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受講企業のリピート率90%超 「マイレボリューション研修」開発の経緯に迫る

株式会社OHANA

http://www.ohana.me/


『季刊MS&コンサルティング 2015年夏号』掲載
取材:湯瀬 圭祐・北村 裕介
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

愛知県内を中心に居酒屋などの飲食店を展開する株式会社OHANA。居酒屋甲子園、クオリティ・サービス大賞、経済産業省が推進する「おもてなし経営企業選」の3つを受賞した日本で唯一の企業として、そのサービス品質・経営品質が高く評価されている同社では、独自のノウハウを活用した人材育成を行っており、スタッフの早期育成・定着率の向上を実現しているという。創業10年という節目を迎える今、創業社長であり、現在はOHANAグループの代表として活躍する松田真輔氏にお話を伺った。

サービス業では、採用や人材定着、教育といった人に関する問題で特にご苦労をされている企業が大半かと思いますが、御社の状況はいかがですか?

マクロ的な観点で考えれば、これから労働人口は急激に減っていくわけですから、当然深刻な問題となりますよね。ただ、そういう状況の中で、人に関する本質が見失われているのではないかという危惧はあります。たとえば何かあるとすぐに「ブラック企業だ」といって騒がれるというようなことですね。労働者だけが強くなってしまっている印象を受けます。そもそもどちらが強い、強くないという話ではないはずなのに、いびつな対立構造が作り上げられてしまっているように感じます。

ただ当社だけの話をするならば、幸いなことに人材難とは程遠い状況です。アルバイト採用についても、紹介が大変多く、一年間で80人くらいが紹介で入ってくれています。入社後の定着率も高く、たとえば大学1年生で入ったらだいたい4年生で卒業するまで在籍するのが普通です。

2009年:居酒屋甲子園日本一を獲得


具体的にどのような取り組みをされているのですか。

私は10年前の創業時から一貫して「企業は人に尽きる」と思っていて、常に人に関することを最優先に取り組んできました。最初の頃は新入社員の定着率の悪さに悩んだ時期もありましたが、その部分は私自身がスタッフと定期的にコミュニケーションを取り、スタッフの不満を聞きだすことで解消してきました。一度「辞める」と腹を決めてしまったら、もうどうすることもできません。だからこそ、その前の段階でキャッチするということがポイントです。

そして、組織として「何をやるか」はもちろんですけれど、一番大事なのは「誰がやるか」だと思っています。トップとして、スタッフ全員を高みに登らせたいという気持ちがあります。そのために一番成長しなければならないのは、トップである自分です。社内では「天井の法則」と呼んでいるのですが、組織のリーダーのレベル以上に組織は成長できない、というのが私の持論です。会社であれば社長の、店舗であれば店長以上の組織には絶対になりません。それは在り方(マインド)とやり方(技術)の両面について言えると思います。ですから私は10年ずっと、「どうやったら皆がより輝けるのだろうか」とか「どうすれば早いスピードで成長できるだろうか」ということについて、さまざまな本を読み、研修にも参加して、まず自らが学び、それを社内で実践するということを続けてきました。その一環で、ミステリーショッピングリサーチ(以下、MSR)ももう7年くらい活用しています。

2010年外食クオリティサービス大賞・大賞受賞


御社のMSRの点数は、全国でもトップクラスの数値ですね。そしてずっとその点数を維持できていることからも、スタッフさんのレベルの高さが伺えます。

当社ではMSRを「お客さまの声を数値化するための唯一のもの」と定義していて、評価制度にも取り入れています。会社の基本的なシステムの一部分ですから、切り離せるものではありません。

しかし今から3年くらい前にすごく悩んだ時期がありました。ちょうどその頃、色々なご縁から、外部での講演や研修会の講師として招いていただくなど、社外での仕事が急に増え、私が会社から離れる時間が増えた時期でした。そうすると途端に社内が崩れてきたのです。その状態を見て非常に危機感を感じたと同時に、自分のそれまでのやり方を反省しました。無意識的に、スタッフをコントロールする感情があって、スタッフを支配するようなやり方をしてしまっていたのかもしれない。スタッフが強く依存してしまっており、私の目が離れると組織が崩れてしまうという、とても弱い関係性を築いているのかも知れないと気付きました。

2014年おもてなし経営企業選受賞


松田さんはそこから正しい組織の状態へとどのようにして変えていかれたのですか?

