スタッフの主体性を引き出すポイントは、「目標設定と数値化」にあり

株式会社パーク・コーポレーション

東京都港区南青山5-1-2

会社ウェブサイト:http://www.park-corp.jp


『季刊MS&コンサルティング 2008年夏号』掲載
聞き手:西山博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

「Living With Flowers Everyday 花や緑に囲まれた心ゆたかな生活を」を理念に、花を贈呈用に購入する習慣しかもたない日本人に対して、日常でも花を購入して自宅に飾るという新しいライフスタイルを提案し、業績を向上させ続けている株式会社パーク・コーポレーション。 現在、日経MJのブランド力調査でも20位にランキングされた生花小売店「青山フラワーマーケット」を中心に、全国で約70の店舗を展開している。今回、代表取締役社長 井上英明氏に、押し付けないマネジメントから生まれるスタッフの「主体性」の引き出し方と、CSに対する考えを聞いた。

2年間のトライアル期間を経て、ほぼ全店176店舗(2008年7月度末現在)で MSR導入を決められた理由を教えていただけますか?

ビジネスをやろうと考えていた時に、花の市場に行く機会があったのですが、花の値段がお店の10分の1ぐらいで売られていたのです。それに驚いて、花を安く提供したらビジネスになるのではないかと直感しました。当時の花屋はどこも贈呈用商品が主体だったため、コチョウランを置いてない店はありませんでした。しかし、贈呈用のために日常の需要が少なくロスが多く、そのため値段も高い。そこで、自宅用の花を主商品にすれば、値段を抑えて提供できるのではないかと考えました。たとえば贈呈用のバラだったら、値段が高くても茎の長いものが必要ですが、自宅用なら茎の長さは短くていいし、その分値段も安く設定できる。そういった値段のギャップにビジネスチャンスを感じました。

代表取締役社長 井上英明氏


パーク・コーポレーションという名前の由来は?

アメリカのセントラル・パークからきています。ニューヨーク勤務時代にセントラル・パークへ行ったのですが、公園という空間に様々な人が自由意志で来て、走ったり遊んだりしている。その光景が印象に残り、新しい会社もそういう主体性のある人が集まる企業にしたいと想い名づけました。僕がそうなのですが、人から言われてやるのは嫌いだけれども、自分で決めてやることは楽しい。だからスタッフにも「やりなさい」とは言いたくない。弊社は、合理性よりもモチベーションを重視する傾向があります。商品の仕入れを本部で一括して行った方が合理的かもしれませんが、あえて各店で発注し、売上目標も各店で決めています。私は、人間とは基本的に向上心を持っていると思っています。例えば、去年100万円売ったのに今年90万で良いと言う人はいません。下がってしまったら「どうしてだろう?」と考える。そういう風土が良いと考えています。


スタッフの皆さんが自分で目標を立ててモチベーションを向上させていますが、御社の目標を立てるための特別な取り組みを教えて下さい。

目標を立てた後、実績を数値化してランキングします。自分の立てた目標の達成度合いがランキングされると、すごく楽しいでしょう。だから目標設定は徹底します。一年の最初に「年頭にあたり」というフォーマットを独自に作成して、数値計画だけでなく、人材育成計画や店舗作りのプラン、販促計画などを詳細に設計してもらっています。そして、全店の店長と僕が半年に1回、ブランドマネージャーが3ヶ月に1回、個別に面談して、目標に対する進捗を確認します。店長は毎月1回、メンバーとの面談を実施して進捗結果を共有し、一緒に改善します。

原価や人件費が全店の中で何位になるのか、現場のスタッフがわかりやすいように提示しています。サッカーでも野球でもゴルフでも、数値で結果が出るから面白いですよね。強制してやらせるわけではない。数値が上がっていない店舗があっても叱責するのではなく、どうしたら良くなるかを一緒に考えるのです。


そのような管理の仕組みになったのはなぜですか?

この業界に来る人は、「ゲーマー」に似ていると思います。みんな好きで働いている。だから、私が「やめろ」と言っても働いてしまう傾向があります。仕事が好きな人にとっては、仕事が仕事ではないのですよね。

スタッフの仕事は非常にハード。それを「仕事」として取り 組むのではなく、「ゲーマー」として働けるように環境を整えることが大切です。ミステリーショッピングリサーチ(以下、MSR)を導入したきっかけも、サービスを数値化したいという狙いからでした。その他、スタッフが花を扱う技術のレベルも、10段階にわけて数値化し、この技術レベルの認定試験を、半年に1回、アルバイトも含めて全スタッフが受けられるようにしています。これは花の知識・技術レベルを数値化することで、スタッフに「お花のレベルがどんどん上がっていくのは楽しい」とゲーム感覚で学んで欲しいからです。


「ハードゲーマー」にスタッフを例え、スタッフの目標を数値化してランキングしてあげることにより、楽しく主体的に行動できるということですね。そうなると、本部の役割はどういう機能になるのですか?

