好業績店の特徴はポジティブマインド

フルラジャパン株式会社

http://jp.furla.com/


『季刊MS&コンサルティング 2010年夏号』掲載
取材・文:西山 博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

イタリアに本拠地を置く老舗ラグジュアリーブランドのフルラジャパン株式会社は、2年前からミステリーショッピングリサーチとHERBプログラムによってサービス・プロフィット・チェーンを回すためのプロジェクトを進めている(図1)。リテイルマネージャーの田村雅紀氏、ヒューマン・リソースの君島大介氏の協力を得て、プロジェクトの概要と、外部環境の影響を受けやすいアパレル業態における成果創出のポイントを取材した。また、エリア別に店長をサポートしているリテイラーの濱田隼人氏、大澤伸江氏に、東京エリアで最も高い成長率を誇る伊勢丹立川店、長期的に安定成長を続ける北千住マルイ店の事例から見える成果のポイントを教えて頂いた。

ステップ(1)本部と店長のベクトルの一致

サービス・プロフィット・チェーンの好循環をつくり出すために、外部環境の変化以上に、お客様目線が大事だということにベクトルを合わせるため、まずは自分達が意識改革することで、改善活動が根付きやすい組織風土を作りたいと考えてプロジェクトを開始しました。マネジメントをしている人間が意識を高め、こうした内容を店舗に伝える一方、店舗における良い接客の情報を収集していきました。


ステップ(2)売上を上げるノウハウの整理

次に行ったことが、売上を上げるために何をする必要があるかの整理です。株式会社MS&Consultingによる顧客心理に基づくセールスステップと顧客関係性ステップの理論を基に、店長のマネジメントのサポートを行うリテイラーという職種の社員が中心となって、各店舗の接客の成功事例から売上を上げる要因を抽出し、「セールススタンダード」という一つのマニュアルにまとめました。

これまではそれぞれの現場の各メンバーが、商品、入店者数、接客の方法、などそれぞれの重要度を感覚的に捉えており、何に力を入れるべきなのかが明確になっていませんでした。今回のプロジェクトを通じて「セールススタンダード」をまとめたことにより、店舗における改善活動を本格的に推進する前提ができたと考えています。

リテイルマネージャーの田村雅紀氏


セールスステップと顧客関係性ステップの理論(図2)は、お客様の購買心理の段階を「顧客関係性ステップ」として分解し、お客様一人ひとりに対して各セールスステップの要件を適切に満たしていくことによって、購買率(クロージング率)を高めることができるという考え方を体系化したものです。このステップが実現できれば、サービス提供者とお客様の双方が最も満足度の高い状態で購買に至ることができ、顧客ロイヤリティの向上につながると考えています。


ステップ(3)現在のテーマは成果事例の創出と拡大

売上を上げるノウハウの整理ができても、知っているというだけでは現場で実行できません。現在、リテイラーが必死になって、現場の社員一人ひとりの実行力・接客力を上げるための活動を行っているところです。

そのためには、それぞれのノウハウの肝の部分が頭で理解できているだけでなく、習慣化されていることが必要条件だと考えています。例えば、感動を与えようといった時、多くの人は仰々しいものを想像しますが、ご入店時にはお客様に話し掛けてもらいやすい雰囲気を作る、ご購入時にはお客様の趣味に合った追加提案をするなどといったちょっとした対応の差が、お客様の感動につながり、リピートしてくれる要因になるのです。そのようなことを体験し、お客様に喜ばれると、働く楽しさにも影響を及ぼし、より誇りとやり甲斐を持って日々の接客ができるようになると思います。それを、ミステリーショッピングリサーチを活用しながら進めているところです。

当社の強みは、ブランドのコンセプトが明確で、全ての社員がそれに共感していることです。そのブランド愛を、どうやったらお客様に伝えられるかということがこのプロジェクトの発端でした。成果発表会などを通して成功事例を共有していますが、業績的にも店舗風土的にも、着実に成果を上げる店舗が出てきています。今後はそれをいかに拡大していくかが課題です。

