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QSCへの特化戦略で顧客ロイヤルティを復活

株式会社はなまる

東京都中央区銀座3-15-10 菱進銀座イーストミラービル7F

会社ウェブサイト:http://www.hanamaruudon.com/


『季刊MS&コンサルティング 2009年秋号』掲載
取材:西山博貢、文:藤平吉郎
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

素材にこだわった品質の高いうどんを圧倒的な低価格で提供する「はなまるうどん」。マスコミに大々的に取り上げられたこともあり、たった数年のうちに北海道から沖縄まで250店以上を展開する急成長を遂げた。一見、順風満帆に思われる同社の軌跡だが、実は業績悪化が止まらない時期があった。この危機を乗り越えるため、同社はQSCへの特化戦略の道を選ぶ。その経緯と取り組み内容を、河村泰貴社長に伺った。

原点に帰るため思い切った改革を断行

はなまるうどんを香川県で創業したのは2000年。翌01年に株式会社はなまるを創業し、02年に東京に進出。これが大ブレイクし、業容を急速に拡大した。しかし、04年~05年には売上や客数が落ち、業績もダウン。巻き返しを図ろうと季節フェア商品を提供したものの、状況は変わらなかった。「この頃のお客様アンケートでは、接客やオペレーションに対する不満がある一方、これからも、はなまるの美味しいうどんを食べたいという声が多かった。つまり、お客様ははなまるに飽きたわけではない。うちのサービスが良くないのが原因だと気付きました。ここで思い切った取り組みをしないと生き残れない、と判断した」と河村社長(当時は経営企画担当)は言う。

トッピング作業が増えクイックサービスに支障を来たしていた季節フェアを中止。新店オープンの際には無料券を配っていたが、まだオペレーションが安定していない時点で来店客数が著しく増えると現場の混乱を招き、ブランドの毀損につながることもあるため、配布を止めた。また、それまで社員による覆面調査を実施していたが、表面の現象だけのレポートで、スーパーバイザー(SV)の臨店調査との違いが明確でなかったため、それも中止した。

河村泰貴社長


接客やオペレーションの基本の徹底が奏功する

その上で、接客やオペレーションの原点に帰ろうと、06年にQSC(クオリティー・サービス・クレンリネス)に特化する戦略をスタート。まずは200項目もあった臨店チェック項目を20に減らし、店長はQSCを上げることに専念するためにスタッフをシフトリーダーとして育成することを目標として掲げた。

その狙いを河村社長は、「チェックだけが目的であれば200項目以上必要ですが、基本を徹底させるためにQSCの優先順位の高い20項目に絞り込み、店長がやるべきことをクリアにして、確実に改善するようにしました」と説明する。

また、目標基準を明確にするため、臨店調査により店をABCDの4段階で評価するグレーディング制度を導入。標準レベルをBランクとし、全店がBランク以上になることを目標とした。

これらの取り組みにより、アルバイトのトレーニングがしっかりできているグレーディング上位店の売上伸長率が上がり、売上と客数が既存店で対前年比100%となり、ようやく底を打った。

「はなまるのクオリティを決めるのは、店長のスキル」(河村社長)と、6年前から店長オペレーションコンテストを実施。年に1回チャンピオンを決めるが、その目的は、店舗スタッフ全体のレベルアップにある。


常に目標を更新し続けることでマンネリ化を打破

こうしてある一定の水準に達したところで、河村社長はさらに上を目指した。

「世の中の平均になったところで満足はできない。人間はマンネリ化してしまうので常に目標を与え続けないといけない」と、07年に「顧客満足世界一を目指す」というキーワードを掲げた。これは、日本のカジュアルレストランの接客レベルは世界一のレベルにあることから、日本一イコール世界一という意味だ。

そのための方策を探していた時に、MS&Consultingのミステリーショッピングリサーチ(MSR)の存在を知る。過去の経験から覆面調査には抵抗があったが、そのMSRのやり方において「点数がメインでなく、褒めること。そして、お客様の生の声にフォーカスするため、ミーティングで落とし込まなければ意味がないという点に意義を見出した」(河村社長)ため、導入を決意。

ただし、全ての店舗ではなくAレベルの店だけを対象に、07年の秋からMSRを実施。セミナーも好評で、店長の意識も高まった。08年にはAを2ヵ月連続で取るダブルAの店舗を対象にしたところかえって意欲が高まり、当初の10店から30店に増え、現在は58店となっている。


目指すは、満足の先の感動レベル

「私たちが目指している顧客満足世界一になるには、もの凄く時間がかかります。店長だけでなくアルバイトも含めて全員が、お客様に喜んでもらうにはどうしたらいいのか、お客様は今どんなことを感じていらっしゃるのかなどということに、本当に敏感にならなければならない。満足には届いても、感動のレベルにはまだ達していない」と、河村社長は語る。

現在の顧客満足世界一の定義は、「全店、全時間帯で地域一番店になること」。今、店長が勤務する時間帯の達成度は高いが、店長がいない時間帯のQSCレベルを上げることが目下の課題である。そのための取り組みとして、08年から自社で四半期に一度、CISセミナーを開催。店長や社員、アルバイトのシフトリーダーを対象に、褒めることの大切さや、店舗のQSCを決定付ける店舗コントロールというポジションの重要性などを教えている。

QSC特化戦略を打ち出して早3年。はなまるうどんは着実に実績を積み上げ、さらなるステップアップに向けて進化を続けている。


2009年7月9日(木)に行われたCISセミナーには約200名が参加し、6~8名のグループに分かれてワークを行い、「ホスピタリティ新聞」を作成した。 CISセミナーはMS&Consultingの研修プログラムやミステリーショッピングリサーチ、社内報とも連動している。どの手段においても、QSCを軸とした顧客満足の重要性を一貫して伝えている。


社員やアルバイトを対象に、08年からマイスター制度(計量器を使わずに決められた時間に決められた量を取れる技術の認定)を導入。うどん、おにぎり、天ぷらのマイスターに認定されると、マニュアルで決められた計量作業を省くことができる。タイムロスを少なくすることと、モチベーションアップを狙いとする。


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