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【株式会社レデイ薬局】人が育つ環境を整えて「憧れの店舗」を増やす

株式会社レデイ薬局

http://www.lady-drug.co.jp/


『季刊MS&コンサルティング 2011年夏号』掲載
取材:西山博貢、文:高島 知子
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

愛媛県松山市に本社を置く株式会社レデイ薬局は、同じく地域密着型のドラッグストアチェーンを展開していた株式会社メディコ・二十一を3年前に完全子会社化。昨年9月、合併を果たした。組織の統一という大きなターニングポイントにミステリーショッピングリサーチ(以下MSR)やHERB研修を効果的に取り入れた、レデイ薬局の考えと戦略を取材した。

「地域のお客様と向き合う」その気持ちを拠り所に合併

一般小売店やコンビニエンスストアなどで医薬部外品が取り扱われるようになるなど、ドラッグストア業界の競争が激しくなっている昨今、既存の店舗には低価格化やサービス強化などによる一層の差別化が求められている。

地域密着店としてのホスピタリティを付加価値として顧客の支持を集めるのも、他店舗と差別化するひとつの策だ。愛媛県を中心とし、広く瀬戸内圏に197店舗を展開するレデイ薬局も、長らくそうした考えをベースに、大型専門薬局として医薬品を中心に扱いながら接客と相談を重視する方針で、地元の顧客に親しまれている。

店舗外観:瀬戸内圏に地域密着型の大型専門薬局を展開するレデイ薬局は、「治す」を基本コンセプトに、病気の予防も含めた「初期治療」から調剤部門による「最終的治療」まで幅広い「治す」ニーズに対応。


同社は昨年、かねてから子会社化していた同郷のライバルとも言えるドラッグストアチェーン、メディコ・二十一と合併した。レデイ薬局の豊島誠執行役員 人財本部長(右写真)は、この合併について、婚約をしていた者同士がやっと結婚式を迎えたようなものだと例える。「合併までの準備期間はあっても、やはりそれまで経営理念や企業風土を異にしていた別々の会社が融合するのは、容易なことではありません」。

平成20年、自社と同じように地域密着型を掲げるメディコ・二十一との株式交換契約を締結し、その後に子会社化した際には、両者の社員やパートスタッフはもちろん、幹部陣の中にも戸惑いが生じた。それは当然のことだと豊島氏は話す。

「両社はそれぞれのドミナント戦略において、確かにライバルではありました。ただし、互いを倒そうとする敵同士ではなく、同じように地域のお客様と向き合ってより良いサービスを心がけてきた、いわば好敵手。地域のお客様に貢献したいという思いは同じでした。ですから、それを大きな拠り所として『共に頑張っていこう』という意識の統一を目指しました」。

豊島誠氏:メディコ・二十一との合併を経て、本部長の豊島誠氏は「お客様と向かい合う姿勢を共有し、さらに組織の強化を進めたい」と話す。


両社の社員の意見を基に経営理念を策定

二社が合併するということは、経営理念や社訓といった企業の指針も見直すことになる。現在レデイ薬局では、経営理念に「お客様の“健康と美”を追求し、“喜びと感動と安心”を提供する企業」、そして「社員の成長と豊かさを実現し、地域社会と地域の人々に貢献する企業」を目指すと掲げている。この理念には、社員一人ひとりの気持ちが込められている。社員の思いを汲み上げながら議論を重ね、経営幹部が言語化したものなのだ。

経営理念策定の経緯について、豊島氏はこう話す。「本来、経営理念は経営者が作るものだと考えています。経営理念とは、企業の存在意義である地域社会貢献、福利厚生、利益追求という3本柱の上に立つ、それぞれの会社の顔。これは企業の哲学であり、憲法です。ただし、合併という大きなターニングポイントを社員一人ひとりが受け止め、さらなる飛躍につなげていくためには、それぞれのDNAを活かすことが大切だという社長の判断から、『どんな会社にしたいか』という意見を両社の社員から集めたのです。それらの意見を基にしながら、最終的に経営幹部で新しい経営理念を形にしていきました」。

合併は経営陣が決めたことだと受身の姿勢になるのではなく、それぞれの社員に合併をポジティブに捉え、会社に対して積極的に関与してほしい。そんな思いを込めて募集した意見には、突拍子もないものはなく、不思議と一貫性が見られたという。これは、両社の以前の経営理念が各社員に浸透していたこと、さらに両社の理念にも相通じる部分があったことの証明にほかならない。

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感動を提供するには、感動を知らなければ

「“喜びと感動と安心”を提供する」という理念は、合併前のレデイ薬局でも最も重視していた考え方だ。「感動をお客様に提供するためには、そもそも社員が感動を体験し、どういうものが感動の提供になるのかを理解していなければいけない」(豊島氏)という考えが、同社の社員教育のベースになっている。

「私たちの店舗に来られるお客様は、不安や悩みを少なからず持っています。そこで、適切なカウンセリングを通して、CIS(顧客感動満足)を提供するのが私たちの命題です。そのためには、EIS(従業員感動満足)は欠かせない。共に働く仲間同士での気遣いや、ちょっとした要望や変化に気づけるかどうかは、個人の感性の問題です。さらに言えば、職場でのそうした感性を磨くには、そもそも前向きに仕事を楽しめていることが前提になる。社員研修は、いずれもそこまで根本的に考えた上で組み立てています」。

