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値上げ理由によって、消費者の納得感は異なる?【値上げに関する消費者アンケート】

相次ぐ値上げに、回答者の9割近くが「家計への負担を感じている」と回答し、過去最高を更新しました。一方で、原材料費や人件費の増加など「値上げの理由」によって価格改定に対する消費者の納得感に差があることも明らかになりました。「値上げに関する消費者アンケート」の結果をレポートします。(調査:2025年8月6日~10日、調査手法:ネットリサーチ、回答数:1,041名)

目次[非表示]

  1. 1.値上げによる「家計への負担感」、過去最高を更新
  2. 2.値上げの理由別、消費者の納得感
  3. 3.人件費の増加による値上げに対する消費者の反応/データ
  4. 4.人件費の増加による値上げに対する消費者の反応/コメント
  5. 5.まとめ

値上げによる「家計への負担感」、過去最高を更新

3年前から行っているこの調査ですが、「値上げによる家計への負担を感じている」と回答した人の割合が過去最高を更新しました。相次ぐ値上げに、これまで大きな負担を意識してこなかった層にも負担感が広がりつつある様子がうかがえます。

【図1】は、「値上げによる家計の負担を感じていますか?」という問いに10段階評価(10点:家計への負担をとても感じている〜1点:家計への負担を全く感じていない)で回答してもらった結果です。

【図1】値上げによる家計への負担感
設問:値上げによる家計への負担を感じていますか?図1値上げによる家計への負担感の経年変化【2025年調査値上げに関する消費者アンケート】


「家計への負担を感じている(6点以上)」と回答した人の割合は、3年前(2022年7月)は79.7%と8割ほどでしたが、今回(2025年8月)の調査では89.7%となり9割近くに達しました。た、「家計への負担をとても感じている(9点以上)」と回答した人の割合も、3年前は39.9%でしたが、今回の調査では57.6%と半数を超えました。値上げが続く中で消費者の負担感が高まり続けている様子がうかがえます。

では、消費者は値上げをする企業に対してどのような印象を抱いているのでしょうか?続いて、値上げの理由別に消費者の納得感を調べた結果をレポートします。

値上げの理由別、消費者の納得感

消費者は企業の値上げをどのように受け止めているのか、値上げの理由別に消費者の納得感を調査したところ、以下の結果となりました【図2】。


【図2】値上げの理由別、消費者の納得感
設問:○○を理由とした値上げは仕方ないと思いますか?
図2 値上げの理由別、消費者の納得感【2025年調査値上げに関する消費者アンケート】


納得派の割合(〇〇を理由とした値上げは仕方がない/どちらかと言えば仕方がないと回答した人の合計)が多かった値上げ理由は以下の通りです。

  • 原材料費の高騰による値上げ:72.6%
  • 人件費の増加による値上げ:62.5%

それ以外の値上げ理由も納得派が半数を上回っており、納得派が半数を下回ったのは「採用コストの増加による値上げ(39.3%)」のみでした。昨今の状況を考慮して、消費者も企業の値上げに一定の理解を示している様子がうかがえます。

ただし、もっとも納得派が多かった「原材料費の高騰による値上げ(72.6%)」と、もっとも納得派が少なかった「採用コストの増加による値上げ(39.3%)」 では33.3ポイントの差があります。企業が値上げを検討する際は、値上げ理由によって消費者の納得感が違う点には留意する必要がありそうです。

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人件費の増加による値上げに対する消費者の反応/データ

物価上昇と同時に賃金も増えれば、消費が活発になり、経済成長につながると期待されています。そのため「賃金の上昇をともなったインフレになるかどうかが大事だ」というメッセージが、政府やメディアからは発信されています。消費者としては値上げに苦しさを感じつつも、労働者としては賃金引き上げの必要性を認めざるを得ない状況です。

そのような状況の中で「人件費の増加を理由とした値上げ」に対する消費者の納得感はどのように変化しているのでしょうか?納得感の経年変化に加え、年代別や世帯年収別の違いなど、複数の切り口で結果をレポートします。

