オリジナルの接客スタイルを活かし、 顧客満足を超えて「感動を与えるサービス」を提供する

日本サブウェイ株式会社

東京都港区赤坂3丁目8番8号 赤坂フローラルプラザビル4F

会社ウェブサイト:http://www.subway.co.jp/


『フードビジネス通信 2007年11月号』掲載
取材:有賀誠
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

世界で2万8000店、外食チェーンで世界第2位の規模を誇る『サブウェイ』。同ブランドを日本で展開する日本サブウェイ株式会社では、2007年6月よりミステリーショッピングリサーチ(以下 MSR)と、リサーチ結果を活用したHERB研修(※)を導入している。
※HERB研修とは、以下の4つの頭文字を取った半年間の改善プログラム。Hospitality:おもてなしの心、して差し上げたいと思う気持ちの醸成、EIS:従業員感動満足、スタッフのマインド向上、Realization:気づきの教育、お客様の気持ちを考える、Benchmarking:成功事例の共有、成功事例から改善ポイントを整理。

MSRとHERB研修を導入いただいたきっかけを教えてください。

MSRを導入した最大の理由は、サブウェイ独特の提供方法にあります。一般的なファストフード業態、あるいは飲食全般でも、作る人と売る人は別という分業体制のお店が多いと思いますが、サブウェイは「接客しながら作る」というスタイルを取っています。私は、これがサブウェイの最大のポイントであると思っております。しかし、このスタイルだからこそ少人数での運営が可能である一方で、やはりアルバイトさんの育成には時間がかかります。ですので、この部分を強化していくための方策として、覆面調査については以前から導入の必要性を感じておりましたし、また実際に単発では取り組んだりもしてきました。ただ、なかなか効果が上がらなかったというのが実情です。

そこで、いくつかの会社に問い合わせをして、検討したのですが、中でも御社の「顧客満足を超える、感動を与えるサービス」というコンセプトが私の考え方に近いと感じたこと、また調査をするだけではなく、その調査結果を活用するための研修ができるということから、御社のMSRを選ばせていただきました。

代表取締役 伊藤 彰氏


ファストフードは、他と比較してサービスの比重が小さい業態ですが、サブウェイにおけるサービス向上の重要性についてはどのようにお考えですか?

たしかにサブウェイは、ゆっくりとお客様にサービスができるようなテーブルサービス業態とは違いますが、私自身もそうですし、またオーナーさんにしても、サブウェイをファストフードとは捉えていない方が多いのではないかと思います。

お客様への気遣いという部分に関して、具体的には「ちょっと一声をかける」ということでも良いと思うのですが、いわゆるファストフードとは一線を画したサービスを提供していかなければならないと思っています。そうした力を習得するためには、MSRとHERB研修は大変良いプログラムだと考えています。


MSRを実施してみて、オーナーさん、店長さんなど、現場の方の反応はいかがですか?

HERB研修に出席された方は皆さん満足されていて、「今後もどんどんやって欲しい」と言っていますね。御社のMSRは、いわゆる覆面調査と言いますか、“粗探し”ではありませんので、そこが理解されていくと今後さらに広く浸透していくと思います。まだ2回の実施で、これまでの覆面調査との違いを十分に理解されていない方もいらっしゃるので、そこをいかにマーケットカウンセラーを使って浸透させていくかが、今後の課題ですね。


全世界で展開されているサブウェイでは、アメリカの本部にもたくさんノウハウがあると思うのですが、日本独自の取組を行われたのはなぜですか?