これは、レデイ薬局の創業時の精神をそのまま引き継いでいる社訓にも通じる姿勢だ。社訓では、「相手の中に自分を生かし今日一日喜びを感じて生きていきま

しょう」と謳っている。「ここで言う相手とは、お客様だけでなく、上司や部下、パートスタッフも含まれます。相手にホスピタリティを最大限働かせられる姿勢にならなければ、陳列やPOPなどのテクニカルな研修を実施しても理念の実現には至りません」。

その姿勢づくりに活かしているのが、MSRとHERB研修だ。子会社化を経て、まだ組織が安定しない時期に導入し、3カ年計画のちょうど丸1年が経過した。1年目はパイロットエリアとした香川県の28店舗に毎月、その他の店舗では隔月でMSRを実施し、社員の自発的な姿勢を促すのに効果を発揮しているという。

HERB研修風景:「レデイ薬局の強みは相談薬局であること」と豊島氏は話す。お客様にとっての相談薬局であり続けるためには、経営理念の体現が最も近道。業績は、理念を大切にした結果ついてくるものだと日々伝えている。


HERB研修風景:同社には、「相手の中に自分を活かし今日一日喜びを感じていきましょう」という社訓がある。これはEISとCISを追求する姿勢を表す言葉であり、同社ではこの考えを具現化する手段としてHERB活動を位置付けている。


図表「パイロットエリアのMSR総合得点推移」:
パイロットエリアとして毎月MSRを実施した店舗では、点数がグラフのように変化した。MSRから得られるお客様の意見を基に店長とスタッフがディスカッションを行いながら、定量的な成果にも目を向けている。


「HERBの取り組みは、経営理念や社訓を体に浸透させて、日々の行動へ具現化するためのツールとして大いに役立っています。特に、これまでESやCSを模索しながら独自に工夫していた店長たちにとって、HERBの内容は本部や他店舗との共通言語のような感覚になっています」と、豊島氏は手応えを話す。


研修を通して店長のリーダーシップを育成

また、MSRからはお客様の率直な声が分かるので、現場の本当の状況を把握できると同時に、大きな刺激になっているという。「スタッフが仮に8時間勤務だったとしても、一人のお客様の滞在時間は10分程度。その10分でどれだけ満足していただけるかが勝負です。これは常日頃から強調していたことではありますが、MSRを通して、エリアをまとめるブロック長から店長へ、店長から社員やパートスタッフへと実感を伴って伝えることができているようです」。

パイロットエリアの店舗の中でも、特に変化が見られた店舗では、「店長の成長が著しかった」と豊島氏は目を見張る。お客様の声を店長が受け止め、それを共有しながらスタッフと本気で向き合っていく中で、店長のリーダーシップが発揮されていく。また、同時に一人ひとりの社員やパートスタッフにも自主性が生まれ、店舗全体が一丸となり、さらなるCSを目指して向上心が高まるという好循環が生まれているのだ。

また、店長がリーダーシップを発揮することは、指示する側とされる側というように本部と現場との間に発生しがちな壁を打ち砕く要因にもなっている。

2011年3月、同社は初めての成果発表会を行った。豊島氏は、その様子を「現場の社員やパートスタッフにスポットが当たる、アカデミー賞の会場のようなものだった」と語る。普段、現場と接することが少ない本社の内勤社員も一部見学に訪れたが、活気のある現場スタッフの様子に大きな刺激を受けていたという。「来年は、何とか時間を割いて、内勤社員の全員が見学できるようにしたい」と豊島氏。

陳列やPOPなどのテクニックを教える前に、自らが何をすべきかに気づく感性を磨くことが先決だと豊島氏。HERB研修は、そうした姿勢作りに大いに役立っているという。


これからHERB研修の二期目を迎えるにあたり、同社は全スタッフにHERBの理解を促す考えだ。「経営理念を浸透させるツールとして捉えているので、HERBを体得することは経営理念に沿った行動をすることと同義だと思っています。また、すでに成果が現れているパイロットエリアの店舗では、より実績につながるような動きを求めたい。ESにばかり注目すると、ややもすれば馴れ合いになるおそれもありますが、目指すべきはCIS、その結果指標としての業績を意識しながら、他店の憧れの店舗になるようにフォローしていきたいと考えています」。

組織活性化をテーマとするHERB研修。役職に関係なく、店長とスタッフが一緒になってお客様やお店のことを真剣に語り合う場になっている。スタッフの皆さんの積極的な姿勢が目立つ。


他店の目標となる“憧れの店舗”が増えれば、それ自体がレデイ薬局の強みになると豊島氏は強調する。「HERBが現場に根付くように内製化を進めながら、自ら気付く力が養われる環境を整えていきたいと考えています」。

成果発表会で発表を行った店舗で、スタッフの発案から売り場を「買い場」と表現している店舗があった。お客様目線に立たなければ出てこない言葉である。意識の変化は、そんな細かなところにも表れてくるのだ。


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