本部はゲームを作る側です。仕組みとかルールとかモチベーションの上がる環境を作るのが仕事です。主体性に任せると言っても、ブランドに対するお客様の期待があるので、ある程度のフレームは必要です。何から何まで自由だというのはブランドとしていけない。大きなフレームだけ決めて、詳細は現場のスタッフが自由に考えて行動します。


徹底的な管理をするのではなく、フレームを用意して自由に活躍させるスタイルですね。しかし、業績が下がったときに放っておくというのは不安にはなりませんか?

業績は、短期的には下がっても良いと思っています。例えば、達成率が90%の店長と120%の店長がいるとします。90%の店長に話を聞くと、「これが悪かった、これを改善したい、悔しい」と省みます。ところが120%の店長に話を聞くと、「なぜか良かったんですよね」という反応しかない。すると、次の年にだいたい達成率が逆転するのです。これは花屋の特性なのですが、花というのはファッションみたいなもので、無くても困るものじゃない。だから、毎回新しいことに挑戦しないとお客様は支持してくれません。だから、失敗するくらい挑戦していく方が長い目で見ると成果が上がる。逆に受身でいると、成果は下がっていく。「どんどん失敗しろ」とスタッフに言っています。「今年、どれくらい失敗したか?」ということを毎年聞くのです。

「成長」という観点で見ると、失敗して波がある方が成長が早い。挑戦して失敗した分は、全体の誤差範囲で済んでいます。


MSRを導入されたきっかけを、もう少し詳しく教えて下さい。

以前から店舗でのサービスを良くしたいと考えていました。ある企業の成果発表会でMSRを知り、改めて「ああ、これだけサービスに注力することで成果が上がるのだな」と感じました。最終的には、MSRで弊社のサービスを数値化し、経営の重要事項として位置づけることを狙いに導入を決めました。


御社におけるCSの位置づけを教えて下さい。

例えばディズニーランドに行った時、ゲスト(お客様)は何か形に残るものを持って帰れるわけではなく、「体験」を持って帰る。花屋の場合、店舗を出る時にお客様は紙袋(花)を持っていますが、一週間も経つとと中身が消えてしまう(枯れる)。つまり一週間経ったらディズニーランドと一緒です。花を買うのは、花という「モノ」ではなくて、花と一緒に過ごす時間と空間を買うということです。だから花屋は、店頭で花を見て、買って、帰って、飾って、花との時間を楽しむという「体験」全てを、サービスとして売っていると考えなければなりません。例えば、お客様が1,000円の花をご購入されたら、その1,000円の価値は店舗にいらっしゃったときから始まっています。ですから購入して帰られた後、花が枯れて捨てるまでのメンテナンス方法まで責任を持つ必要があります。店舗で剪定用のハサミや花の寿命を長くする切花鮮度保持剤を販売しているのもそういった理由からです。


CSの向上に取り組んでいらっしゃいますが、業績との関係はいかがですか?

短期的に見ると、業績が高くて忙しい店舗のCSが低くなる傾向があります。しかしこれからは、CSが上がった店舗の業績が上がっていくはずだと考えています。売上の大きさは立地などでも左右されますが、重要なのは中身(サービス)です。良いサービスを提供できれば、花のある生活が定着していき、お客様がまた買いたいと思ってくれる。高いCSを上げられれば、業績は必ずついてくると思います。


今、目指していることを教えて下さい。

宇宙の月にまで、店舗を作りたいと思います。昔、海外旅行でさえ大変だったことを考えれば、あながち無謀な夢ではないと思います。

花屋を経営して気がついたことですが、花栽培農家の方々に話を聞くと、皆さん土の話ばかりするんです。土にこだわり、その結果、綺麗な花が咲き、寿命も長くなる。経営もこれとまったく同じだと思います。目に見える部分よりも、土台となる企業の考えや仕組みの方が重用だと考え、創業の想いや仕組みを大事にしています。そのため、競合他社で弊社の店舗デザインなど表面だけを真似るところがありますが、全然怖く感じません。


青山フラワーマーケットの今後は?

窓を開けたら自然がいっぱいあるような場所に、弊社の店舗は必要ないと思います。無機質な環境を「花や緑に囲まれた心ゆたかな環境」へいかに変えるかが今後のテーマです。都市部を中心に、海外へも進出したいと思っています。いずれは月にも(笑)。


「成功より成長」。成長を重視した価値観と一貫した企業理念。

株式会社パーク・コーポレーションの組織の特徴やアルバイト・スタッフさんの研修風景・取り組み姿勢などを、マネジメント研修の講師を担当している弊社コンサルタント 高野俊一に聞いた。

担当にあたって、取り組んだことは?

私はこれまで飲食を中心にコンサルティングをしてきましたので、花屋(生花小売業態)の知識が全くありませんでした。どれだけ花屋の成功要因を掴めるかが重要だと思い、実際に店舗に入って水揚げという作業や販売を体験しました。そのようにしてブランドマネージャーと成果を上げるシナリオを3ヶ月かけて作りました。


克服すべき成功要因は、どういう点だと考えましたか?

