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本部に人材開発部を新設、業態を横断する店長育成の仕組み

株式会社みたのクリエイト(居酒屋業態)

株式会社みたのクリエイト

沖縄県中頭郡中城村南上原816

会社ウェブサイト:http://ameblo.jp/mitano-aki/

『季刊MS&コンサルティング 2012年秋号』掲載
取材:角田聡、文:高島知子貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承下さい。
2011年に開催された第5回外食クオリティサービス大賞にて、特別賞を受賞した株式会社みたのクリエイト。〝原価100%超え〟の料理などで話題の同社は、ミステリーショッピングリサーチを活用しCSに関する成果を上げる一方、MS&Consultingとともに社内の人材開発にも積極的に取り組んでいる。取締役の末吉弘晃氏に、新設した人材開発部の意図やその効果について伺った。
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株式会社みたのクリエイト 取締役 末吉弘晃氏。人材開発部ができる以前は末吉氏が単独で全スタッフの育成に携わっていた。

若いアルバイトスタッフが多い飲食業において、人材の育成は大きな課題だ。事業が拡大するほど本部と現場の乖離が発生し、本部が現場のフォローに悩むことも少なくない。

そんな中、沖縄県内で「産地直送仲買人 目利きの銀次」をはじめ複数業態12店舗を経営しているみたのクリエイトは、独自の人材育成によって成果を上げている。その方法とは、現場を経験したベテランスタッフによる人材開発部の設置だ。

発足のきっかけは、創業当初から勤務し店長経験者も多い“キャリア組”のモチベーションの低下だったという。

「『幹部たちと一緒に会社を作ってきた』という思い入れが強いあまり、事業の拡大と共に経営陣と彼らとの間に距離ができると、キャリアが仇となって店舗運営が空回りしていたのです。むしろ経験の浅い店長の方がチームをうまく率いるケースが出始め、そういう店長には自然とフォローをしてくれる“ナンバー2”がついている場合が多いことにも気付きました」と、末吉氏は今年の年明け頃の状況を振り返る。

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これまでの体制をより強化するため、9月から新しい組織体制を敷いている。営業本部の中に、キッチンやホールや企画などのセクションを設け、それぞれの強みを各店舗へとフィードバックさせていく。

「思いやりとサプライズ」を経営理念に掲げる同社において、店長に期待していることは主に「お客様との関係構築」と「従業員との関係構築」の二つ。だが、前述のような“ナンバー2”がいたり、店全体で店長をサポートしたりしているケースは少なく、ほとんどの店長が数値管理や人材育成、店舗戦略作成、会議への参加などのマネジメント業務に追われていた。本部が店長に期待していることへの時間をなかなか確保できずにいたのだ。

「そんな様子を見て、まずキャリア組はいっそ店長から外して経営陣の近くに戻し、同時に店長をサポートする仕組みを構築しようと考えました。一緒に会社を作ってきたメンバーですから、店舗でのキャリア継続が難しいなら別の場所に生きる道を作りたいという気持ちがありました」。そうした経緯から、今年の春に人材育成、営業企画、数値管理、営業OPからなる人材開発部が発足し、現場責任者の経験があるキャリア組5人を配属した。

短期間で新人を戦力化する、独自の育成プログラム

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現場を意識して、実際の環境を使ってオフジョブのトレーニングを行う。人材開発部はあくまで店長のサポート役の位置づけであるため、現場に入る際も「あくまで補佐的な役回りとして、店長の立場を超えた目線にならないように指導している」と末吉氏。

彼らの主なミッションは、店長の育成と、新人アルバイトの育成だ。店長経験があり、個人のスキルが高い人材開発部のメンバーの役割としては最適だった。

まず店長の育成に関しては、前述した顧客およびスタッフとの関係構築に集中できるよう、振り回されがちな数値管理を中心にサポート。「新任店長らしい一生懸命さをもってお客様やスタッフに向き合い、店長として軸になる部分を磨いてもらいたい。そこで、半年から1年ほどは数字を一切考えさせないくらいのフォローアップを計画しました」。

数字に並んで店長の頭を悩ませることが多いのが、新人アルバイトの育成である。以前は各店舗の店長が実施していたが、店舗によって育成の仕方や教える内容が異なり、一人前になる期間も3カ月から半年以上とまちまちだった。このようなばらつきは採用計画にも影響する上、うまく運ばない場合は離職を招き、スタッフ募集の広告費というコストを生んでいた。

また、業態・店舗間で評価基準が統一されていなかったため、ある店舗で80点の評価を得ているスタッフと、他店で80点を得ているスタッフは本当に同等の能力があるのかという判断ができず、経験を積ませるためのストアローテーションが組めないという課題もあった。

