「鉄板コミュニケーション」、鉄板を囲むお客様に、“安心・安全・美味しく・楽しい”を提供

株式会社道とん堀

東京都福生市加美平1-6-17

会社ウェブサイト:http://www.dohtonbori.co.jp/


『季刊MS&コンサルティング 2008年夏号』掲載
取材:児玉彩子、文:鬼熊春子
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

「家族で美味しく気楽に食べられるお好み焼き」をコンセプトに店舗を展開する「道とん堀」。 現在272店舗(2008年5月末日現在)となった株式会社道とん堀は、設立当初から「組織力」を意識した運営を行ってきたと言う。 代表取締役社長の稲場裕幸氏にお話を伺った。

平成2年から18年間で「道とん堀」は全国で272店舗にまでなりましたが、創業当初から多店舗展開を志していたのですか?

そうですね、最初からお好み焼き“チェーン”を作ろうと思っていました。一軒だけ店を立ち上げて、それで自分が食べていければそれでいいやという発想は、全くありませんでした。

何故かと言うと、道とん堀を立ち上げる前、三年間ほど健康器具の販売会社で営業の仕事をしていたのですが、そのときに「組織で仕事をすることのすごさ」というものを実感していたからです。

実は、営業の仕事をするさらに前は、ずっと飲食畑でした。母が経営しているお好み焼き屋の手伝いもしましたし、スナックの皿洗い、焼肉屋、喫茶店…と、家族を養うために、朝から晩までいろんな飲食店をかけもちで働いていました。でも、そうやって必死で働いても、貰えるのは毎月20万円ほど。ところが、営業の仕事に飛び込んでみたら、比べ物にならないほど楽にたくさんのお給料が貰えるわけです。もちろん、営業の仕事が自分に向いていたということもあるでしょうが、そういった仕事の“種類”の話ではなくて、仕事の“仕方”、つまり組織で仕事をすることによって、自分ひとりではできないような大きなことができるのだということを実感したわけです。

ところが三年後、その会社は倒産してしまいました。これからどうしようかと考えた時、とりあえず自分がこれまでやってきたことを振り返ってみました。まず、長年やってきた飲食の仕事。飲食業というのは人と人とが接する、お客様と近い距離でできる仕事です。こういう人間臭さは、私にとっては大変魅力的なものでした。それから、次にやった営業の仕事。そこには組織力という強みがありました。それなら、この二つの良いところを掛け合わせて、「組織力のある飲食業」をやれば良いのではないかと、単純に考えたのです。数ある飲食の中でお好み焼きを選んだのは、お好み焼き屋をやっていた私の母の勧めからです。

代表取締役社長 稲場裕幸氏


“組織力”と言っても、いきなり組織を作れるようなお金は当然ありません。しかし営業の仕事をしているときに流通の仕組みについて勉強する機会があり、フランチャイズについても知っていましたので、「フランチャイズの手法を使えば、日本一のお好み焼きチェーンが作れるぞ!」と思いついたのです。そう考えたらもう面白くなってしまって、次の日からさっそく友人、知人に電話をかけて人を集め、スタートを切ったというのが、当社の立ち上げの経緯です。

ですから、設立当初からまさに“組織”ということを強く意識した店、会社ということになります。それまでの自分の境遇、経験、そういったもののどれか一つが欠けても現在の道とん堀はなかったと思うと、感慨深いですね。


立ち上げてから暫くの間は、かなりご苦労されたと伺いましたが…。

最初は大変でした。いくらフランチャイズだと言ってみたところで、実績も何もないわけですから、加盟してくれる方は当然いません。絶対に儲かる自信はあったのですが、信頼がないので、土地は借りられないし、材料の仕入れをするにも掛売りをしてもらえない。そうこうしているうちに時間だけは経ち、集まったメンバーもどんどん辞めて、最後に残ったのは一人だけという状態になりました。

困り果てて、当時お付き合いしてもらっていた銀行の支店長へ相談に行ったら、「確かに良い企画だと思うけれど、実態がないだろう。金を貸すから、一軒やってみろ」と言って、お金を貸してくれたのです。当時、そろそろ末期ではありましたが、バブルの時代だったということもあったでしょうけれどね。また、決して好条件とは言えませんでしたが物件も見つかり、最初のモデル店を作ることになりました。そして、その店をオープンしたら…「もうこれ以上来なくていい!」と言いたくなるくらい、お客様がいらっしゃいました。

当時は、ファミリー向けの業態と言えば、ファミリーレストランくらいしか選択肢がなかったのです。そして、お好み焼きと言えば、ちょっと家族では入りづらいような個人経営店しかありませんでした。そういった中で、弊社の「家族で気楽に行けるお好み焼き屋」というそれまでに全くなかった業態が評判となり、店は大繁盛したのです。

そこからは、一年に一店舗ずつのペースで直営店を出すことができ、4店舗目を出すくらいの頃に、ようやく「加盟店になりたい」という方が見つかりました。このフランチャイズ一号店も大盛況で、今でも覚えていますが、400万円弱を計画していた初月の売上が、蓋を開けてみたら、なんと1,000万円オーバーの1,370万円という盛況ぶりでした。こうした実績もあり、そこから口コミで広がっていったというのが弊社の歴史です。


少し話は変わりますが、今にして思えば、このタイミングで「フランチャイズに加盟したい」という方が出てきたということも、私にとって非常に良かったのです。というのも、直営店を数店舗出して、しかもそれがそれなりに儲かっていましたので、ちょっと調子に乗っていたと言いますか、「このままでもいいかな」という気持ちもないわけではありませんでした。そういう矢先にフランチャイズに加盟したいと声をかけて頂いたことによって、「そうだ、自分は日本一のチェーンを目指していたんじゃないか」と、当初の志を思い出し、気を引き締めることができました。


改めて、「道とん堀」の強みは何だとお考えですか?