たとえばアメリカ人ですと、オーダーの際に「これを入れて、これは抜いて」とあれこれ注文するのは当たり前のことですが、日本人は同じ場面で、「言いづらい」「恥ずかしい」とお感じになる方もいらっしゃると思うんです。どちらが良いという話ではなくて、日本には日本独自の文化や考え方、感じ方がありますので、それに応じた日本流のサービスというものが必要となってくるのではないでしょうか。


今後のサブウェイさんの展開を教えてください。

サブウェイのブランドを確立するためには、店舗の数が必要だと考えておりますので、“2010年に400店舗”という目標を掲げて展開しているところです。ただ、店舗数が増えればそれで良いということではなく、サブウェイのことを本当に好きで、思い入れを持ってやっていただける方に、店舗を経営していただくという形で進めていきたいですね。

店舗数を増やすためには、出店できる場所の選択肢を増やしていかなければならないということで、8~18坪程度の小型店モデルを開発しました。立地に関しても、従来からの立地に加えて、アメリカで「ノントラディッショナル立地」と呼ばれるような、大学や病院、コンビニエンスストア、サービスエリア、あるいは企業の社員食堂というようなところを開拓していきたいと考えています。

また、外に向けてのブランディングを行う一方で、インナーブランディングもしっかりと確立させていかなければならないと思って取り組んでいます。そのために「I LOVE SUBWAY プロジェクト」というプロジェクトを立ち上げています。 このプロジェクトでは、本社のスタッフ、FCのオーナーさん、そして外部の方にも入っていただいて討議を行い、サブウェイが大切にするもの、共通の言葉…そういうものをまとめていっています。最終的には、商品開発に関しても、サービスに関しても、「こういう状態を作り上げるために、今これに取り組んでいるんだ」というふうに、全部がそこに関連付けられるような状態にしていきたいですね。

この取組の中で、MSRは非常に大きな位置を占めていますので、今後もしっかり取り組んでいきたいと思っています。


ここからは武蔵境イトーヨーカドー店オーナーの中西理恵さん(下の写真右)と、アテンダント(※)の結城哲也さんにお話を伺いました。

※サブウェイでは、アルバイトの方を“アテンダント”と呼んでいます。アテンダントの仕事は、サンドイッチメイキング、野菜の洗浄・カット、パンやデザートの焼成等さまざまです。特に、「サンドイッチメイキング」は、お客様のお好みをしっかりお聞きしながらご希望のサンドイッチをお作りしていく重要な仕事。お客様とコミュニケーションをとりながら、しっかりアテンド(接客する)することが基本です。


中西さんはサブウェイを始められて12年目とのことですが、最初のきっかけを教えていただけますか?

中西:サブウェイに興味を持ったきっかけは、女性でも取り組みやすい業態だったということです。たとえば油を使うお仕事は、油の交換が重たくて大変だったり、危険を伴ったりしますので、なるべくなら火を使わないところが良いなと考えていたのですが、サブウェイならその条件に合うということで興味を持ちました。

しかし、正直なところ、ファーストフードにはあまり興味がなかったんです。サブウェイには一応のつもりで食べに行ったのですが、そこで、サンドイッチの味に大感激してしまったんです。オイルとビネガーを使った、日本にはない味のサンドイッチで、「これはおいしい!」と。この味なら、将来性もあると感じました。

また、それと同時にサブウェイの対面接客もとても魅力的で、これはおもしろいと思いました。

まとめますと、サンドイッチの味、そして一般のファーストフードとは違うサービス、この二つがサブウェイを選んだ理由です。また実際に10年以上やってみて、この二つは他社の追随を許さない、サブウェイの絶対的な強みだと実感しています。

武蔵境イトーヨーカドー店オーナーの中西理恵さんと、アテンダントの結城哲也さん


「アルバイトがなかなか集まらない」「すぐに辞めてしまう」という悩みをお持ちの飲食店も多いですが、こちらのお店ではいかがですか?

中西:ありがたいことに、人が集まらないとか、辞めてしまうという苦労はまったくないですね。その分、長く働いてくれる方が多いので、皆を伸ばし続ける、成長を止めないということは、常に心がけています。その具体的な方策としては、店舗ミーティングを行ったり、本社で行うアテンダント向けのコンテストを活用したりしています。


HERB研修では店舗ミーティングの重要性をお伝えしていますが、武蔵境イトーヨーカドー店ではそれ以前から店舗ミーティングを行っていらっしゃるとお聞きしました。

中西:私がサブウェイを始めるときに、「サブウェイの中で一番良いサービスができるお店にしよう」ということを、自分の目標として決めたんです。そのためには、アテンダントの力が絶対に必要となるわけですが、日常業務の中でそういう自分の気持ちを伝えていくことは本当に難しくて、これはちょっと場所を変えて向かい合って話さなければ無理だと思い、店舗ミーティングを始めました。