一番に変わったのは私自身です。考え尽くした結果、自分自身を肯定できるようになって、「完璧なリーダー」を演じる必要はないのだと気づけました。すると、仲間のことを本当の意味で信じることができるようになりました。それまでは、「辞めてしまったらどうしよう」という怖さが心の中にあり、無意識にスタッフをコントロールしてしまっていたのだと思いますが、今では「もしその人が幸せになれるのなら、別にうちの会社じゃなくてもいいじゃないか」と素直に思えるようになりました。

こういった気づきをもとに、スタッフにも自己の肯定を実現出来るような研修プログラムを作り、社内で実施しました。マイレボリューション研修、略してマイレボ研修と呼び、この研修プログラムによって、弊社は劇的に進化出来たと思っています。結果として、業績も、MSの評価もさらなるレベルアップを実現出来ました。お世話になっている皆様に、マイレボ研修のお話をさせて頂くと、「是非うちのメンバーも参加させてほしい!」という声を多数頂き、一年半前からはオープン研修として一般参加者も募って実施し、一年半で、卒業生は総勢350人になります。


具体的にはどのような研修ですか?

簡単に言うと、受講者の「自己変革」「自立」を目的とした研修です。カリキュラムは3日間で、その間座学は一切ありません。全て体感型のプログラムとなっています。

学習定着率の研究によると、ラーニングピラミッドと言って、学習の効果が最も高い方法は「他人に教える」ことで、その次が「体験する」ことです。ですから、マイレボ研修は全て「体験型」の研修なのです。また、「こう考えなさい」、「これを覚えなさい」というコントロールがない環境も、この体験型の研修の良さだと思います。

私は中学校、高校で講演させてもらう機会も多く、そういうときに必ず生徒に「自分に自信がありますか?自分が好きですか?」と質問するようにしています。そうすると、なんと8割以上の子が「自分に自信がない、自分が好きじゃない」と答えます。もしくは「夢は何?」と聞くと、「普通で良い、このままで良い」と答えます。その年齢で、自分で自分を諦めてしまっているのです。しかし、生まれたときからそういう状態であるわけはないですから、その後の環境や教育のせいですよね。日本の教育は「答えを与える教育」なのだと思います。親が子どもに「親の言うことを聞く子が良い子」という思想を植え付ける。答えを求めるための効率的なやり方を教える教育ですね。そういう教育をずっと受けていると、安易に答えを求めるようになってしまう。だから、すぐにノウハウややり方を求めてしまう。人生や生き方のような、正解がないものにまで答えを求めるようになってしまう。でも当然見つからないから、延々と自分探しをしたり、答えを見つけられない自分が悪いのだと自分を責めてしまう。そういう子たちがそのまま社会に出てきて、できない自分を責め、自分には価値がないと感じてしまい、生きがい・働きがいを感じられないと悩み、結果として活躍が出来ずに会社を辞めてしまう状況が生まれているのではないでしょうか。

マイレボ研修を受講することによって、ありのままの自分を受け入れ、「自分がやりたいことは自分が知っている」ということに気がつけるようになります。さらに、「それをやりたいと感じる自分」を肯定することができるようになります。そうすると、おのずと自信も生まれ、自分の可能性を信じ、自分に夢を持たせたくなります。また、自分自身と向き合うことで、他人に対してもしっかり向き合えるようになります。自分と向き合えない人は、やはり他人と向き合うことも苦手だし、「感じる気持ち」も薄れています。それは、サービスマンにとっては致命的なことです。例えばMSRの設問の中にも「トイレを探すふりをしてみて下さい」というものがありますけれど、そういう目の前の人が今どんな気持ちなのか、何を求めているのかを察知する力、感じる力が弱ければ、当然ながら良いサービスはできません。ただ、「感じる気持ちを持ちなさい」と言っても、持てるものではないですから、体験を通じて自ら気づく研修が必要になってくるのです。

ゲームを通じて学ぶ体感研修プログラム「マイレボリューション研修」。3日間の研修を通して、受講生と真剣に向き合う松田氏。


先ほど「在り方とやり方」というお話がありましたが、マイレボ研修は「在り方」の研修ということですね。在り方が正しければ、あとはやり方を学べばできると。

おっしゃる通りです。巷にはマインド面を目的とした研修がたくさんありますが、そのほとんどが「こう在らねばならない」というマインド・コントロールです。一方でマイレボ研修は、コントロールをしないという点がポイントなので、その点は今一度強調させて下さい。

自社のスタッフだけではなくオープンでマイレボ研修を提供するのは、社会貢献だと思っています。この研修を通じて、枠からはみ出す人を一人でも多く育てたいというのが、OHANAグループの代表として、また一個人としての気持ちです。


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