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SC業界におけるCS・ES活動の深化

三菱地所リテールマネジメント株式会社

MARK IS みなとみらい

http://www.mec-markis.jp/mm/


株式会社東急モールズデベロップメント

たまプラーザ テラス

http://www.tamaplaza-terrace.com/


※当記事は2016年1月21日の「SCビジネスフェア2016」でのパネルディスカッションをもとに、本誌編集部が編集したものです。

2016年1月21日に開催されたSCビジネスフェア2016にて、弊社MS&ConsultingではMARK IS みなとみらい、 たまプラーザ テラスの2施設よりパネラーをお招きし、「SC業界におけるCS・ES活動の深化」と題したパネルディスカッションを行った。当日、パネラーの方よりお話のあった「お客さまにより喜んでいただき、テナントで仕事をされる方々により働きがいをもっていただくために、どのような取り組みをなさっているか」の具体的な事例について、ピックアップしてご紹介する。

地域を盛り上げていくことが運営会社にとってのCS (MARK IS みなとみらい 館長 羽渕 徹氏)

「ライフエンターテインメントモール」をコンセプトとして掲げて2013年6月にグランドオープンしたMARK IS みなとみらいは、日常的なライフスタイル提案を感度高く具現化し、「買い物しなくてもフラッと立ち寄れる店作り」を目指しています。

メインターゲットは、子育て中のヤングアダルトファミリーからその親世代を含む「3世代ファミリー」と設定しており、そうしたターゲットに向けて施設・店舗・イベント・空間をどのように作り、伝えるかということに取り組んでおります。

施設とメインターゲットをつなげるコミュニケーションツールに力を入れています。特に30代の情報収集ツールは開業前のリサーチでスマートフォンと仮説を立て、デジタルコミュニケーションを選択。お客さまが自由な時間に新鮮な情報を見ることができるという状態を実現するために、テナントが毎日24時間いつでも情報を投稿することができるという点を重視して、仕組みを構築しました。

現在こちらのサイトでは、テナントからの投稿が年間1万3000件ほど、つまり1日あたり数十件の投稿がされていますから、当初の狙いであった「いつ見ても新鮮な情報がある」という状態が実現できていると思います。デジタルは、わくわく感をすぐに伝えられることが強みです。

開業前から運営をスタートしていますが、当施設が目指す「フラッと立ち寄っていただける場所」というコンセプトをまずはお伝えしたいということで、開業までは敢えて商品情報を載せませんでした。開業以降も、みなとみらい地区の情報を載せるなど、単なる当施設の営業ツールとしてではなく、地域全体のブランディングツールとして活用しています。

施設面では、パブリックアートやシーティングスペースをふんだんに設けている他、屋上には「みんなの庭」と名付けられた果樹園・菜園があります。これは、MARK IS らしい場所を作ることで、立ち寄っていただく時間を過していただくことが目的です。

MARK IS の立地特徴として、横浜美術館、そしてグランモール公園と隣接していることがあります。1階の吹き抜けを抜けると公園、そして正面には美術館というのは、日本ではまず見られない立地です。しかし、環境や施設だけでは、お客さまと共感することはできません。弊社ではテナントや地域の皆さまと一緒に施設を作る「手作り感」を非常に大切にしています。「みんなの庭」では、毎週収穫できるように作付けをしたり、果物の収穫イベントであればミキサーを持っていってジュースにしてその場で飲んだり。菜園以外にも、収穫が終わった空きスペースを利用してテント張り教室をするなど、毎週いろいろな体験型イベントを開催しています。

このように、お客さまに商品を提供するだけではなく、参画いただいて一緒に作るということが重要だと思っています。情報が氾濫している時代だからこそ、一緒に過ごす時間、一緒に何かを感じられる機会は貴重なものとなっています。そうした価値が感じられる場を提供するということが、弊社のような運営会社にとってはCSの一つであると考えています。

先日も当施設で地元横浜ベイスターズのユニフォームの発表会をやらせていただき、1500名の方がいらっしゃいました。選手が登場するときの応援ソングが流れると、皆さん盛り上がって一緒に合唱するなど、地域の一体感を強く感じられるイベントとなりました。今後もそういう機会をどんどん作って、地域全体を盛り上げていくことが私たちの役割だと思っています。共感できるコンテンツを一緒に作って、街を盛り上げていくということ、そして誇れる街づくりをすることが、施設としてのCSにつながると考えています。

ファシリテーター:MS&Consulting 江端 慎二、パネラー:三菱地所リテールマネジメント 羽渕 徹氏、㈱東急モールズデベロップメント 秋澤 真二郎氏、MS&Consulting 加地 義太郎


