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外的環境の変化に一喜一憂するのではなく、 その時々で最善を尽くすことが重要

株式会社イデア

大阪府吹田市豊津町13-44 ユカミ江坂ビル402

ウェブサイト:http://www.idea-co.jp/


『季刊MS&コンサルティング 2009年春号』掲載
取材:権純浩、文:西山博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

宮崎地鶏炭火焼「車」を中心に、関西・関東に20店舗を展開する株式会社イデア。2004年8月よりMSR(ミステリーショッピングリサーチ)、2007年6月より日次決算システム@bino-FSを導入した。不況の中でも高業績を叩き出す、強固なマネジメント体制実現の背景について、専務の菅野功氏にお話を伺った。

鳥インフルエンザの年には、逆に売上が伸びた

昨今の経済環境の影響で、飲食業界に限らず多くの企業が苦しい状況に立たされていますが、「外的要因による苦境」という点では、我々はそれに先立つ経験がありました。2004年、2006年の2回にわたる鳥インフルエンザ問題です

しかし実績を振り返ってみると、実は2004年などは逆に売上を伸ばしているのです。なぜそんなことができたのかということですが、リピーター比率の高い小型店舗の伸びが特に大きかったことから考えて、お客様とのコミュニケーションがきちんと取れていたことに理由があったのではないかと、私は分析しています。日頃のコミュニケーションの中で、店長・スタッフとお客様との間に信頼関係が築かれていたからこそ、「イデアなら安心して食べられる」と感じて頂くことができたのではないでしょうか。

昨今の経済状況もまた、厳しいことには間違いありません。ただ、そのことに対してあまり危機感は持っていないのです。鳥インフルエンザ問題もそうですが、問題がないときのことを思い出すから、 「昔は良かった」と感じてしまう。でも、いくら愚痴をこぼしたって、外的要因を解決できるわけではありません。済んだことは済んだこと。常に今がスタートラインです。外的環境の変化に一喜一憂するのではなく、その時々で最善を尽くすことが重要だと思います。

専務 菅野功氏


今ある資産を120%使う

最近の取り組みとして弊社では、昨年末から数店舗でランチ営業を始めました。景気が悪いと、会社帰りに飲みに行こうというお客様の数も減りますし、また帰りの足にタクシーを使うのが厳しいということもあって深夜の売上が落ちますので、その分を昼間に持っていこうという発想です。

結局は、今ある資産を120%使うしかないのです。売上が減るということは、単純に言えばその分の負担が減るということですから、その余力を別のところに割り振ることができるはずです。

もっともランチだけの採算という観点では、単価が低い割には夜とほぼ同じ人数を使わざるを得ませんから、赤字ではないにせよすごく利益が出るというものではありません。しかし、ランチをやることによる宣伝効果まで含めて考えると、十分ではないかと思っています。


苦しいときこそ「心づくり教育」が大切

もちろん単純に深夜の人員を昼間に移せば良いわけではなく、現場のスタッフの負担が増していることは事実です。そういう苦しい状況の中でもスタッフが頑張ってくれるのは、最終的には会社のビジョンがきちんと浸透しているか、それによってスタッフ一人ひとりが正しく動機づけされているかというところにかかってくるのではないかと思います。

たとえば、以前勉強のために、名古屋の゛寅衛門さんの朝礼を見学させて頂いたことがあります。飲食業界では、活気がある朝礼で有名なお店です。 「スタッフ全員が経営理念を暗記していて、大声で唱和している」とか、 「スタッフによる一分間スピーチ」といった分かりやすい部分だけが注目されていますが、じゃあそれを真似すれば゛寅衛門レベルの店が作れるのかというと、そうではないんです。そういう店は朝礼以前に、「心づくり教育」が行き届いていて、そういう根幹があるからこそ、すごい朝礼もできるのです。


人は関われば関わるほど変わる

弊社でも昨年から、スタッフの「心づくり教育」のために、新しい研修制度をスタートさせました。店長クラス、主任クラス、中堅クラスというクラスごとに、5~10名くらいのグループで、それぞれ月に2回、3ヶ月間を1クールとした研修体系です。「習ったことを現場に持って帰って実際に行動する」ということを主眼に置いた研修ですので、「90日間の研修の中に、6回集合形式の研修がある」と言ったほうが、正しいかもしれません。

この研修をやってみて感じたのは、人というのは関われば関わるほど変わるということですね。参加者自身も、自分の変化を実感しているようです。また、参加者だけではなく、その周囲の人にも影響を与えています。もともとは店長と主任だけのクラス設定だったのですが、主任の変貌ぶりを見たスタッフが、「僕らも研修を受けてみたい」と自分達から言ってきたのが、中堅クラスを作った理由なんです。

また、これらの研修を開始するのと時期を同じくして「専務塾(http://ameblo.jp/idea-juku/)」というブログを立ち上げました。心を元気にしていくためのトレーニングですから、社内にだけ留めておくのではなく、飲食業界全体の活性化に役立つことができればと思っています。


