい面もある。「失客してもその理由は想像するしかありません。でも予想で教育するのは難しい。証拠がないからです。トレーナーの指導に対し、スタイリスト本人が『そんなことはなかった』と思ってしまえば、何の意味もありません」と大井氏は話す。

今回のプログラムでは、本人のレポートと、モニターとの座談会の結果や“マインドビュー(下図)”を照らし合わせることで、両者のギャップが浮かび上がる。それが、スタイリストの育成に非常に役立ったという。

トニーアンドガイジャパン本部の大井拓人氏。新規顧客が見込みにくい昨今、顧客の固定化に軸足を置きつつある。



このモデルケースでは、モニター(30代女性・OL職)は初めての来店で、多少の不安もありましたが、写真や図を使ったカウンセリングにより、モニターの期待感がスタイリストの想定以上に高まりました。しかし、カット中は興味の無い話が多くなったため、モニターは期待しているイメージに近付いているのかどうかが分からず、ネガティブな印象を受けました。朝が忙しいOL職であるモニターにとっては、スタイリストが力を入れたセットを再現することを少し面倒に感じたようです。しかし、綺麗になった自分を見て最後には気分良くお帰りになりました。最後の雰囲気と実際の心の様子は少し違ったようです。


今回、偶然に苦手なタイプのモニターを施術したスタイリストがいたそうだが、やはり本人とモニターの感想のギャップが大きく、“マインドビュー”でみえるモニターの印象度も最後が低い結果になってしまったという。しかし、課題が明確になれば、指導側のアドバイスも的確になり、教わる側も理解しやすい。「モニターさんの感想とスタイリストの想像との答え合わせができることが一番のミソ。スタイリストも苦手な客層がそれぞれ違うので、それぞれに合った指導ができると教育の質が高まりますし、効率的です。また、モニターさんから評価された部分は本人の“売り”でもありますから、今後の接客や技術提供に自信を持って臨めるようになると思います」。

調査結果は、いわばカスタマイズした教材だと話す大井氏。今後は店長やトレーナーの指導手腕に期待を寄せている。「モニター調査の結果はいろいろな側面から読み解けるので、一度の研修だけでは完結しないと考えています。VTRが残っていますから、振り返りの機会を設けてもいいですし、店の状況に合わせて、工夫して教育を継続していく方針です」。

マニュアルを超えた接客をどう生み出すか。大井氏のこの言葉に、パーソナルサービスを重視する同社の姿勢が表れている。


トレーナー座談会:お客様の心の声と自分の意識とのギャップを知る

トニーアンドガイでは、接客についてどのように捉えていますか。

よねかわ氏:最近では、メディアに出たり広告を出せば新規客が一気に増えるということがあまり期待できないので、顧客の拡大は既存のお客様からのご紹介がメインです。このサイクルを早くするには、早い段階で信頼関係を築くことが大切です。

梅氏:お客様の中には、会話をあまり好まない方もいますが、それでも、最後にはプロのアドバイスがほしいという方は少なくありません。ですから、タイミングをみて要所を押さえるように指導しています。

左から、梅美奈子氏、菱沼恵良利氏、米川文氏


お客様の気持ちの変化をみる“マインドビュー”はいかがでしたか。

菱沼氏:マインドビューとスタイリスト本人の感想を照らし合わせると、本人がどこまで気づいているかがよく分かりますね。お客様の印象と自分の想定していた展開のギャップが分かれば、改善策も立てやすいと思います。

梅氏:カウンセリング段階に比べて仕上がりで下がってしまう場合は、会話では盛り上げられても技術が追いつかず、期待通りにできなかったということでしょうね。仕上がりについてきちんと技術を理解して話せているかは、施術の展開図が書けるかどうかで確認できます。


研修後、スタイリストの皆さんに変化はありましたか。

菱沼氏:モニターさんがその後にお客様になってくださると、身が引き締まる部分はあるようです。それに、「喜んでいただく」ことにとても敏感になり、接客の質も向上してきています。

よねかわ氏:今回のフィードバック研修を通して、自分の気持ちとお客様の心の声の相違点にかなり気づけたようです。いろいろなタイプのお客様に合わせられるスタイリストが最も伸びるので、今後は継続的に振り返りの場を設けて、常に客観的な視点を維持できるようにしたいと考えています。


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