「人件費の増加による値上げ」への納得感は、年々高まっている

【図3】は、人件費の増加を理由とした値上げに対する納得感の経年変化です。納得派の割合(仕方がないと思う/どちらかといえば仕方がないと思うと回答した人の合計)は、年々高まっています。3年前(2022年8月)の調査では納得派の割合は49.8%と約5割でしたが、今回の調査(2025年8月)では62.5%と約6割に増えています。

【図3】経年変化/人件費の増加を理由とした値上げに対する納得感
設問:「人件費の増加」を理由とした値上げは仕方ないと思いますか?
図3 値上げの理由別、消費者の納得感の経年変化【2025年調査値上げに関する消費者アンケート】

若年層ほど納得感が高い

年代別では、若年層ほど納得派(仕方がないと思う/どちらかといえば仕方がないと思うと回答した人の合計)の割合は高い傾向にありました。また50代は、納得派の割合も少ないですが、非納得派の割合も少なく、「どちらともいえない」と回答した人が他の年代に比べると多くなっています【図4】。

【図4】年代別/人件費の増加を理由とした値上げに対する納得感
設問: 「人件費の増加」を理由とした値上げは仕方ないと思いますか?図4 年代別_値上げの理由別、消費者の納得感【2025年調査値上げに関する消費者アンケート】


【図5】は、人件費の増加を理由とした値上げについて「納得派」の割合が2年半前(2023年2月)から、どう変化したのかを示したグラフです。すべての世代で納得派の割合は増加しましたが、特に、20代・30代と、若年層ほど納得派の割合が大きく増えています。


【図5】年代別/人件費増が理由の値上げ「納得派」の割合変化

図4-2 年代別_値上げの理由別、消費者の納得感の経年変化【2025年調査値上げに関する消費者アンケート】

世帯年収が低い層でも納得感が上昇

【図6】は、人件費の増加を理由とした値上げに対する納得感を世帯年収別に示したグラフです。いずれの世帯年収でも、納得派(仕方がないと思う/どちらかといえば仕方がないと思うと回答した人の合計)の割合が半数を超えています。ただし、どの層でも「どちらかといえば仕方がない」がもっとも多数を占めており、諸手をあげて賛成しているわけではない点には注意が必要です。

【図6】世帯年収別  /人件費の増加を理由とした値上げに対する納得感
設問:「人件費の増加」を理由とした値上げは仕方ないと思いますか?図5 世帯年収別_値上げの理由別、消費者の納得感【2025年調査値上げに関する消費者アンケート】

【図7】は、2年半前(2023年2月)と現在(2025年8月)で、世帯年収帯ごとの納得派の割合がどう変化したのかを示したグラフです。すべての世帯年収で納得派の割合が上昇しています。


【図7】世帯年収別/人件費増が理由の値上げ「納得派」の割合変化
図5-2 世帯年収別_値上げの理由別、消費者の納得感の経年変化【2025年調査値上げに関する消費者アンケート】


2023年2月の時点では世帯年収1,000万円を境に納得派の割合に差がありましたが、特に世帯年収が低い層で納得派が増えたことで、世帯年収間での差が縮小しました。

人件費の増加による値上げに対する消費者の反応/コメント

消費者が納得できる、もしくは、納得できないと回答する時、その背景にはどのような理由があるのでしょうか?本調査に寄せられたコメントの分析結果をレポートします。

納得派のコメント傾向

人件費の増加による値上げについて、納得派(仕方がないと思う/どちらかといえば仕方がないと思うと回答した人)から寄せられたコメントには、以下のキーワードが多く出現していました。

《コメント出現率》

回答に該当キーワードが含まれていた割合

例:100名が回答し、そのうち10名が「良い」という表現を含む回答を記入した場合、「良い」のコメント出現率は10%となる

キーワード

出現率

やむを得ないと思う/理解できる

30.6%

賃金が上がっている(ので仕方がないと思う)
29.2%
人手不足(なので仕方がないと思う)
14.0%
従業員の生活維持(のためには仕方がないと思う)
10.6%
人材確保、育成(のために仕方がないと思う)
9.5%
自分も雇用されている(から仕方がないと思える)
6.9%