野菜や果物の収穫など、毎週いろいろな体験型イベントが開催される屋上庭園「みんなの庭」も、「共感する」ための仕組みの一つ。美術館と公園に隣接するMARK IS みなとみらい。恵まれた立地条件に依存することなく、お客さまと「共感する」ための工夫を凝らしている。


一泊二日研修「テラストリップ」で施設への愛着を高める (たまプラーザ テラス マネジャー 秋澤 真二郎氏)

ショッピングセンターは複数のテナントやサポート企業で構成されていますので、その中で一つのマインドや文化を作っていくことは非常に難しいことですが、お客さまに「この街にあってよかった」と思っていただける施設となれるように、テナント・サポートスタッフの皆さまとマネージメントオフィスが一体となり、テナント会として活動しています。

テナント会の活動として様々な取り組みを行っていますが、本日はその中でも代表的なものを四つ、ご紹介したいと思います。

一つ目は「テラストリップ」という一泊研修で、毎年2月に全テナントの店長さんを集めて行っているものです。店長さんは1年で3~4割は入れ替わりがあり、3年もするとほとんど全ての店長さんが入れ替わってまったく違う組織になるという状況がありますので、「テラストリップ」は3年間で完結する構成にしています。1年目が「ベンチマークにおける刺激を受ける」、2年目が「自店舗づくり」、3年目が「自分のお店にとどまらず、施設全体を考える」といったように、各年のテーマを決めて研修を実施しています。

二つ目は、年間優秀店舗表彰です。売上だけではなく、SC運営に協力していただいた度合いも重要指標としています。なお、優秀店舗として表彰されると研修旅行に参加していただき、星のややザ・リッツ・カールトンで一流のホスピタリティを体感していただきます。

三つめは、覆面調査です。これまではプロ調査員による調査を行ってきましたが、現在はMS&Consultingさんにご協力いただきながら、一般のお客さまにモニターとして参加していただいています。このレポートがあることによって、店舗内のコミュニケーションが促進されています。

最後に、2010年にたまプラーザテラスがグランドオープンして以来、毎年続けている「ランチミーティング」です。これは店長さんと、私どもマネージメントオフィスのメンバーとのランチ会で、趣味や家族の話題といったプライベートなことも、ざっくばらんに話せる場です。このように一度話したことがあると、次に休憩室やバックヤードで会ったときにも気軽に話せるようになったり、何より横のつながりを強くすることができるので、現在も毎月1回取り組んでいます。


<MS&Consulting コンサルタント 加地 義太郎>

たまプラーザ テラス様とのお付き合いは2011年からになりますが、研修講師というよりも、「私を、かなえる場所。」というビジョンを一緒に実現するパートナーとして取り組ませていただいております。

「テラストリップ」の第一の特徴は参加率が非常に高いことで、実に90%以上の店長さんが参加されます。その分、運営には責任も費用も大きい負担となりますが、この研修を通じて生まれる絆や、たまプラーザ テラスへの愛着の強さというのは、他の施策では代替できないものだと感じています。

本日のディスカッションのテーマとして「CS、ES」というキーワードがあります。「CS、ESはビジネスにつながらない(収益を生まない)」とおっしゃる方もいますが、たまプラーザ テラス様では、テナントさんが自主的に企画されるイベントが年間で約500本もあります。こうしたことが実現されるのも、テラストリップのような企画を通じて、テナントの店長さん・スタッフさん一人ひとりの「たまプラーザ テラスが好き」という気持ちがあってこそのことであり、ESを高めることでCS向上、そして業績向上へとつなげていらっしゃる好事例ではないかと思います。

「テラストリップ」として旅行に行くのは年に1回ですが、年4回の店長会の中でも、「テラストリップ」のメンバーでの振り返りの時間を設けています。カスタマーボイスの結果もここでお渡しして振り返りを行います。このディスカッションにはテナントの方だけではなく、マネージメントオフィスの方がチューターとして参加して、議論を盛り上げたり、議論の不明点を解消する役割をしています。このチューターという役割を設けているのもたまプラーザテラス様の特徴で、「テナントさんと一緒に考える」ことが大きなポイントとなっています。

毎年一回、全テナントの店長を集めて行う一泊研修「テラストリップ」。130名を超える店長が集まる大規模研修の運営は負担も大きいが、この研修を通じて生まれる絆や施設への愛着の強さは、他の施策では代替できない。


「テラストリップ」はテナント店長の入れ替わりを考慮し、3年間で完結するよう毎年のテーマが設定されている。


年に4回行われる店長会の中でも、「テラストリップ」で学んだ内容を振り返る時間が設けられている。


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