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SVマネジメント手法の極意 「業績が低迷する店舗の立て直し」

取材・文▼湯瀬 圭祐

※記載されている会社概要や肩書き、数値や固有名詞などは取材当時のものです。


屋台居酒屋『大阪満マル』をはじめとする飲食事業で86店舗(直営・FC含め)を展開する株式会社イートファクトリーホールディングス。同社で、店舗の統括をしている外食事業部SV 岡 聖也氏に、不振店の立て直し方法についてお話を伺った。

過去に一番難易度が高かった立て直しの事例を教えて下さい。

私が個人として一番難易度が高いと感じたのは、「満マル 古川橋店」です。当時は店長として3店舗目のキャリアで、初日にお店に行ってみると、冷蔵庫の食材は何も管理がされていない、スタッフさんも本当に好き放題という感じで衝撃でした。一方、売り上げは1年以上前から低迷に歯止めが効かない状況で、立て直しが急務でした。月商900万円以上のお店だったのですが、私が配属になった当時は、700万円を切るくらいまで落ち込んでいました。


そのような状態の中、どのような手順で立て直しを進めたのですか?

立て直しの際に意識しているポイントは、大きく分けて3つです。


❶ 全スタッフのベクトル合わせ

❷ 出入店(特に入店時)対応の改善

❸ 配置改善によるオペレーション(商品提供プロセス)の整流化


まずは、「❶全スタッフのベクトル合わせ」ですが、不振店はほとんどの場合、スタッフのベクトルが合っていません。ここで言うベクトルというのは、「店としてやるべきことを認識しているかどうか」と「スタッフができることを認識し、次に何をするべきかを認識しているかどうか」「スタッフがやりたいこと、モチベーションが上がることを理解し、実践させられているか」です。この要素が整理できると、改善のスピードがどんどん上がります。そのために、私は必ず全スタッフと個人面談を実施します。


内容としては以下のとおりです。

● 各スタッフがお店でやりたいことのヒヤリング

● 店として絶対にやってほしいこと、 ルールの伝達

● 各スタッフが今できることの確認


個人面談ではなるべく本人に納得感を持ってもらうことを意識し、そのために、スタッフ個々人でやりたいことは違いますが、「相手の意思に寄り添い、その中で、店として絶対にやってほしいことの選択肢を示す」ようにしています。例えば、「もっとシフトに入ってお金を稼ぎたい」というスタッフには、その意思を聞いた上で「それならドリンカー業務かレジ締めをマスターできれば、もっと入れるよ」といった感じです。同時に、今スタッフができることを棚卸しすることで、店舗として足りないポジションを明確にし、先ほどの選択肢との組み合わせを考えます。時間はかかりますが、こうした取り組みによって、ベクトル合わせが進んでいきます。


次のチェックポイントは、「❷出入店対応の改善」です。店舗立て直しのゴールは、入店から退店までの一連の流れがスムーズにできることにありますが、不振店は特に入店対応の優先度が低いことが多いのです。私は飲食店で一番重要なのは入店時の印象だと捉えていますし、弊社の「満マル」はまさに入店時の元気な印象が重要ですから、ベクトル合わせが完了すると同時に、お客さまが来店された際の入店対応を注意深く観察します。「満マル 古川橋店」では、お客さまの来店を知らせるブザーが故障したままでしたので、すぐに交換をし、入店対応の重要性と、顔を上げて笑顔で挨拶することを繰り返し伝えました。


そして、入店対応が改善してきたタイミングで、OJTを強化していきます。スタッフは入店対応の優先度が非常に高いことを理解してくれているので、オペレーションの優先順位について細かく指導します。「このタイミングでは、提供よりもオーダーの優先順位が高いよね」といった具合に、ケースに合わせて詳細に伝えることで、良い癖を付けてもらう取り組みです。


さらに、このステージでは、スタッフに対して「その店のスタッフであれば知らないといけないこと」を質問したり、観察したりすることで、その日の営業に向けた準備ができているかどうかを確認します。ホールであれば「今日の予約って何組何名様だっけ?」とか、キッチンであれば「〇〇の在庫って、今日どれくらい?」などの質問をすることによって、確認できます。


正しいコンディションの店舗は、スラスラと回答が返ってきますが、不振店のスタッフは準備項目が頭に入っておらず、スムーズに答えが返ってきません。その部分を伝えて癖をつけることで、店舗として「営業の準備を整えるチーム作り」が進みます。一般的に、店長・料理長の意識が低い店舗ほど、その日の営業準備ができていないため、店長・料理長から確認していくことが多いです。


最後のチェックポイントは、「❸配置改善によるオペレーションの整流化」です。不振店では物の配置に乱れが出ていることが多々あります。個人の好き嫌いや癖で物の配置が安定していないことが多く、普段の営業ではそれでも対応できるのですが、ピークタイムや売り上げの高い曜日は、必ずオペレーションが乱れます。その結果、お客さまをご案内できなかったり、クレームが発生してしまったりして、お客さまの満足度が下がり、売り上げが落ちてしまいます。


こちらの問題解決の方法は、「配置の固定→反復練習」です。普段の癖に流されないよう、特に配置が決まっていないものについては、ルール化します。ボックスを作って固定したり、配置に置く物の名前を貼ったりすると効果的です。また、臨店時には必ず確認し、繰り返し修正することで、飲食の基本である、「正しいタイミングで正しい商品を提供」できるようにします。その後は、SVナビ(臨店時のSVチェックの仕組み)を活用して、コンディションの維持を進めていきますが、「配置改善」に力点を置いているため、弊社のチェック項目は配置に関するチェックポイントが多いのが特徴だと思います。スーパーバイザーの業務を効率化する『SVナビ』資料DLをする>>


「満マル 古川橋店」はどのくらいの期間で改善が進んだのですか?

古川橋店については、3月から店舗に入り、1か月後の4月には、月商800万円を回復し、5月には900万円以上の売り上げを確保することができました。立地的には駅近で、集客のポテンシャルがあったので、オペレーションを改善することで、売り上げも早期に戻すことができたと思っています。


臨店時にどのようなデータや資料を確認しますか?

事前確認するデータや資料はシンプルです。


● PLの主要スコア(売り上げ・利益・FL)

→特に時間帯別の売り上げと人件費をチェック

→オペレーションのバランスを確認

● SVナビ(臨店報告書)を確認

→特に連敗項目を重点的にチェック


ここである程度の仮説が立てられ、あとは臨店時に先ほどのチェックポイントを確認することで、改善ポイントの優先順位をつけています。


岡SV流「立て直し」の極意とは?

やはり、ステップに沿って「優先順位」をつけることだと思います。あくまでもゴールは、「持続的利益」と「お客さまに喜ばれるお店作り」です。そのため、先に述べたチェックポイントに沿って確認を進めていけば、上手くいっていないところが見えてきます。そこをなるべく効率的にスピーディに解消することがSVの役割だと捉えております。

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