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ホスピタリティによる一体感が、企業を支える土台に~変化に耐え得る組織づくり~

クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社

http://krispykreme.jp/


『季刊MS&コンサルティング 2010年春号』掲載
取材・文:西山 博貢、写真提供:クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

2006年6月に設立したクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社は、同年12月、1号店となる新宿サザンテラス店(右写真)をオープンさせた。製造工程の見える店舗で出来立てのドーナツを味わえるスタイルは爆発的な人気を呼び、新しいドーナツを求める長蛇の列が連日報道されていたことは記憶に新しい。あれから4年、なおも圧倒的な人気を誇る同社の次なる展開とは。上田谷真一代表取締役社長に伺った。

ホスピタリティがベースの企業文化構築を目指す

1号店のオープンはマスコミにも度々取り上げられ、連日本当に多くのお客様が足を運んで下さいました。もうすぐ13店舗になりますが、時間帯によっては今 でも長い行列のできる店舗があります。これは本当に有り難いことですが、同時にいつも初心に戻らなければと思っています。なぜかと言えば、小売業や飲食業 を営む企業はどこも、売上拡大やコスト削減など、店の存続・発展のために色々と策を講じようとしますよね。しかし弊社は今、商品がお客様を呼んでくれてい る状態。製造工程が見え、「温かくてフワフワ」といった“商品のユニークさ”にお客様が集まり、店はひたすらドーナツを作り、ひたすら販売している―この ような毎日の連続なので、サービスや細かい部分に荒っぽさが残ることは必至です。接客やサービスの水準を根本的に上げる努力、いつも初心に戻る気持ちが大 切です。お客様が集まってくれている現況に油断することなく、今のうちから相当な意識をもって、しっかりとした企業風土、ホスピタリティをベースとした企 業文化を創ることが重要だと感じています。

上田谷真一代表取締役社長


しかし、社員やクルー(店舗スタッフ)に向けてCS向上やホスピタリティの話をすると、特に長く店舗運営に携わっている者ほど、ホスピタリティもQSCの 1項目だと考えてしまいがちです。店をキレイに保つことももちろん大切ですが、それと同じ1つの項目としてホスピタリティを位置付けてしまうと、企業文化 を作り上げるほどの要素には決してなり得ません。ホスピタリティの心は最も大事な要素のひとつで、チェックリストのひとつではないことを、会社として明確 に打ち出したいと思っています。そう考えていた時に、MS&Consultingさんのアプローチがピンと来てミステリーショッピングリサーチ (以下MSR)の導入を決めました。実際に調査をしてみた結果、予想よりも高い評価を頂けました。しかし、点数そのものに一喜一憂するつもりはありませ ん。大切なことはコンスタントな改善が行われているかどうかだと私自身がメッセージを出し続けていて、今は皆がそう意識して日々取り組んでいます。MSR の目的は調査をすること自体ではなく、大きな狙いはあくまでホスピタリティの企業文化構築だと考えています。


また、「利益や売上を追いかけることと、ブランドやお客様を大事にすることではどちらが大切か」という議論が出ることはよくあると思いますが、それらは絶 対に両立すると私は考えます。長い目で見れば必ず比例するものだと、はっきり伝えています。もちろん、会社として計画した予算をきちんと達成することは大 切で、達成できなければその理由を分析するのも当然です。しかし、それとは別次元の話として大切なものがホスピタリティです。先にお話したように、今は “商品のユニークさ”がお客様を集めてくれています。では、もし今の商品がお客様に飽きられてしまったら。次の商品も負けずにユニークでない限り、お客様 は帰ってきてくれません。でも、たとえ商品が変わってもホスピタリティをもってお客様にお勧めできるような人財が育成できれば、戦えるのです。商品や環境 が変わっても戦うことができる店は、長期で生き残っていけると考えています。だからこそ、今のうちにホスピタリティを持った人財を育成し、ホスピタリティ をベースにした企業文化を創り上げたいのです。


