【第6回外食クオリティサービス・フォーラムレポート】 顧客の声を地道に反映。サービスを均質化しCISを実現



株式会社ファイブスター

本社所在地:滋賀県彦根市河原2-1-9
サイトURL:http://www.f-star.co.jp/
設立:1984年12月
店舗数:直営91店
経営理念
お客様に満足や幸せを提供するフードサービスビジネスを営み、地域社会に貢献するとともに、働く仲間の物心両面の幸福を追求する。
展開する全ブランド
ファミリーレストラン「COCO’S」、廻鮮寿司「海座(うみざ)」、すし処「海座本店」、にぎわいダイニング「いちおしや伝五郎」


※記載されている会社概要や役職名などは、講演(掲載)当時のものです。ご了承ください。


顧客がどう感じるのか、視点を理解できていなかった

ファミリーレストラン「COCO’S」や廻鮮寿司「海座」、すし処「海座本店」など、滋賀県を中心に近畿・北陸エリアで91店舗を経営するファイブスター。同社はこのほど、COCO’S業態でMSR180点以上の好成績を獲得、倒産の危機にまで落ち込んでいた業績もV字回復を果たした。海座そしてCOCO’Sの事業部長を歴任し、立て直しを実現してきた現・代表取締役社長の笹原浩氏は、「一連の改善活動の起点になったのは、私自身が『お客様に満足や幸せを提供する』という経営理念を本質的に理解できていなかったと気付いたことでした」と語る。


1984年に創業した同社は、まず2004年に海座が大幅な売上減少に陥った。そのタイミングで海座の事業部長に就任した笹原氏は、最初にシャリ、ネタ、しょうゆをすべて変更し商品力の向上を図った。だが、顧客から寄せられたのはサービス面に関するクレームばかりであった。

「レーンに寿司が流れない、寿司が乾いているなど、基本中の基本ができていなかったことに愕然としました。このとき初めて、お客様がどこに不満を感じているのかを全く理解していなかったことに気付かされました。当社の理念に改めて向き合い、それを実現するために、『自分が最もうるさい海座の客になろう』と考えたのです」。

顧客の視点で行き届いていない部分を把握し、現場と連携して一つずつ改善した結果、4年後には客数を168%も伸ばすことができた。ただ、海座の業績回復には後悔もある、と笹原氏。「経営上、残念ながら閉店した店舗もありました。でも最終営業日にはたくさんの常連のお客様が来店し、『もう一度この地に店を出して欲しい』と言われまして…。閉店こそ、経営理念に一番反することだと痛感しました」。


「一店舗も閉店させない」徹底した改革で全店舗を底上げ

2008年、笹原氏はリーマンショックに端を発するCOCO’Sの立て直しに着手する。同社の業績の約8割を担う根幹事業だけに、約半数の店舗が赤字という事態は深刻だった。ここで、「群を抜いたQSCで地域一番店になる」という定性的な目標と、「全店舗を黒字にする」という定量的な目標を、3年で達成する中期ビジョンを打ち出した。また、海座の経験から一店舗も閉店しないと決めていた。

まず組織マネジメント面では、人事に職務制度を取り入れ、一度店長に就任しても役割が果たせなければ降格も実行。結果として降格した店長に、笹原氏は「教育しなかった自分の責任だ」と謝ったという。その後、中間管理職の階層をスリム化し、地区長が受け持つ店数を6~8店舗にして目が行き届くように改善。地区の店長たちと競合店を視察したりと工夫も重ねた。また、本部のお客様相談窓口に届いたクレームを、翌日から全店に反映できるように整備した。


そして組織の面と並んで力を入れたのは、飲食店としての基本の徹底だ。「顧客満足のためには、クリンリネスや接客など当たり前のことをどこよりも徹底することが大事。そこで、73店のフロアスタッフ約1100人全員の正面と横写真を用意し、身だしなみを徹底して統一しました」。

こうした改革に一定の手応えを得ながらも、笹原氏は「現場のスタッフが自らお客様の気持ちに気付いて、QSCを改善して欲しいと思っていた」と話す。その思いは次第に現場に伝わり、顧客の声を受けて自分たちで店舗の修繕を行うなど、積極的な動きが生まれてきた。独自の顧客アンケート実施を経てミステリーショッピングリサーチを導入し、マニュアルではなく心を重視した現場主導での改善を続けることで、店舗間のばらつきも解消した。

現在は、スタッフの表彰制度や、どういうサービスで顧客に喜んでもらうのかを宣言する朝礼などを通して、「喜んでいただくことを生きがいとする、前向きなスタッフが増えてきた」と笹原氏。理念が従業員に根付き、CSそして業績に反映された好例だ。

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