そこで人材開発部で企画したのが、新人育成プログラムだ。しかも、プログラムを作るだけではない。新人アルバイトの採用自体は各店長が行うが、採用してから一人前になるまでの間は人材開発部が預かって直接指導にあたるという内容だ。

それまで曖昧だった、アルバイトにシフトが任せられる基準を部内で明確化し、業態に関わらず全店で使用できる評価表を作成して標準化。評価表を現場に配布する際には、評価対象となる行動が理念とどう関わっているかを重視した説明を加えて店長会で共有した。

実務に即した徹底的な研修で、2週間でのシフトインが実現

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新たに導入した新人用カルテ。育成中に習得したスキルや性格などを記入し、その情報を店長に引き継ぐ。これにより現場での指導がしやすくなり、離職率の低下につながっている。配属後は店長が記入を続け、スタッフ管理と育成制度の効果検証としての役割も果たしている。

評価表は約20のカテゴリに分かれており、細かく具体的に基準を明示。最大120ptのポイント制とし、1ptにつき5円の時給と連動している。例えば、最初に企業理念などを伝えた後は平日のオペレーションを学ぶ座学6時間、週末のオペレーションを学ぶ座学8時間、現場研修(OJT)20時間を設け、基本すべて人材開発部メンバーが教育を担当。早いスタッフなら約2週間で一人前として活躍できるという。

「例えばカクテル担当のプログラムなら、オフジョブではリキュールの名前を覚えるペーパーテストと共に、絵の具で色付けした水を使って4時間ずつ4日間でカクテルを一万杯作るという反復トレーニングを行います。そして人材開発のメンバーと共にOJTに入り、本物のカクテルを作るという流れです。大事なのは、量を反復させること。そういう環境を最初に経験させてから現場に入る方が、新人の戸惑いがなく、現場も教えやすいのです」と末吉氏。

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ミーティング風景:人材開発部は創業当時からのキャリア組を中心に構成され、7月後半にはキッチン担当が加入し、それぞれが得意分野を分担して担当している。ベテラン社員だけでなく、やる気のある若いスタッフも配置している。部内の担当分けはエリアや店舗ごとではなく、それぞれの得意分野を活かして店舗横断的に関与している。

このプログラムを導入することで、以前は3ヶ月以上かかっていたシフトインまでの期間が、2週間で戦力となるスタッフも出始めるなど大幅な短縮に成功した。シフトイン後も、育成が不十分だった場合は人材開発部に再度預けることができるため、店側の負担は少ない。

また、アルバイトから社員採用を経ずに店長を任せられる、リーダーの資質を備えたスタッフの発掘も可能になった。スキル習得の高速化とスタッフ個人を細かく見られるようになったことで、新たなキャリアパスが生まれたのだ。

もう一つ、このプログラムを通して大きな副次効果があった。それは、店長経験者である人材開発部の面々が店舗横断的に現場に入るため、現場の意見をより多面的かつ客観的に捉えられるようになったことだ。これまで店舗の実態把握は店長の報告に頼らざるをえなかったが、情報の精度がぐっと高まったという。モチベーションの低下を課題に人材開発部に移籍したメンバーは、今では新たな活躍の場で生き生きと仕事に取り組んでいる。

企業のさらなる成長を見越して、人材育成は次のステップへ

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標準化した評価表には、現時点で在籍している店舗では不要なスキルの記入欄も含まれる。炭火の有無、カクテルの有無、二階の有無など

直接は生産性のない人材開発部の人件費は、育成を受けている各店舗に割り振っている。以前は3カ月かかった育成が2週間で仕上がることを考えれば、「先行投資になる面はありますが採算性は十分」と末吉氏。離職率が低下することで、慢性的に一定の金額がかかっている募集広告費の削減も見込んでいる。

育成プログラムでは当初ホール業務のみを扱っていたが、7月にキッチン経験者を加え、育成する領域を広げた。次のステップは、人材開発部に代わって在籍期間が長い上級アルバイトが新人アルバイトを育成できる仕組みを確立することだ。

「これが構築できれば、より短期間で質の高い人材育成が可能になり、経営戦略として今後予定している多店舗展開をスムーズに進められます。すでに、上級アルバイトの評価基準を担当する新人の目標達成に切り替えました。このプロセスを通して、上級アルバイトの働き甲斐も探るつもりです」。

その先には、独立支援制度にも着手する予定だと末吉氏は展望を語る。独立しても運営に行き詰るケースは珍しくない。沖縄県内の展開でもスタッフには県外や離島出身者も多いため、安心して独立できる仕組みの構築を検討している。外食産業の発展まで見据え、長期的な視点で人を育てていく意向だ。

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