具体的には以下のコメントが寄せられました。

  • より働きやすい環境を目指す為に必要だと思う(50代女性)
  • 人件費の高騰が販売価格に反映するのは当然(50代男性)
  • 給料を上げないと経済が回らないから(20代男性)


納得派の回答では「人手不足の中で人材を確保するためにはやむを得ない」「インフレの中で従業員の生活を維持するにはやむを得ない」といったコメントが多く見られました。昨今の経営環境の中では企業の人件費増はやむを得ず、それが値上げにつながってしまうことは仕方がないと判断している様子がうかがえます。

非納得派のコメント傾向

「人件費の増加を理由とした値上げは納得できない(仕方がないとは思えない/どちらかといえば仕方がないとは思わない)」と回答した人のコメントには、以下のキーワードが多く出現していました。

キーワード

コメント出現率

企業努力不足だと思う/無駄を削減してほしい

36.0%

やむを得ないとは思う/理解できる(が仕方がないとは思わない)
10.1%
賃金が上がっている(が仕方がないとは思わない)
7.9%
自分も雇用されている(が仕方がないとは思わない)
7.3%
便乗値上げの疑惑/待遇改善につながっていない疑惑がある
(ので仕方がないとは思えない)
7.3%
企業の説明不足/値上げ額の内訳が不明(なので仕方がないとは思わない)
6.7%


具体的には以下のようなコメントが寄せられていました。

  • 待遇改善は企業が考えるべきで、商品の値段に上乗せするのは違うと思う(40代男性)
  • 人件費は会社の方針、そのための値上げは消費者としてはあまり納得できない(40代男性 )
  • 消費者に見えにくいコストだから(30代男性)
  • 待遇改善で支出が増えるのは理解できるが、値上げの前に削れるところを全部削ったのかがわからないため(40代女性)

納得できないを選んだ人の回答でも、人件費の増加が起きていることは理解しているというコメントが多く見られました。その上で「そのコスト増は企業努力で吸収すべきで商品価格に上乗せするのは納得できない」「理解はできるが家計が苦しいため仕方がないとは思えない」といった声が寄せられました。

コストダウンのために行った企業努力や、値上げに至った理由を丁寧に伝える情報発信が、これまで以上に重要になってくると言えそうです。

まとめ

本調査では、値上げに対する消費者の反応として以下のような点をレポートしました。

  • 値上げによる家計への負担感を「感じている(6点以上)」が約9割、過去最高を更新。
  • 値上げ理由としては「原材料高騰による値上げ」「人件費増加による値上げ」は納得感が高い。
  • 「人件費増による値上げ」に対する納得派の割合は22年49.8%→25年62.5%へ上昇。
  • コメント回答からは、消費者が人件費の増加そのものには理解を示していることがわかる。その上で、人件費増による値上げに納得できるかは消費者によって意見がわかれる。

本記事が、物価上昇への対応策を考える際のヒントになれば幸いです。

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【調査概要】
調査エリア:全国
調査対象者:20歳~59歳 男女
サンプル数:1,041サンプル
調査期間 :2025年8月6日~10日
調査機関 :株式会社MS&Consulting

※分析:MS&Consulting データマネジメントチーム  河野智基、執筆:同社 ブランディング推進部  並木彩華

MS&Consulting 河野智基
MS&Consulting 河野智基
株式会社MS&Consulting リサーチ部データマネジメントチーム アナリスト。東京大学大学院農学生命科学研究科修了(農学修士)。大学院ではAIを用いた微生物ゲノム研究に従事。そのバックグラウンドをもとに、現在は社内のデータ分析・AI利活用を推進し、調査・分析業務の高度化に取り組んでいる。

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