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サンマルクHDはなぜ人が定着し、業績も伸びるのか

「ベーカリーレストラン  サンマルク」「倉式珈琲」など国内外に約870店舗を展開する株式会社サンマルクホールディングス(以下、サンマルクHD)。2026年3月期の売上高は前期比プラス24.7%の884億円と好調な業績を維持されています。今回は、その好調な業績を土台で支える「顧客の声を聴く仕組み」や「多業態をつなぐ全社横断の取り組み」について、人材開発室 執行役員の桂田氏と、倉式珈琲事業部 CS部 マネージャーの濵本氏にお話を伺いました。

お客様の求める「いいね」に応え、他社と競合しない価値をつくる

―業績が好調な背景を教えてください。

桂田氏:サンマルクHDは1991年に創業しました。当時、ファミリーレストランはすでに全国に存在していて、市場も需要もある状態でした。一方で、当初は特別感のあったファミリーレストランがお客様にとって当たり前になっていく流れが感じられる時期でもありました。

そこで私たちは、「ホテル並みの味・雰囲気・サービスでお値段はホテルの半額以下」「焼きたてパンの食べ放題」といった"新たな価値の創造"を大切にブランドを運営してきました。

サンマルクホールディングス桂田 章さんサンマルクHDはなぜ 人が定着し、業績も伸びるのか
 お話を伺った、同社  人材開発室 執行役員の桂田章氏

また、模倣されやすい業界といわれる外食業界において、他社と競合しない会社をつくるための"見えない参入障壁"を持つことも意識してきました。

そのひとつが「聴く仕組みづくり」です。早期から、お客様アンケートを活用し、現在では覆面調査やエンゲージメント調査なども追加して「顧客に聴く」「従業員に聴く」ことを仕組み化し、環境変化に柔軟に対応できる経営を行ってきました。

他にもいくつかありますが、これらの"見えない参入障壁"がサンマルクHDを支えてくれています。その後、多業態マルチブランド展開を進めリスクの分散をしてきたこともあり、2025年3月期の売上高は709億円、前期比 +9.8%、2026年3月期の売上高は884億円、前期比 +24.7%と順調に成長しています。

<有価証券報告書(2025年3月期)>

業績、そして、業績を支える従業員に関わるスコアの両面が改善

多業態マルチブランド展開を支える仕組み


1.全社横断で行う「QSC会議」


―約20ものブランドを展開されています。どのように運営品質を維持されていますか?

桂田氏各ブランドの担当者が集まる「QSC会議」を毎月2回オンライン開催しています(QSC:Quality・品質、Service・サービス、Cleanliness・清潔さ)覆面調査のスコアやエンゲージメント調査スコアなど、全社横断で設定した目標に向けて取り組んだ内容、例えば、サービスや衛生管理の改善といった取り組みについて共有する場です。ざっくばらんに質疑応答できる時間を取っていることもあり、他で生まれた成功事例を全体にすばやく横展開する機会となっています。

また、この会議にはサンマルクHDの役員も参加して、現場の声を汲み上げています。役員の即時判断ですばやい改善につながったケースも多数あります。ブランドの垣根を越えて切磋琢磨するこの会議は、多ブランド経営を支える全社共通のインフラとなっています。

<多業態マルチブランド展開でリスクを分散、安定成長を実現している>

多業態・マルチブランド戦略_サンマルクホールディングス_ロゴ


2.1,000名以上が集まる「社員総会」


―1,000名を超える社員が集まる「社員総会」の目的や内容を教えてください。

桂田氏私たちは、社員総会をコストではなく、企業文化への投資だと位置づけています。社員総会ではグループトップから経営理念や方針を伝える時間がありますが、トップが1,000名を超える社員と直接コミュニケーションを取れる効果はとても大きいと考えています。

また、「各ブランドの取り組み発表」や「接遇ロールプレイングコンテスト」も行っています。これらは、理念を行動に落とし込むとはどういうことなのか、実践事例から学べる場となっています。

<社員総会>

私たちは「最高のひとときを創造する企業」として、まずは社員自身が記憶に残る体験をすることが大切だと考えています。社員総会はプログラムの内容はもちろん、ホテルの方々が提供してくださる料理やサービスを味わう時間、音・光・映像といった演出に心が動かされる時間、それらを含めて大切にしています。

アルバイトまで「お客様の声」を届ける

―ここからは"見えない参入障壁"のひとつとして大事にされている「顧客の声を聴く仕組み」について伺います。倉式珈琲では、覆面調査をどのように活用されていますか?