明文化することによる効果

弊社では、オーナーがほとんど会社におりませんので、直接的なコミュニケーションができないのを埋めるという意味で、経営者の考えを非常に細かく明文化しています。経営理念、社訓の他にも、社風、成功の4カ条などがあります。これらの行動指針は、企業が大きくなってくればくるほど、重要性が増すものだと思っています。私自身が店長として働いていたころは、まだ店も5店舗ほどしかなく、オーナーとの距離も近かったのですが、規模が大きくなってくると、どうしてもオーナーと現場との距離が遠くなってきます。遠くなるというか、間に人が介在するようになってくるわけです。こうなってきたときに、伝言ゲームのように途中でメッセージを変質させてしまわないためにも、文字で書いて伝えるということは重要です。そして間に入る私のような立場の人間は、ただそれをメッセンジャー・ボーイのようにそのまま伝えるのではなく、噛み砕いてわかりやすく伝えるという役割を担っていかなければならないと考えています。


理想の店長「7つの習慣」

(1) 毎日のお店での関わり方(朝礼、ミーティング、終礼、連絡ノート、1分コミュニケーション)
(2) 日報での営業報告
(3) 週刊報告書の作成と報告
(4) 店長会議、全店長会議、各種勉強会への参加
(5) 毎月の店長評価シートの実施
(6) 毎月の店長会議資料の作成
(7) リーダーとしての見本となる言動

一番肝心なのは、“本気で店長業務を全うする“と思うこと。7つの習慣を行うには一日2時間、一ヶ月60時間は必要です。新人の店長であればもっと時間がかかるはずです。その時間を今までにプラスして作らなければいけません。そして継続するのです。キーワードは「習慣化」です。それが“本気”ということです。「できたらいいな」ではやるつもりがないのと変わりません。「絶対にいい店長になるんだ」という決心をしてください。想いはかなう!

※イデアでは、考え方を積極的に明文化している。上記は、「店長の目指すべき姿」と「なぜそれを目指すのか」を明らかにしたもの。


一番の教育は、自分自身が変わること

私はこれまでもいろいろな社内教育を行ってきましたが、一番効果がある教育というのは、私自身が変わることではないかと思います。 「彼らをこういうふうに育てよう」というのではなく、自分自身が彼らの手本になって、「なるほど、専務みたいにすれば、もっとこうなるんだな」と納得させられる存在になるということが大事なのではないかと。

「心づくり教育」は、テクニックと違って、一朝一夕にできるものではありませんが、まずは自分がやってみせるというスタンスで、とにかく地道に続けていくこと。これが、強い組織を作っていくことへの唯一の道なのだと考えています。


@bino-FS活用と強固なマネジメント体制に向けての取り組み事例

@bino-FSの活用によるメリット(1)

POSシステム、フーズインフォマートASP受発注システム、勤怠管理システムとの連携によって、数字が苦手な店長でも短時間でミスの少ない日次決算が可能となり、正確でタイムリーな情報に基づいて経営スピードを向上させるとともに、より直接的な営業活動時間を確保することに成功。


@bino-FSの活用によるメリット(2)

本部側でも、各店の状況把握や他店舗との比較分析が容易になったことで、スピーディーなマネジメントを実現。また帳票カスタマイズ機能によって、成果創出のために必要な情報だけを重点的に管理することも可能(画像はモニター画面より抜粋)。


ルーチンチェック表

研修の中で用いられているワークシートの一つが「ルーチンチェック表」。仕事・プライベートにおいて、「調子が良いときの状態」と、「そのために必要な要素」を詳細に可視化した上で、それらの項目ができているかをチェックする。


リピート戦略

外的環境の変化にも強い店を作るために重要なのは、「店(スタッフ)とお客様との距離を近づける」こと。そのためにイデアでは、RFM分析(※)の中でも特にRとFの指標に着目した顧客管理を行っている。

※「R(recency:最新購買日)」「F(frequency:累積購買回数)」「M(monetary:累積購買金額)」の3つの指標で顧客をセグメントし、セグメント別の顧客管理を行う手法。

(1)ごく最近、初めて来店されたお客様

店舗の対応によって、ヘビーユーザーへと移行させられる可能性の高いお客様。店舗からのDM等で再来店を促す。

(2)ヘビーユーザー

ポイントカードなどの使い方を熟知されている層なので、特典は設けないが、メールマガジン等を通じて定期的なコミュニケーションを欠かさない。

(3)以前に一度来店されたが、その後来店されていないお客様

店舗での対応が難しいお客様なので、本部からのメールマガジン等で再来店を促す。特典も厚めに付ける。

(4)最近来店がない、以前のヘビーユーザー

定期的なコミュニケーションは行うが、何らかの事情によって来られなくなった可能性も高いので、コストはかけない。


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