セールスステップと顧客関係性ステップの理論(図2)は、お客様の購買心理の段階を「顧客関係性ステップ」として分解し、お客様一人ひとりに対して各セールスステップの要件を適切に満たしていくことによって、購買率(クロージング率)を高めることができるという考え方を体系化したものです。このステップが実現できれば、サービス提供者とお客様の双方が最も満足度の高い状態で購買に至ることができ、顧客ロイヤリティの向上につながると考えています。

ヒューマン・リソースの君島大介氏


成果事例(1)伊勢丹立川店リテイラー 濱田隼人氏

ポジティブさがアクション継続のポイント

「伊勢丹立川店」の成果ポイント

・成果創出の最も重要な要素は「ポジティブさ」

・外的要因より変えられることに目を向け、活動の振り返りを重視する

・取り組みの意味と効果を信じることで、継続率と成功率を上げる


成功要因はチーム全体のモチベーションの高さ

現在、全店で現場主体の販売力強化の取り組みを行っていますが、週次で接客内容や他のメンバーへのアドバイスなどを連絡ノートで情報共有し始めている店が、私が管轄する中では12店舗中3店舗あります。それだけでも優秀な取り組みですが、立川店では、取り組みをメンバーの自主性に任せるだけではなく、チーム全体のモチベーションを上げるために、メンバーの接客の良い所探しに重きを置くなどの工夫をしています。結果、立川店では業績的にも好調を維持しています。


モチベーションを生み出すのはポジティブな気持ち

モチベーションを高めるための必要条件は、ポジティブであることです。ポジティブさは、接客の数、話し方、対応のスピードを変化させます。さらに、得意分野で能力を発揮してもらうことで、結果として生産性に好影響を与えます。また、会社で決められたこと、他店での成功事例などを共有しても、それに対する食いつき方が変わってきます。


今の環境の中で何ができるか考えやったことを振り返る

立川店店長の糸井さんは、いわばポジティブの達人です。糸井さんの特徴は、自分達の変えられることに目を向けること。変えることが難しい外的要因などについては、あまり話題に出しません。今の環境で何ができるかを前向きに考えるという姿勢が素晴らしいと思います。

例えば、メンバーの中にネガティブなオーラを感じれば、彼女の場合、まずはテンションを上げることを考えます。具体的には、メンバーの良い所、変えられる可能性のある所に着目するのです。必要最低限のことをやっても感動にはつながりませんから、得意分野を発揮してもらうことで成果を実感していこうという考え方です。

また、振り返りを特に重視しています。自分のできていた点、できていなかった点に気付くことの大切さを日々伝えているようです。また、意識してもらうために、毎月テーマを持って取り組んでいます。現在のテーマは、「一客目を振り返る(=1日の中で一番最初に接客したお客様の接客内容を振り返る)こと」です。


取り組みを信じるポジティブさがアクション継続の鍵

結果が出ていない段階では、やっていることの正しさを素直に受け入れることが難しいものです。不安があるため、やっていることが正しいかどうかをごく早い段階で判断してしまい、徹底する前に、それをやる意味は薄いと思い込んでしまうのです。

それが、アクションの継続性、ひいては成功率の低下を招く原因になりがちです。そうすると、成功事例の共有をしても、「それは○○だから」という言い訳が先に立ち、実践しようというモチベーションが起こりにくくなってしまいます。

そのため、糸井さんは部下に対して、数字よりも取り組みの姿勢を重視しているようです。糸井さん自身は、高い目標数字に対する執着が強いのですが、メンバーにはそれを感じさせず、あくまでアクションの振り返りと、意義や考え方のほうを意識してもらっているようです。それは、取り組みは必ず結果に反映されると信じているからだと思います。そして、予算は結果的に達成されるのです。


