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注目のキーワード「知覚価値の食」

デフレ不況下で勝ち残る企業の条件

『季刊MS&コンサルティング 2011年春号』掲載
取材・文:西山 博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
サービス業界は全体的に曇り空の市況ですが、その中にあっても、類い稀な魅力によってお客様の支持を得ている企業が存在します。まさにその好事例といえる第五回外食クオリティサービス大賞の受賞企業様をご紹介するとともに、「デフレ不況下で勝ち残る企業の条件」について審査員の先生方にうかがいました。また5ページ目以降では、不況下でも堅調な業績を実現している企業のビジョンや組織づくりの取り組みをまとめました。

食のエデュテーメント

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外食クオリティサービス大賞審査委員長 清水 均 株式会社プロジェクト・ドゥ ホスピタリティマネージメント研究所 代表取締役 亜細亜大学経営学部非常勤講師。ホスピタリティビジネス及びサービス業のコンサルティング指導実績は500社を超える。著書『フードサービス攻めの計数』(商業界)を始めとした多くの著書が外食企業の教育教材として知られている。

今、飲食業界には潮目が来ていると思います。価格競争が激しくなっていますが、価格競争に陥ると資本力や流通力があるところが勝ります。デフレ不況といえども、その価格競争に巻き込まれてはいけません。そうならないためのポイントは3つあると考えています。

「知覚価値の食」というのが、最近私が注目しているキーワードです。これからは、値段の高低ではなく、知覚価値が大事になってきます。食材だけでなく、体験を含めトータルで価値を提供するということです。商品やサービスにこだわりをもち高いコストをかけていたとしても、それをどう伝えるかによって知覚価値は変わってきます。お客様に伝えること(エデュケーション)によって、価値や楽しみを体験し味わってもらう(エンターテインメント)、すなわち「エデュテーメント」という考え方をまずご紹介したいと思います。

例えば、私の知っている店で“そば”を出す店があります。そこでは、石臼でそば粉を挽いています。時間・手間がかかるのになぜ石臼で挽いているかというと、そば粉は温度に弱いため、熱が加わらないようにするためです。その結果、風味の高いそばが仕上がります。また、“わさび”にも工夫があります。すった後のわさびは約1分で風味が落ちてしまいます。だから必ず、そばが来た後にわさびをすってもらうようお客様に伝えているのです。そばが運ばれてくるまで待ってもらい、食べる直前に少しずつわさびをすってもらい、風味抜群のわさびでそばを食べてもらいます。さらに、そこで提供している“てんぷら”のつゆは、風味の良い“だし”が入った白しょうゆという醤油で、全国からこだわって探してきたものです。

しかし、そのような背景はよほどのそば好きでないと感じ取る事はできません。お客様が何も知らずにそばを食べ、そばが運ばれてくる前に手持ち無沙汰で先にわさびをすり終え、天つゆも付けずに味が薄いと感じながらてんぷらを食べる。そのようなことが日常的に起こっている可能性は大いにあります。トップや仕入れ担当者がこのようなこだわりをせっかく持っていても、お客様に伝わっていない可能性があるのです。

たくさんの商品についてお客様に知覚価値を感じてもらうには、商品知識が前提になります。メニューは全従業員に試食してもらうことが必要でしょう。一つのやり方としては、全従業員に対して調理長がその食材を選んだ理由やこだわり、盛り付けの工夫などを説明し、新人からベテランまで皆に食べてもらい、それを基に商品の説明してもらう。その後、その商品についてどのような説明をするのが良いか、外してはいけない説明内容を決めておく。といったやり方があります。

この「エデュテーメント」の考え方をうまく実践すれば、知覚価値が商品となります。例えばある店では、普通の“しめサバ”を約650円で売っていますが、“あぶりしめサバ”とし950円で提供している店もあります。違いは、“あぶる”かどうかだけです。お客様にハーフカットのレモンを持ってもらい、「私がハイ!と言ったらかけてくださいね」と伝え、バーナーであぶっている最中に「今です!」と伝えてお客様がレモンを絞ると、ジュワッと芳しい香りが漂ってくる。それだけで300円分の付加価値が生まれます。せっかく調理をするのですから、お客様にどう体感してもらうかという視点を入れることで、飲食の可能性はさらに広がるでしょう。

客数が店長力のバロメーター

また、今、少子高齢化の中で、一人当たりの来店回数が減ってきています。それは、全体の客数だけを見ていては気づくことができません。客数は、「客数=固定客数×来店頻度+初回客数」というように分解できます。オーバーストアを背景に1店舗当たりの絶対客数が減少していく小商圏化の中で、リピーターをどのように増加させたかが、全体の客数として表れてくるのです。この「固定客」の数を増やす努力をしていかないと、一人当たりの来店回数が落ち込むごとに、客数は落ちていってしまいます。客単価は、本部またはオーナーのメニュー政策により決定されますが、客数は店長の力量で決まります。つまり、客数は店長の実力のバロメーターともなるのです。

粗利の取り方

最後に、粗利の取り方の見直しという視点があります。第五回外食クオリティサービス大賞で特別賞を受賞された「株式会社みたのクリエイト」様の発表では、原価が価格を大きく上回る商品の提供によりお客様の高い満足を獲得しているという事例が紹介されていました。つまり、通常の飲食原価以上にかかった原価をコストではなく販促費として捉えているのです。その発想は、普通に財務諸表を考えているだけでは生まれません。どのように粗利を取るかが大事になってきます。

この考え方を実践できるかどうかは、企業規模の大小には関係ありません。店の裁量でやるのであれば、それらを計算できる人が担当し、大手であれば、本部のマーチャンダイジング力が利用できます。特に、素材提供型の海鮮居酒屋や寿司、焼肉などの業態では重要な考え方になるでしょう。各メニューの原価率ばかりに注意を向けていると、かえって売上の絶対額をなくしてしまう危険性があるということを意識する必要があると思います。

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創業以来、驚異的な顧客満足度によって広告なしで売上を上げ続け、従業員の会社に対するロイヤルティの高さから離職も少ないOHANA。居酒屋甲子園でも優勝し、絶好調に見えたが、その裏ではトヨタショックの影響で過去最悪の業績に。CSもESも高いのに、なぜ業績が上がらないのか。この問いに正面からぶつかり、1年間で業績を回復させた外食企業の経営力の底力をご発表いただきました。

 


 

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全社員が、「サクセスプランシート」に月初計画を記録し、具体的な行動に落とし込む。月2回の面談と日時の振り返りによって進捗を管理。

 

 


 

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第4回居酒屋甲子園での表彰式の様子。全国1,103店舗から6店舗が勝ち残った決勝大会で約5000人の来場者の心を打ち、優勝に輝いた。
株式会社OHANAの発表内容はこちら(外食クオリティサービス・フォーラム公式ホームページ)

 

 


 

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