【第6回外食クオリティサービス・フォーラムレポート】 顧客、スタッフ、地域社会、関わる人すべての幸せをつくる



北一食品株式会社

URL:http://www.kita1.co.jp/
本社所在地:北海道北見市常盤町4-1-12
設立:1983年7月
店舗数:直営19店
経営理念:お客様の満足を喜びとし仕事を通して働く人の物、心の豊かさを追求することにより地域社会に貢献する
展開する全ブランド:回転寿し トリトン、こだわりとんかつ かつ徳、べんとう家 ごはんごはん


※記載されている会社概要や役職名などは、講演(掲載)当時のものです。ご了承ください。


働く人の心の豊かさを大事にする経営理念

回転寿し「トリトン」をはじめ、複数の業態で計19店舗を展開する北一食品。拠点・北海道の新鮮な食材を強みとし、この5月には東京スカイツリーのエリアにオープンする商業施設にトリトンの出店を控えるなど、創業30年目に弾みをつけている。

その背景には、業績不振の店舗の課題を根気よく洗い出し、スタッフに向き合おうとする姿勢があった。代表取締役社長の前田康仁氏は、同社出身のオーナーが開店したものの経営に行き詰まり引き継いだ旭川地区のトリトン旭神店を例に挙げ、鮮度など商品の問題点はすぐに改善したが、経営は思うように回復しなかったと話す。


「やはり人が育っていないことが要因だと分かったので、改めて理念教育に力を入れました。当社ではCSだけでなく、働く人の心の豊かさまで追求することを理念として掲げています。なので、問題があれば理念に基づいて我々がスタッフに真正面から向き合うことが大事だと考えています」(前田氏)。

だが、不振店を立て直すのは簡単なことではない。旭神店の副店長を経て店長に就任した阿部氏は、管理しようとするあまり、「店長の発言が重いことを感じながらも、つい自分の視点だけで話をしたり、できるまで無理をさせたりといった振る舞いをしてしまった」と振り返る。上司から指摘されても人のせいにしてしまう自分に、スタッフは当然ついて来なかった。

転機は、東京出張時に訪れた店で「笑顔の大切さ」に気付いたとき。「スタッフが笑顔で接客しなければ、お客様に喜んでいただけるはずがない。スタッフが笑顔でいられるためには、目標達成の場を自分が整えなくてはと実感しました」(阿部氏)。


現場を率いる要は店長。ぶれない言動が肝心

まず行ったのは、自分自身が笑顔を心がけ、スタッフをほめることだ。これまでは厳しい指摘をしてばかりだったため、店長の改心はすぐには伝わらなかったが、徐々にスタッフも明るくなってきたという。スタッフ間の挨拶を大事にし、指導する際にはメモする時間を十分に取るなど具体的な指導方法もスタッフの視点で工夫をした結果、ミステリーショッピングリサーチの評価も向上した。従業員の変化が目に見えてCSに反映され始めたのだ。

店舗の改善は、本部スタッフが全面的にバックアップ。スタッフの成長には、現場同様に笑顔を重視する研修や、スタッフ同士で感謝を伝え合う「ありがとうノート」の促進、副店長を中心としたホスピタリティ部会などが効果を発揮している。


店舗サポートを担当する接客トレーナーの土田氏は、「研修で何より重視しているのは、やはり理念の浸透」だと話す。「当社の理念には、お客様やスタッフ、地域の皆様まで、関わる人すべての幸せをつくる意志を込めています。研修を通して目指す姿は、どれもその理念に通じています。そのため研修では、なぜ今この研修を行っているのかを常に問いかけて、自分なりの目的意識を持ってもらうようにしています」(土田氏)。

営業部長の小笠原氏は、同社の「成長の3要素」として、「組織づくり、ビジネスモデル、マーケティング」の3つの柱を挙げる。これらのいずれかが欠けても成り立たない。「モデルやマーケティングがどんなに良くても、実際に働くのは現場のスタッフ。その中心になるのは、やはり店長です。店長には新人教育の際に、特に理念教育に時間を割くように頼んでいるのですが、それは店長が繰り返し語ることで本人に腹落ちすることを狙っています。そうすると、言動がぶれなくなるのです」(小笠原氏)。

今や旭神店には「スタッフが笑顔で元気」と顧客からたくさんの声が寄せられ、業績も社内でトップに。「人が成長する企業をつくりたい」という前田社長のビジョンは、すでに実現しつつある。

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