モチベーションと成果

外的要因の影響を受けやすいアパレルでは、「取り組みに対する結果の振り返りを強く意識しなければ、取り組みを継続しようとするモチベーションが生まれにくい」と糸井店長。モチベーション維持の鍵はポジティブマインドと目標管理にあると言えそうだ。


成果事例(2)北千住マルイ店 リテイラー 大澤伸江氏

本質の理解とアクションプランの設計が鍵

「北千住マルイ店」の成果ポイント

・準備を徹底し、マインドの共有と達成可能感を高める

・取り組みの意義を納得するまで考え、続けるための工夫もチームで検討

・先を見越したアクションプランを意識し、外部環境を味方にする


本質的な意義や考え方の理解と成功イメージの共有

北千住マルイ店店長の三上さんは、接客や改善の重要性についての本質的な意義や考え方をとても大事にしています。まずは自身が納得いくまで考え理解して、それを伝えるために様々なウェブサイトや書籍などを参考に資料の準備をし、伝えるためのシナリオを作成して、分かりやすくメンバーに伝えるということに力を入れています。

また、過去の実績に基づいて分析するなどの振り返りを行い、計画を立てることの必要性を繰り返し説明しているようです。ミーティング前に数字を予め分析して、「この部分をこう伸ばせば、決して難しくない数字だよね」というように伝え、成功イメージを持ってもらうのです。それによって、メンバーにはアクションに対する納得感が生まれ、実行のモチベーションが高まります。


アクション継続のポイント

アクションを継続するためには、このように詳しく説明し受け容れてもらうことも大事ですが、自分で考えて納得することがより重要です。そうすれば、有効性を信じられ、半信半疑のままアクションに入るということはなくなります。ただ、自分で考える習慣が身に付くまでには時間が掛かるので、事あるごとに説明し、根気よく続けることが大切だと三上さんは言います。

また、最初は創意工夫によって自分達で出したアイデアでも、長く続けていくうちに実行度が落ちてしまうことがあります。気持ちが萎えることがあるのは仕方がありませんが、そういう場合、何故そうなったのかを聴き、どうやったらそれができるようになるかを皆で考えるそうです。そのため、都度アクション確認や振り返りのためのフォーマットを変更したりしています。


外部環境に捉われすぎずアクションプランを強く意識

多くの店長は、目標設定を行い、アクションプランを作成しています。しかし、振り返る段になると、アクションプランよりも外部環境にフォーカスしてしまうということがよく起こります。

アパレル業界は、お客様の購買意欲、周りのお店の状況、建物の集客力、キャンペーンの影響、といった外的環境の影響を大きく受けます。実際には、同じ店でも人が変わると売上も変わるということも事実なのですが、外部環境を意識しすぎるあまり、他店の成功事例を聞いても、「やってみても意味がないのではないか」という不安が先に立ってしまいがちです。

そのため、自分達で強く意識して、実行したことを振り返らないと、売れている理由、売れていない理由の中の自分たちの努力の結果が見えなくなってしまうのです。そうなれば、アクションプランを立てる意義さえも見失ってしまいかねません。

そこで、毎月の目標に対する振り返りの内容がポイントになります。アクションプランとは直接関係のない外的要因にフォーカスしてしまいがちですが、アクションの意味を信じて意図的に実行し、それに対する振り返りを確実に行うことが重要です。


先を見越すことで外部環境を味方に

三上さんはさらに、先々の外部環境変化を見通し、対応可能な事を逆算して当月のアクションプランに落とし込んでいます。例えば12月の時期であれば、「今月はセールがあるが、2月には例年セールの横で気になっていた商品の戻り買いがあるから、今からプロパー(セール品ではないもの)のセールスポイントを整理して伝えられるようにトレーニングしていこう」といった具合です。目先の数字だけではなく、次の売上を作るためには何が必要かを考えていくことで、外部環境をも味方にしてしまっているように見えます。


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