定着率向上、人材育成スピード、チームワークの3つが初期段階の重要課題でした。花屋というのは、季節に応じて通年商品が変わり続けます。水揚げの仕方や陳列方法、組み合わせ方も変えなくてはなりません。そのため、新人は一年間、商品(花)の扱い方を学習し続けなくてはならず、スタッフ育成は大変です。このため離職率が高くなると、全く店舗が回らなくなります。

また、花屋には「物日」と呼ばれるイベントがあって、たとえば「母の日」は花のニーズが高まります。そういうイベントに合わせて、店舗でアイデアを出し合い効率的・効果的に働ける環境ができているかで売上が相当変わってきます。これらの問題を解決しようと思うと、結局チームワークが重要ということに気がつきました。チームワークが低いと人が定着せず、企画も不十分になり、売上が確保できなくなるからです。

このように現状を調査して、具体的に成果の上がるシナリオを考えた上で、これらの問題を解決するためのマネジメント研修をスタートさせました。


研修では、最初にはどのようなことを行ったのですか?

最初は「権限委譲」がテーマでした。もともとサービス業では権限の所在がはっきりしていないことが多く、青山フラワーマーケットでは、まじめな店長ほど仕事を抱え込む傾向が強かった。そこで「スタッフに仕事を任せる」ことの考え方と具体的な手法を、ディスカッション形式でお伝えしました。店長が気を遣ってスタッフに任せられなかった仕事も、本当は任せることでスタッフがやりがいを感じモチベーションが上がるのだ、というようにスイッチを切り替えたわけです。このようにして、まずは変革できる環境を整えました。

その後、ミーティングの仕方、個人面談の仕方、人材育成計画の立て方、お客様満足度の高め方、というように毎月テーマを一つずつ研修で実施しました。各研修1回5時間、関東の店舗を対象に店長、アルバイト・スタッフの1~2名が参加されました。


研修後の反応はいかがでしたか?

パーク・コーポレーションは女性が8割の企業なので、きっとワイワイと話が盛り上がる研修になるだろうとイメージしていました。ところが、あまり盛り上がらないのですよね(笑)。どういう状態かというと、「ふーん、いいこと言うね」くらいの反応で、「わーっ」と盛り上がらないのです。他社の研修だと、ディスカッションをするうちに次第と盛り上がるのですが、そういう雰囲気が無くて心配しました。ところが、研修の翌月には、ほとんどのお店で学んだ事が実践されているのです。例えばミーティングの仕方を伝えると、自分たちで新しいフォーマットを作ってアレンジし、ミーティングを定着させている。それどころかミーティングシートに花の絵を入れたりなど、自分たちが楽しむ工夫までしてノウハウをどんどん作っています。非常に主体性が高いスタッフさんたちだと感じましたね。


組織の特徴は?

企業理念で「成功より成長」とあるように、成長を重視した価値観を一貫して示されているので、「やらされ感」があると駄目ですね。アクションを決めてやらせる、というアプローチは全く通用しません。反面責任感が強いので、問題を人に押しつけず抱え込んで悩んでいるスタッフさんが多い。だから、その悩みを解決するスタンスで研修を展開しました。「どうしたら、もっとメンバーがやる気になってくれるのだろう?」とか「労働時間をどうしたらいいのか?」「人不足をどうやって解決しようか?」などです。細かいようですが、研修では「絶対にやってくださいね」とか「やらなくては駄目です」というような表現は一切使っていません。「やってみると面白いですよ」「やってみたらどうですか」と提案形式で投げかけます。このアプローチが、青山フラワーマーケットの研修では非常に重要だと考えています。

研修で、代表店舗2店舗に取り組みを発表していただくのですが、毎回「ここまでやるのか」という店舗が出てきます。研修というと、10伝えても実行できるのは1つか2つ程度と良く言われるのですが、パーク・コーポレーションでは10伝えたら15くらいやります。ご支援を通じて、改めて「主体性」の重要性を感じるようになりました。多くの企業が、「いかに行動させるか」ということを考えて仕組みを作ろうとされるのですが、パーク・コーポレーションは、まず「やりたくなる環境」を提案して、やり方は任せれば十分です。素晴らしい風土だと思います。


研修の効果はどのように出ていますか?

1年間の取り組みで、離職率に改善が見られました。さらに、店舗内のコミュニケーションのあり方が一変しました。もともと「面談をやろう」「ミーティングをやろう」と会社でもずっと考えられていたようです。ただ、その具体的な開き方がわからないし、中々上手くいかない。実際やってみて苦労した体験がほとんどだった。そのため、弊社がご提案したノウハウを、すぐに活用することができた。70店舗が参加しますので、多少実行力にばらつきは出ますが、毎月の研修会で具体的に取り組んでいる店舗の発表を聞くと、すぐに自店舗の取り組みと比較して活性化させていくという風に広がって行きました。


今後はどのようにご支援して行きたいと考えていますか?

パーク・コーポレーションの進みたい方向に行けるようにサポートしながら、もっと研修での結果をCSや業績の数値に繋げてゆきたいですね。

この1年間、仕組みづくりに注力して土台ができてきました。今はこの土台に種を蒔いた段階です。もっと土台を固めて、結果的に花が咲くのを早くしたいと思います。人の確保やチームの強化を継続して高め、CS改善のノウハウを蓄積したり、物日の計画性を高めて、最終的に収益に繋げていきたいと思います。


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