背伸びをしないで、ボリュームゾーンの真ん中を狙って打ち出し続けているところだと思います。店を出して、それが少し儲かるようになってくると、次は少し高いクオリティのゾーンを狙ってみたくなるのが人情だと思いますが、私たちはそれをせずに、常に一般の方々、つまり一番人が多くいるところを中心ターゲットとして捉え、「誰でも楽しく気楽に食べられるお好み焼き」を追求し続けてきました。

たとえば、店舗の居心地の良さを維持するために、クレンリネスに関してもかなり工夫しています。焼肉屋さんであれば無煙ロースターがありますが、お好み焼きの場合はそうはいかないので、できるだけミストが飛ばないように、植物油でも発煙点の高いものを使用しました。もちろん、家族で楽しんでいただく店ですから、健康にも配慮したものであるのは当然です。その他にも、最近ではスタンダードになりましたけれど、ベストの状態でお好み焼きが焼けるように、適温を維持する電気センサーをいち早く取り入れたり、安全面の配慮としてロースターの枠を2重、3重にしたりと、お客様の目線からは見えない部分でいろいろなことに取り組んでいます。

こうした取り組みを続けるのも、「このくらいでいいか」と諦めて手を抜いてしまったら、お好み焼きほど世の中から無造作に捨てられてしまう業態はないと思っているからです。米や麺は日本人の食生活には欠かせないものですが、お好み焼きは、近畿商圏以外では、正直なところ「あってもなくても良い」もの、「たまには食べてみようかな」という程度のものですよね。そういったものをお客様に支持していただくためには、こうした細かいところにまでこだわりを持って、絶え間なく改善に取り組み続けていく以外に方法はないと思うのです。


店舗の数が増えてくると、どうしても取り組みに店舗間で差が出てくるものですが…。

人と人との触れ合いがあることが飲食業の良さだと先ほどお話しましたが、人間というのは誰一人として同じではありませんから、その特徴が裏目に出ると、バラツキということになります。弊社でも残念ながら店舗間の差があるのは事実で、今はそうした差を少しでも無くすようにと様々な手を打っているところです。

特に力を入れているのは「オーナーズフォーラム」と「バディーズ(注:株式会社道とん堀では、アルバイトスタッフのことを「バディー」と呼んでいる)グランプリ」という、二つの成果事例発表会です。名前の通り、前者は店舗のオーナーさんが、後者は店舗のアルバイトスタッフが成功事例を発表し、情報共有を行うイベントです。特にバディーズグランプリは、回を重ねるごとに、バディーたちが情報共有をするというだけのものではなく、経営者も含めて参加者全員が共に成長できる場となってきています。ミステリーショッピングリサーチ(以下、MSR)は、このバディーズグランプリで「業績」「クレンリネス」に並ぶ評価基準の三本柱の一つと位置付けており、店を育てる原動力として欠かせないツールとなっています。

バディーズグランプリで勝ち残ってくる店舗に共通しているのは、バディーたちが自主的にミーティングを行っているということです。MSRを題材にして、先月頂いたお客様からのご指摘事項をどうやって直そうかと話し合ったり、売上予算が足りないのなら、自分たちに何ができるかを考えたりします。


店長から指示されたわけでもないのに、自分たちで話し合って、『道とん堀』のマスコットキャラクターであるタヌキの着ぐるみ姿でビラを配ってみたり、地図を使ってお客様のご自宅をプロットし、手薄な地域に販促をかけてみたり…自分の子どもと大して変わらないような年頃の子たちが、店のために一生懸命になって知恵を絞って、汗をかいて取り組んでいる。そんな発表を聞いていると、感動して涙が出ます。そういうことが自分の組織の中で実現できたということは、私にとって本当に嬉しいことだと思っています。


規模が拡大すると、組織を維持することが大変難しい問題だと思いますが、何がポイントだとお考えですか?

これが正解かどうかは私にも確信が持てませんが、私がよくやるのは、先に形を作るという方法です。一般的に、組織というのは自然発生的にできてきて、ある程度の規模になったとき、あるいは何らかの問題が起こったときに、「このままでは駄目だな」と考え始めるものだと思いますが、私の場合は最初にとにかく組織図を作ってしまって、そこに人を当てはめて実際に回してみて、うまく機能しない部分を補っていくというやり方をすることが多いです。たとえば、まだ10店舗しかないのにスーパーバイザーを作ってみました。こういう方法ですと、確かに無駄もでてきますが、やってみないとわからないという部分はどうしてもありますから。

そして、組織の形とは別に重要なのは、組織に共通した目標、理念を掲げることでしょう。偉そうに言っていますが、実は私も10年ほど前に、その重要さを、ある先輩経営者の方に指摘されて、考えたという経緯があります。でも確かに、一つの旗印がないことには、皆が自主性を持って動く組織にはなり得ません。実際に理念を浸透させるためにどうすれば良いのか、今はまだ試行錯誤しているところですが、社員もバディーも皆が同じ方向を目指して、だからこそ積極的に動ける、そういう組織を作っていくことが私の理想です。


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