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力がみなぎる組織の物語

株式会社力の源カンパニー

株式会社力の源カンパニー

福岡市中央区薬院1-10-1

会社ウェブサイト:http://www.chikaranomoto.com/

『季刊MS&コンサルティング 2010年秋号』掲載
写真:株式会社力の源カンパニー/取材・文:西山 博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
外食不況の中、2001年からの9年間で年商を約2.3倍の79億円に伸ばした株式会社力の源カンパニー(以下、力の源カンパニー)。今や国民的なラーメンブランドとなった「博多一風堂」ののれん分け制度、海外への積極的な店舗展開、りそな銀行との連携によるキッズ向けイベントなど、世の中の注目を集める。その事業展開のスピードを支える従業員の働きがいと企業経営の在り方について、代表取締役の河原成美氏に聞いた。

ストーリーを描くことが社長の仕事

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株式会社力の源カンパニー 代表取締役の河原成美氏

「夢を考えてストーリーを描いて楽しく生きることが社長の仕事なんだ」

そう河原氏は話す。力の源カンパニー物語、河原成美物語、一風堂物語。ストーリーの次の展開を常に考えているという。10年先のビジョンとそれに至るストーリーは、講演でも人を惹きつけてやまない。「社員が輝くようにするには、まずは僕が輝いていないといけない」と語る河原氏は、物事に対してあるこだわりを持っている。

「3」という数字がストーリーを生む

v79-05ストーリー性を重視する河原氏が意識しているのは、『3』という数字だ。

「今からずっと前、東洋学を勉強している人から、『3』は物事のはじまりだということを教えてもらった。それによれば、物事には天と地の2つの線がある。それらは、例え交わっても点にしかならない。しかし、そこに人が立つことによって、物語が生まれる。男と女も、子供がいて初めて次の世代に続く物語が始まる。朝と夜の間にも昼があり、そこに物語が生まれる。『3』は物語の基本なんだ」と河原氏は話す。

「3割の人が組織の核にいれば、組織は絶対に崩れない。100店舗の店を出すならば、その内の30店舗はどの店よりも強い店を作りたい。それらの店が発する力、輝きは、残りの70店舗にも非常に大きな影響を与えるはず。そうすれば、強い組織ができる」

v79-06アルバイトについても同じことが言える。力の源カンパニーでは、社長とアルバイトが直接語り合う「アルバイト懇親会」を毎月1回行っており、2010年7月で11回目を数えた。1回の懇親会で20~25名が参加し、これまでに約250名のアルバイトと懇親会を行った。河原氏の基準では、一度始めたら3年が最低基準。3年継続すれば、36回の開催で700名以上と面談することになり、その頃には、全店のアルバイト数が約1800名、面談した人数が全アルバイトの3割を超える計算だ。そうなれば、アルバイト全体の意識が向上し、会社への求心力が違ってくるという。

 

のれん分けのストーリー

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「一風堂」ののれん分けは外食業界の話題をさらった。その構想は、2000年からあったという。店舗数の増加に応じてタイミングを伺い、2005年、株式会社MS&Consulting(当時、株式会社日本エル・シー・エー F事業本部)の協力を得て、のれん分け制度の検討を開始。2010年には、8人ののれん分け店主が誕生した。のれん分け制度の今後の構想について、河原氏はこう話す。

「今は店舗展開を早めており、もうすぐ100店舗体制になるだろう。2013年には、のれん分け店舗を30店舗つくりたい。そこからがのれん分けの本当のスタートだと思っている」。今後は、一風堂以外の業態ののれん分け店舗も生まれていく計画だという。しかし、のれん分け店舗数が全体の3割というのはゴールではない。

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2010年6月15日(火)、ホテルニューオータニ博多にて行われた「のれん分け店主宣言」の様子。河原社長から激励の言葉がかけられた。

「一人ひとりが成長していき、その中でもっと自分ものれんも磨きたいという社員が現れれば、4割、5割になっても構わない。熱意や輝きを持つ社員がたくさんいる会社だからこそ力の源カンパニーと呼べる。そして、のれん分けの店主こそが、一風堂の新しいシンボルになってくれると期待している」

のれん分けで、本当の仲間ができた

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2010年4月に大分県久住をベースに世界中で活躍する和太鼓集団「TAO」とのコラボレーションによって生まれたエンターテイメントラーメンダイニング、「一風堂COLLECTION.TAO」のコンセプトを引き継ぎ、2010年7月にオープンしたシンガポール2号店。テーマは「日本のかっこよさを世界へ」だ。

