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新型コロナウイルスに関する消費者意識調査【2020年11月】

2020年11月10日から11月12日にかけて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する消費者意識調査を行いました(回答数:829名)。日本においても新規陽性者数が1000名を超える日が続くようになり、第3波が警戒される現在の消費者意識調査の結果をまとめました。

この記事のポイント


1.COVID-19に対する危機感は微増傾向が続いているが、夏と比べるとまだ低い状態を維持している

2.女性の危機感が高まり、20代・30代男性との差が広がっている

3.各サービスの利用に対する抵抗感では、男女問わず「居酒屋の利用」「ドアを開けずに換気」の抵抗感が上昇してきている

4.11月、12月は再び業績の回復にブレーキがかかってしまう可能性が強まっている


※男女、年代、エリアがほぼ均等になるように調査を行いました。

1.COVID-19に対する危機感は微増傾向が続いているが、夏と比べるとまだ低い状態を維持している

コロナウイルスに対する危機感について、これまでの調査との比較を行いました(図1)。結果、前回と同様に『微増傾向』を維持しています。日本の新規陽性者数が増加傾向にある様相を反映していると考えられます。


図1 COVID-19に対する危機感の分布
COVID-19に対する危機感の分布
※「コロナウイルスに対する危機感をどの程度感じていますか?10段階でお答えください。」に対する回答


一方でPCR検査陽性者数とCOVID-19に対する危機感を比較すると新規陽性者数は「第2波並み」に増えているが、COVID-19に対する危機感は「第2波ほど増えてはいない」ということが分かります。これは「消費者心理が今後急激に変化はしにくい」ということを反映しているものと思われます。


図2 COVID-19に対する危機感の平均値と新規陽性者数の7日間移動平均推移比較

図2 COVID-19に対する危機感の平均値と新規陽性者数の7日間移動平均推移比較
※「コロナウイルスに対する危機感をどの程度感じていますか?10段階でお答えください。」に対する回答の平均値推移

2.女性の危機感が高まり、20代・30代男性との差が広がっている

今回の結果を年代別、性別で比較しました(図3)。

その結果、特に『20代・30代男性』が依然として危機感が低くなっている一方で『女性』の危機感は高まっていることが分かります。特に第2波のピーク(第5回調査)だったときと比較しても、女性や40代以上の男性と比べて『20代・30代男性』の危機感が低くなっていることが分かります。


図3 性別・年代別のCOVID-19に対する危機感の比較

	図3 性別・年代別のCOVID-19に対する危機感の比較

※「コロナウイルスに対する危機感をどの程度感じていますか?10段階でお答えください。」に対する回答

3.各サービスの利用に対する抵抗感では、男女問わず「居酒屋の利用」「ドアを開けずに換気」の抵抗感が上昇してきている

この調査では下記5つのシーンで「抵抗を感じるかどうか」を、「非常に抵抗を感じる」から「全く抵抗を感じない」までの7段階で評価をお願いしています。

【抵抗感を聞いている5つのシーン】

  1. 居酒屋で飲食(他のグループと1m以上間隔が空いている場合)
  2. ファストフード店飲食(他のグループと1m以上間隔が空いている場合)
  3. 店内の換気について『ドアの開放はせずに空調のみで換気をするお店』
  4. 小売店において様々なお客様が触れることのできる商品を購入すること
  5. ビュッフェ形式のような複数のお客様が自分で取り分ける食事形態


上記5つのシーンに対して、「非常に抵抗を感じる」から「どちらかと言えば抵抗を感じる」までを足し合わせた比率の推移を女性(図4)と男性(図5)に分けて比べてみました。

その結果、女性よりも男性の方が抵抗を感じる人が少ないという傾向に変わりはありませんでしたが「居酒屋の利用」や「ドアを開けずに換気」に対する抵抗感は男女ともに今回高まっていました。

居酒屋の利用については、Go to Eatキャンペーンなどによって居酒屋を利用するシーンが増えてきている一方で、各地でクラスターが発生したり5人以上での会食を控えるよう報道されたりしていることから、より抵抗感を感じる機会が増えたことが要因の1つとして考えられます。

また、換気についても11月となって寒い日が増えてきたため「以前よりも窓を開けて換気がしにくくなった」と感じていることから「きちんと換気をすること」に対する意識が強くなっている、ということがあると考えられます。


【図4】女性における各種サービス利用形態に対する“抵抗を感じる”側の比率

【図4】女性における各種サービス利用形態に対する“抵抗を感じる”側の比率

※“抵抗を感じる”側の比率…「非常に抵抗を感じる」から「どちらかと言えば抵抗を感じる」までを足し合わせた比率


【図5】男性における各種サービス利用形態に対する“抵抗を感じる”側の比率

【図5】男性における各種サービス利用形態に対する“抵抗を感じる”側の比率

※“抵抗を感じる”側の比率…「非常に抵抗を感じる」から「どちらかと言えば抵抗を感じる」までを足し合わせた比率

4.11月、12月は再び業績の回復にブレーキがかかってしまう可能性が強まっている

今回、株式会社MS&Consultingが今まで取得してきたネットリサーチによる「一般消費者の感覚」と各種オープンデータから取得した外食業界(居酒屋業態)の動向を比較、分析してみました。その結果が【図6】です。

参考にしたのは以下のデータです。

  1. 飲食店情報の閲覧数(出典:V-RESAS)
  2. パブレストラン・居酒屋の第3次産業活動指数(出典:経済産業省)
  3. 居酒屋・バー業態売上高前年同月比(出典:日本フードサービス協会)
  4. ワタミ・鳥貴族の既存店売上前年同月比(出典:フードビジネス総合研究所)


【図6】各種オープンデータと消費者調査結果の比較

【図6】各種オープンデータと消費者調査結果の比較

※飲食店情報の閲覧数は週次、ネットリサーチによる消費者の調査結果は調査初日の日付に記載している。その他の月次データについては第3週の位置に記載している。


以前のまとめ記事で「『消費者調査の結果(オレンジ)が各種売上指標より先に動いている』傾向が読み取れる」と考察しました。この傾向がもし今回も当てはまるとすると、9月・10月と確実に回復基調にあった飲食業において8月ほどの落ち込みにはならないものの、11月、12月はその傾向が鈍化、もしくは悪化してしまう可能性が考えられます。特に忘年会需要が縮小してしまう可能性が高い今年においては、少人数の親しい友人で行う忘年会需要や、年末年始での家族需要を取り込めるのかが大きな鍵となっていくと予想されます。

MS&Consultingでは定期的に消費者意識調査を行い、感染症対策と経済活動の両立させるためのヒントとなる基礎データをタイムリーに発信していきます。

MS&Consulting 錦織浩志
MS&Consulting 錦織浩志
東京大学 大学院を修了後、MS&Consultingへ入社。データアナリストとしてビックデータの分析を担当。その知見を活かし、国立研究開発法人 産業技術総合研究所との共同研究の成果として、数々の共著論文を発表。研究テーマ例に「従業員エンゲージメントと顧客満足の関連性分析」「パート・アルバイトの従業員エンゲージメントの特徴」「サービス・ベンチマーキングによるサービス・プロフィット・チェーンの高度化に関する研究(サービス学会BestPaperAward受賞)」など。

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