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失われることのない美容道の本質

Hair Studio Active

SPC Japanウェブサイト:http://www.spcjapan.com/


『季刊MS&コンサルティング 2010年秋号』掲載
取材・文:西山 博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

東京都足立区にヘアサロン3店舗を展開するHair Studio Active(以下、アクティブ)は、スタッフのチームワークに定評がある人気の美容室だ。2009年5月よりミステリーショッピングリサーチを導入し、お客様の声を人財教育に活かしている。「美容業界において技術の伝承と人間力の向上によって経験値を積み上げていく様は、『美容道』と表現するにふさわしい」と話す代表の小松りか氏に、これからの美容室経営の在り方について伺った。

美容業界の本質

美容業界の楽しさは、お客様に直接喜んで頂けることにある。そこに「お金では買えない感動や嬉しさがあり、お客様が嬉しそうに帰っていくのを見ると力が湧いてくる」のだという。個人の売上も店の売上も分かりやすい実力主義の世界だが、「企業でありながら、大家族。個人も大事だし、チームも大事」というアクティブのスローガンは、「自立と相互」だ。それは、後述する「教育」への想いから来ている。実力主義だと技術力の高いスタイリストが技術を抱え込むようになり、技術の伝承が進みにくい。技術も想いも閉じ込めずに共有・伝承していけるようなスタッフ間の家族的な愛情や、お客様との心と心のつながりといった人間味が、美容業界の本質だと小松氏は話す。


生産性向上のポイントは教育

企業化において重要なのは生産性を高めることだが、美容室における生産性向上のポイントになるのは、アシスタントがいかに早くスタイリストになれるかを左右する「教育」の一言に尽きると小松氏は言う。必要な教育は2種類あり、技術教育と人間教育だ。

技術の伝承の背景に絶対的に存在するのは、師弟関係だという。「美容業は、どんなに企業として業態が進化していっても、美に対する専門性や技術は常に要求され続ける。その感覚はまさに『美容道』と呼ぶに等しいと思います。美容の技術は、一度身に付ければどんなところでも生きていけます。血のにじむような努力をして身に付けた技術を弟子に伝承し、支え合う。その感覚が大切です」

技術力は売上にも大きく関わってくる。似合わせの技術が高いと常連になってくれるお客様が増えるが、その裏には、自分の技術に対する自信が必要だ。「提供する商品やサービスが本当に良いものだと思っているからこそ、それをお客様に提供したい、喜んでもらいたいという自然な気持ちでお客様にお勧めができる。経験値が上がってくると、確実に売上が出せるようになってきます」

サロンスタッフは技術力を競うコンテストにも参加し、楽しみながら技術を磨く。


生産性向上のポイントは教育

また、商売として成立させるには1時間以上一緒にいるお客様にファンになって頂く必要があり、そのために人間力は必要不可欠だ。アクティブでは、人間力を相手の感情を感じ取ることだと捉えており、それを磨くためにミステリーショッピングリサーチ(以下、MSR)を使っている。「お客様の声が一番心に沁みるものですから、人間力を磨くためにMSRは非常に役に立ちます」と小松氏は言う。

以前、MSRのレポートで「頑張ってほしいスタッフさん」に名前が挙がった女性アシスタントがいたという。レポートには、「黙ってもくもくとカラー剤を塗っていたのが、少し事務的に感じて残念でした」と書かれていた。当初はその結果に悩んでいた彼女だったが、真摯に受け止めて努力した結果、3ヵ月後のレポートでは「とっても明るくおしゃべりをしてくれました」と書かれた。アクティブではこうした中長期的な変化をしっかりと覚えておき、適切なタイミングで確実に褒めることによって自主的な改善努力を促している。このようにして接客対応のレベルが上がってくると、アシスタントに対してデビュー後の指名を予約して下さったり、デビュー前にカットを任せて下さるお客様も現れるという。

アクティブでは約2割のお客様が新規客だが、美容業界は独立する人が多く、出産や転職などによって辞めざるを得ないこともある。そのとき、既存のお客様がお店に魅力を感じて頂いているのか、スタイリスト個人に魅力を感じて頂いているのかによって売上への影響度合いが違ってくるが、お店に魅力を感じて頂けるようにするのが、企業化の一つのポイントであると小松氏は話す。人間教育がそれを支える土台となるのだ。

この両面において能力が身に付いた時、初めてスタイリストとして稼ぐことができる。そして、学んできたことを後輩に教え、新しく人が育っていく。その流れを安定化させることが、美容業界で必要とされることであると小松氏は考える。


教育を支えるのは家族のような絆

美容師への道のりは決して楽ではない。「美容師は朝練もやるし、夜練もやりますが、練習をしたら必ず実力が付きます。しかし、人のモチベーションには波がありますから、努力を継続するためには、本当に大変な時こそ頑張れないといけません。その道のりを支えるのは、教育システムなどの工夫も必要である一方、一番は互いに支え合うことのできる仲間の存在です」

また、売上を達成するにもチーム力が必要になるという。「月間200万を稼ぐスタイリストには4人のアシスタント、100万を稼ぐスタイリストには2人のアシスタントが付きます。アシスタントは、スタイリストがそれらの目標売上を達成するためのアシストをする役割です。一人では到底務まりません。つまり、チームで協力しなければ売上は達成できないのです」と小松氏は語る。

美容業界の生産性向上の鍵となる教育、そして売上達成のためにも、仲間との信頼関係や家族のような絆があるかどうかが重要になってくる。それが、企業化が進んでも失われることのない、美容道の本質と言えるのかもしれない。


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