のれん分け店主について、河原氏は感慨を込めた表情でこう語る。

「会社を経営するというのは大変なことだ。自分で会社を経営するのは自由だと人は言う。しかし、人間が本当に自由になるためには、物事を知り、目標を達成していかなくてはならない。ただ自由になりたいといっても、自由にはなれない。一方で、自由になるためにはあきらめも必要になる。

あきらめは諦念という悟りのひとつでもあり、あきらめるには覚悟が必要だ。あきらめるという言葉の語源は、明らかにするということ。1日24時間という限られた時間をどう使うかは、人の価値観によって違う。趣味や、遊びの時間、家族との時間も必要だが、一生懸命何かをしたいならば、したいことをあきらめなくてはならないこともある」

「高い志を共有する店主たちと力の源カンパニーとは、ある意味で対等の関係にある。会社という守られた環境にいることを辞めてのれんを預かり、それを磨くことを仕事とする。そのことを明らかにした彼らと一風堂との関係は、また新しく始まって行くだろう。これから、1年、3年、5年でどう変化していくかが楽しみだ。のれん分けによって、さらに踏み込んで話せる仲間たちや家族が増えた」

社会貢献がブランドをつくる

v79-02力の源カンパニーは、10年前から福岡市内の小学生に料理の楽しさを伝えるワークショップを行っている。小学校の体育館などで、ラーメンやスープを実際に調理して食べることによって、日本の農業や食への関心を高めることが狙いだ。これまでに小学生を中心として延べ6000名が参加した。

「社会貢献の活動というのは、本業の利益とは関係のないところで動いていかないと世の中に貢献しているとは思われないものだ。そういった活動には、時間もお金もかかる。だが、それを継続して実績を積み重ねていくことが、ブランディングになる。積み重ねている時には実感できないが、ブランドができ上がったときにその価値が分かる。社会貢献をやることの意義に規模の大小は関係ないが、会社を大きくすれば、社会貢献がたくさんできる。結果的に、世の中により多くの良い影響を与えるということが重要だ。一つひとつの小さな活動を、確実につなげていきたい」

小さな行動の積み重ねがチームを回す原動力となる

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「ラーメンダイニング」を謳う「博多一風堂ニューヨーク1号店」の様子。「和モダン」でスタイリッシュな店内では一品料理やお酒も楽しむことができる。日本で人気の「五行」が採用するスタイルだ。

こうした活動を行う上で河原氏が特に意識しているのは、小さな行動の積み重ねだ。

「海外展開、のれん分け、アルバイト懇親会、食への関心を高めるワークショップ、社内教育制度、財団法人の設立など、色々な活動をやっているが、そのどれもが一朝一夕には形にならない。しかし、大切なのは行動原理になるまで続けていくこと。時間も、お金も、継続するための強い想いも必要だ。そして、小さな行動とその積み重ねが生み出す意義の共通の理解が生まれ、目指す姿が皆で共有されて初めて、こうした活動が良いチームを回していく原動力となる」

「これも大体3年スパンで考えている。それくらいの時間がないと人は変われないと思うからだ。変化を続けることが社風になって、当たり前の基準が高くなり、強い組織となる」

 高い目標の宣言と実現によりみなぎるパワーが生まれる

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開店前の朝礼は海外でも健在。

力の源カンパニーは、これまで約10年間、最大1年間3~5店舗のペースで新規出店を続けていたが、2010年度は22店舗の新規出店を行う計画だ。その背景にはどのような考えがあるのか。

「組織で働く人間は、組織として宣言した高い次元の目標を具現化させることができたときに、最も力が付く。高い次元の目標というのは、その人の常識を外させてしまうくらいの目標だ。例えば新規出店については、6~7店舗ほどという少し多いくらいの数ではなく、一気に20店舗以上を出したという事実が自信になる。この仕事を通して成長しているという確信を得るためには、負荷のかかることをやらなければならない。実現できなかったとしても、振り返ればその原因が必ずあるのだから、それは新しいチャンスの芽が出てきているということで、貴重な経験になる。そうやって苦労しながらもやり切れば、そのときに達成感を感じられるはず。この事実の積み重ねが、パワーになる。会社の成長は個人の成長なくして実現しないのだから」

経営者の仕事はストーリーを描くことであると河原氏は言う。負荷をかけて高い次元のストーリーを組織で継続して実現していくことができれば、その実績が個人の自信となり、力がみなぎる組織をつくり、社会的価値の高いブランドを生み出すのだという。その根底にあるのは、経営に対する確固たる信念だ。働きがいや社会貢献に対する取り組みは、成果が表れるまでに時間がかかるからこそ、継続することが大切になってくる。そのためには、経営者の信念とストーリーが必要であることを、河原氏は教えてくれた。

 

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