「顧客シェア」をめぐる競争に勝つ

季刊MS&コンサルティング 2011年春号』掲載
取材・文:西山 博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

サービス業界は全体的に曇り空の市況ですが、その中にあっても、類い稀な魅力によってお客様の支持を得ている企業が存在します。まさにその好事例といえる第五回外食クオリティサービス大賞の受賞企業様をご紹介するとともに、「デフレ不況下で勝ち残る企業の条件」について審査員の先生方にうかがいました。また5ページ目以降では、不況下でも堅調な業績を実現している企業のビジョンや組織づくりの取り組みをまとめました。

ハンバーガーやうどんといった特定分野での「市場シェア」に対して、「顧客(内)シェア」というマーケティング指標がある。これは、一人の顧客が支出する金額のうち自社が何割を獲得したかを表す指標であり、「財布のシェア」とも言われる。外食の文脈では「胃袋のシェア」ということになる。市場が伸び悩む中では、限られた市場をめぐって、多数の競争相手が市場シェア争いに凌ぎを削り、やがては価格や販促費に頼り切った消耗戦に陥りかねない。そこで1990年代頃からマーケティングで重視されてきたのが、新規客をリピーター化し、さらに一品でも多く、少しでも高単価な注文を獲得すること、つまり、胃袋のシェアを増やすことだ。

外食だからと言って「胃袋」に固執することはない。「飲食時間」や「一家団らんの機会」の何割を自店に振り向けてもらえるか、「思い出に残る感動体験」の何割を自店で体験してもらうか、というモノサシで捉えられるかもしれない。

しかしながら、顧客シェアをめぐる競争は、同業者だけでなく、異業種・異業態の垣根を越えた競争に発展しやすい。好みも移ろいやすく、時と場合によってさまざまなお店やブランドを使い分ける賢い消費者は、やすやすと囲い込まれたりはしない。だからこそ、顧客シェアをめぐる競争においても、自分たちが誰のどのようなニーズにフォーカスをあてたブランドなのか、というマーケティングの基本に立ち帰り、エッジを立てる覚悟とそれをやり抜く意志がより一層求められるのではなかろうか。


創業以来、社長のリーダーシップによって一貫して真心をこめた理念経営を行ってきた森口ですが、2010年2月に新店をオープン。社長が築いてきた「とろろやらしさ」を経営幹部が引き継ぎ、新店でも変わらない理念経営によって、会社の売上総利益昨年対比194%を記録しました。ほぼ2倍の利益を生み出す要因となった「経営幹部への権限委譲」と、「変わらないこと」の重要性が提示されました(写真は大会での発表の様子)。


マニュアルには、理念をベースに、「何をやるか」だけではなく「どういう想いでやるか」まで書かれており、考え方や想いが浸透するようになっている。


人気店「とろろや」の三方原店。中の壁には経営理念が掲示されており、いつでも「食」の基本に立ち戻らせてくれる。



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