企業コンセプトを表現するチャンスの最大化

現在は、イートインよりもテイクアウトの比率が圧倒的に高いですが、スペースがある限りは座席を設けてカフェスタイルを採っています。理由は、お客様と接 する時間やチャンスをなるべくたくさん作りたいからです。弊社には“Share Happiness”という企業コンセプトのキーワードがあります。家族や友人、仲間と、何かしらをシェアしてみんなでHappyになろう!というもので す。当初、大きすぎるのではという懸念の声も多かったドーナツ12個入りの例の箱も、平面に並んだドーナツをみんなで囲んでシェアすることで楽しいひとと きもシェアしてほしいという想いから、日本でも取り入れることになりました。このように“Share Happiness”は社内のあちこちで謳われていて、我々の企業コンセプトのベースにあります。日本では都市の一部に人が集中するので、アメリカのよう に広いスペースを確保することは難しく、出店はどうしても駅中などの狭い敷地になります。それでも今のところできる限り座席を設けているのは、 “Share Happiness”の概念の下、ホストとしてお客様をお迎えして少しでもHappyな気持ちで帰って頂きたいからです。段々と認知度も上がってきたこれ からは、もっと小規模な店舗も出てくるでしょう。将来的には座席スペースが取れない店も出てくると思います。小さな店の狭い空間では、当然接客のきっかけ も限られてきます。カウンター越しに商品を引き渡す短い時間や、ちょっとした会話の中で自分たちのコンセプトを表現し、ブランディングしていかないといけ ません。サービス向上やホスピタリティに今取り組む必要があるもう一つの理由はここにあります。いかに小さなチャンスでもお客様に良いインパクトを残し、 Happyをシェアして帰って頂けるサービスレベルを目指していかなければなりません。


どんな変化にも揺るがぬ土台はホスピタリティから

今後店舗数を拡大していくと、運営は当然それぞれの店舗に託していかなければならず、時に本社からは各店舗に厳 しいことを要求せざるを得ない場合もあります。しかし、企業文化や企業風土さえしっかりしていれば、無理難題をお願いしても、おそらく組織があまり混乱し ないで済むと思っています。会社、または個人の資質、姿勢の中に、ホスピタリティのマインドがきちんとベースを作ってさえいれば、会社の方針が変わっても 店や個人は揺るがないのではないかと考えます。「お客様が喜んでくれる、それが嬉しくて仕事をしているんだ」と、自らの軸を持つことができれば、売り方や 商品の変化に戸惑うことなく営業できるでしょう。厳しい時代は必ず来ます。厳しい決断を迫られた際には、ガイドラインとなる企業文化、土台になるホスピタ リティマインドが必ず活きてくると思います。

また、ホスピタリティの心は、企業に一体感を生み出します。売上目標やインセンティブによって一体感を持つとい う手もあるでしょうが、それを長く続けるのは相当大変なことですし、制度がひとつ崩れただけで社内は大きく混乱すると思います。しかし、一体感の源泉がホ スピタリティや仲間意識、誇りといったものであれば、不測の事態があったときや、立ち向かわないといけない逆境にめぐり合っても、組織はバラバラにならな いどころか、その底力を発揮すると思います。軍隊型の組織よりも、仲間の一体感で結ばれた組織は強いですから。


価格勝負ではなく顧客にとってのバリューを高める

今後の方針としては、サービスの水準を上げることや、顧客サイドのバリューを高めることを中心にやっていこうと 思っています。クーポンの発行や割引など、価格を下げての訴求は当面するつもりはありません。新店を開けるときは、通行人のお客様に箱ごとドーナツを差し 上げることもあります。何より商品を知ってもらいたいという思いがあるのと、ニコニコしたクルーが自分のお店の商品を配っている姿勢は、それだけでブラン ディングになります。

また、クリスマスやバレンタインの限定商品も販売していますが、手間のかかる商品設計になっています。しかし、 本当にかわいくて本当においしい商品であれば、クルーは自信を持ってお客様にお勧めしてくれます。会社としてもとびきりかわいいポスターを作って、精一杯 のプロモーションをします。ホスピタリティマインドの下に会社全体が一体となり、自信を持ってお客様に商品や空間をお届けすることができれば、必ずお客様 はそのバリューを感じてくれると思います。安易に価格を下げて勝負をすることよりも、お客様にとってのバリューをいかに高めるかにこだわりながら、頑張っていきたいと思います。


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