濵本氏:覆面調査を始める時に一番の目的としてあげたのは「お客様の声の見える化」です。店長や社員まではお客様の声が届いても、アルバイトスタッフまでは十分に届かないことがあったからです。

覆面調査を活用したことで「お客様が何をしたら喜んでくださるのか」「なぜマニュアルがあるのか」が見えるようになりました。マニュアル通りにやることで、これだけ喜びの声をもらえるのだと、アルバイト含めて全員に知ってもらえたことは、取り組んでみて良かった点です。

サンマルクホールディングス濱本ゆかり氏サンマルクHDはなぜ 人が定着し、業績も伸びるのか
お話を伺った、倉式珈琲事業部 CS部 マネージャーの濵本ゆかり氏

覆面調査を現場のモチベーションにつなげるという点では「現場が納得できる調査設問」を大切にしています。毎月調査を行っていますが、高い点数をいただければ現場の喜びにつながります。だからこそ、設備の経年劣化など、スタッフの努力ではどうにもならない項目は見直すなど設問は定期的に改善しています。

また、調査の時間帯も平日の昼、平日の夜、休日の昼、休日の夜の4カ月サイクルで行って「私たちは関係がない」というスタッフを出さないように工夫しています。

現在、覆面調査の結果を見ることができるアプリ「tenpoketトーク」の登録率はスタッフの95%以上、レポート閲覧率は約70%と高い数字になっています。その結果、覆面調査の平均点も3年目に入っても右肩上がりを維持し続けています。

本部と現場をつなぐ「情報発信」と「多角的な表彰」


1.全社員に直接情報を発信


―覆面調査の活用度がとても高いです。どのような工夫をされていますか?

濵本氏月に2回、アルバイトを含めた全社員に本部から直接メッセージを送っています。平均点や良かった点、悪かった点などです。地道に続けたことで、出勤したスタッフに「5分ぐらいレポートを読んできて」と促す動きが自然と生まれるなど少しずつ閲覧率が上がり、今では当たり前の文化になってきています。

<覆面調査に関する配信内容>

「声が届く本部」「説得力のある発信」を大切にし、アルバイト含め全員に直接メッセージを届ける

―情報発信に使われている「tenpoketトーク」についても教えてください。

本部からのメッセージを届けたくても、社員を経由するとアルバイトスタッフ全員に届けるのは難しい面がありました。そこで、MS&Consultingさんの業務連絡ツール「tenpoketトーク」にある本部通信機能(本部からアルバイト含め全員に直接メッセージを届けられる機能)を使うようにしました。

この機能を使ってニュースレターも定期的に送っています。新メニューの説明、ソフトクリームの巻き方のコツなど、現場で悩みやすい内容を中心に構成した新聞です。さまざまな発信を通して活用度が少しずつ高まったと思います。

<ニュースレター>


2.店舗をさまざまな角度から称賛する


―覆面調査の結果を本部はどのように活用していますか?

濵本氏:覆面調査の点数は社員評価にも活用しています。また、管理画面で店舗ごとの覆面調査活用率、例えば「レポート閲覧率」や「気づきシート提出率」なども確認できるので、これらのスコアを店舗表彰に取り入れるようにしました。

このため、点数が良かった店舗はもちろん、毎月改善に向き合っている店舗も称えられるようになったことは、大きな変化だと感じています。

食材費や人件費が上がる中、倉式珈琲では価格改定を行いました。しかし、既存店客数は減ることなく右肩上がりです。クレーム件数も下がり続けています。覆面調査を通して顧客満足度やQSCレベルを高めてきた成果だと考えています。

―ありがとうございました。

※本記事は2026年5月に開催したセミナーの講演レポートです。
※監修:株式会社MS&Consulting マネージャー   角 俊英、執筆:同社  児玉彩子
※記載されている数値や固有名詞などはセミナー当時のものです。

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