ミーティングをやってわかったことは、皆には皆の言い分があるということです。ミーティングの場で皆の話を聞くうちに、それを私がまったく理解していなかったことに気づいて、かなりショックを受けました。「店がうまく回らないのは、他の誰かのせいではなく、私のせいなんだ」と、やっとそこでわかったんです。

ミーティングも回を重ねていくうちに、みんなも徐々に発言するようになり、活発に議論が行われるようになってきました。もちろん店長としての意見も混ぜてもらっています。


HERB研修で、新たに学んでいただいた点などはありましたか?

中西:もちろん、たくさんあります。まず何より、「いつもやっているけど、ミーティングってそんなに大事なものだったのか」ということに気づかされました。

また、そこで教えていただいたミーティングの手法についても、勉強になることがありました。たとえば、議長のトレーニングについて教えていただきましたが、そもそも議長を変えるという発想自体がなかったですし。「店長の話す割合を10%以内に抑えてアテンダントの積極性を引き出す」というのも、大事なことだと思いました。会議の成功の鍵は、下準備がどれだけできたかにかかっていると思います。

それから、私の大のお気に入りなのが、「ツーストライク・ワンボール」という考え方です。この手法を使うと、目に見えて和やかな会議になりますね。“良いことを口に出して褒める”というのは日本人が苦手とするところかもしれませんが、実際にやってみると、褒めた人も、褒められた人も幸せな気分になれますし、この考え方でコミュニケーションしていると、大げさかもしれませんが、心が美しくなる気がします。


店舗ミーティングと合わせて、アテンダントさんの教育に活用されているコンテストというのは、どのようなものですか?

中西:サブウェイではさまざまなコンテストがあるのですが、たとえば春のコンテストであればサンドイッチを作る技術、秋のコンテストであればサービスというように、目標がはっきり設定されていますので、自分の力を試すのにちょうど良いんです。

「コンテストで何位以内に入る」といった目標をそれぞれ決めて、私は店長としてその目標が達成できるようにバックアップするという方法で取り組んでいます。それも、コンテスト前の一ヶ月間だけというような短期的なものではなくて、一年を通してその目標に近づいていけるような内容を心がけています。

先ほどの店舗ミーティングについてもそうですが、義務的なものは長続きしませんので、主催する側も参加する側も、楽しめる要素を盛り込んでいくことが必要だと思います。身近な目標設定を決めることで、達成感を味わってもらいたいと思っています。


結城さんはアテンダントになって7年目とのことですが、それだけの間続けられる理由は何ですか?

結城:サブウェイの仕事は、収入だけではなく、エネルギーをもらえる仕事だからです。実は僕にはシナリオライターになりたいという夢がありまして、現在はシナリオの勉強をしているところです。また同時に、大学で心理学の勉強もしています。ですから、その上でさらにサブウェイで仕事をするというのは、体力的には疲れるんですが、サブウェイでお客様に接することで、向上心がもらえますし、また感性が磨かれるんですね。一人ひとり違うお客様に対して、短い時間の中で、このお客様はどういう方なのか、どうすれば喜んでいただけるかと考えることは、感性を鍛える上でも、シナリオを書く上でも非常に役立つことと思っています。

また、心理学では臨床心理に進みたいと思っているのですが、将来カウンセリングをする立場になったときにも、サブウェイの経験は役立つと思うんですよ。どんな人と接するのにも、一番大事なのは“最初の一分間”で、そこをミスしてしまうと、挽回するのはかなり難しくなります。最初の一分間でどれだけ相手と心を通わせることができるか、そのトレーニングとしても、サブウェイの仕事はとても有効だと思っており、自分で勝手に「一分間の挑戦」と名づけて、チャレンジしています。

こんなふうに、次々と自分で課題を見つけてやってきたことが、長く続いている秘訣だと思います。それと、それを理解してくれるオーナーがいてくれるということも大きいです。それができるということが、自分にとってのサブウェイの一番の価値ですね。


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