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自ら考えて模索する経験が、業態開発を成功に導く

株式会社バイタリティ

株式会社バイタリティ

東京都中央区日本橋小伝馬町14-5 メローナ日本橋705

会社ウェブサイト:http://ameblo.jp/vitality-bancho/

『季刊MS&コンサルティング 2011年夏号』掲載
取材:渋谷行秀、文:高島知子
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
外食産業における事業拡大の命題の一つに、業態開発が挙げられる。成功を収めれば、新規顧客の開拓や収益の安定化など大きな利点が見込めるが、当たる確率は100分の1とも言われるほどだ。自ら企画開発した業態で次々と繁盛店を育ててきた株式会社バイタリティの岩田浩代表取締役(右写真)に、業態開発の成否を分けるポイントを伺った。

料理長と共に新業態を社長に提案

中華料理店の調理場、電化製品の営業を経て97年に株式会社ラムラに入社されましたが、当時から将来は独立しようと考えられていたんでしょうか。

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株式会社バイタリティ代表取締役の岩田浩氏。中華料理店や電化製品の営業職を経て1997年に株式会社ラムラに入社。退社後、株式会社バイタリティ設立。

ええ。調理場の経験はあっても、外食産業に関する知識や飲食店の運営といったことは分からなかったので、当時から教育制度が充実していたラムラに入社しました。その前の営業職はフルコミッションだったので、手応えはありましたが、利益の追求だけを命題としている企業体質には疑問があったんです。20代も半ばになり、一生を賭けて打ち込める仕事をと思ったときに浮かんだのが、やはり飲食業でした。

その頃、ラムラは鳥元や土風炉など次々と新業態がオープンし、非常に勢いがある時期でしたね。

そうですね。それこそ、数カ月単位で新店に駆り出されるという目まぐるしさでしたが、新店オープンは勉強になるので、むしろ自分から希望していました。気付けば鳥元 馬喰町店の調理場責任者になり、鳥元 西新宿店の立ち上げの調理場責任者へ、そして店長へとなっていきました。

その後、エリアマネージャーになったのですが、自分は現場の方が性に合っていたようですね(笑)。ただ、さまざまな地域や店長の特徴を見るのは、その後の仕事に大いに参考になりました。

ラムラ在職時代に企画開発された韓国料理の土古里や韓豚屋は、どのような経緯で立ち上げることになったんでしょうか。

元々、上野に大型の韓国料理店を出店しようという計画があり、その担当に立候補したのです。ただ、私は当初予定されていた韓国家庭料理ではインパクトが弱いと思っていましたし、いきなり100坪単位の新業態店を回すのも無理があると感じていました。そこで、新業態店の料理長として雇い入れていた韓国人の方と一緒に、韓国料理を切り口とした軌道に乗せられる業態を検討したのです。

今でこそ韓国料理は人気ですが、当時はまだメジャーではありませんでした。だから、韓国に行ったことのない人に韓国料理といってもおそらく響かない。お客様は、我々が期待するほど店選びで冒険はしてくれないので、分かりやすい売りが必要だと考えました。

そこへ持ってきたのが、焼肉です。これなら受け入れるハードルがぐっと下がると見込みを立てました。私もその料理長も焼肉店の経験はまったくなかったのですが、それぞれ独学で知見をかき集めながら、低予算でちょうど良い規模の物件を見つけて、社長を説得したのです。

そうして立ち上げた土古里は、韓国×焼肉という当時では珍しい切り口が受けて、オープン直後から予想以上の客足になりました。十分に目が行き届く規模の店で、研修も重視しながら運営したことも、成功の要因だったと思います。その後にオープンしたサムギョプサル専門店の韓豚屋も非常に好調で、ラムラの中で売上が振るわない店を業態変更するなどして店舗数が増えていきました。厨房関係や内装などの業者さんにうまくイメージが伝わらなかったときは、3日間予定を空けてもらい、皆で韓国に視察に行ったこともありましたね。

新業態開発の定石は、売り、目玉商品、認知ルート

08年に独立され、株式会社バイタリティとしてオープンした鳥番長と日本焼肉党も、厳しい経済環境下ながら盛況です。岩田社長が考える、業態開発を成功に導く定石とは何でしょうか。

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鳥番長のコンセプトは“昭和の居酒屋”。店名を聞いただけで鳥料理だと分かる明快さも重要。

ポイントは、三つあります。一つ目は、売りが明確であることです。店名や外観から何の店なのかが伝わることが重要ですね。韓豚屋なら韓国に馴染みのない人にも韓国料理、豚焼肉、韓国屋台という切り口でアプローチできますし、現在バイタリティで運営している鳥番長は、その名の通り鳥料理の店だとすぐ分かります。一時期、創作居酒屋が流行したことがありましたが、私の考えではよほど有名な料理人でもいない限り、特 徴を訴えにくいのではないかと思います。

二つ目は、分かりやすく魅力的な目玉商品を用意すること。三つくらいあると理想的です。鳥番長だと、炭火七輪焼き、鳥の丸焼き、そして鳥の丸なべです。一度には頼みにくいボリュームなので、次はこれを試してみようとリピートを見込めるのです。

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夜のメイン料理、鳥一羽を使った丸焼き。

三つ目は、認知拡大のルート設計です。鳥番長はオフィス街にあるので、ランチに力を入れています。収益性が低いランチは軽視されがちですが、いわゆる“よく行く店”のローテーションに入れれば、そのお客様に夜の来店を促すことができます。ただ、そのためには夜とは別にランチのコンセプトを持つべきですね。鳥番長では、鳥骨ラーメンやセット用のミニ唐揚げ丼など、昼に食べたいメニューを別途用意しています。

当社は出店していませんが、一見さんが多い新宿や渋谷などの大繁華街では、また違う認知拡大ルートが必要だと思います。

焼肉や焼き鳥といった昔からある業態ですと、その分競争も激しくなってくるのではないでしょうか。

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スタッフ集合写真。お客様との距離も近く自分らしさを出した元気な接客を行っている。

確かにそうですね。ポイントは、いかに常連さんを捉えるかにあると思います。繁華街ではなく、固定客がつきやすいオフィス街を選んでいるのもそのためです。業態自体の目新しさはありませんが、定番業態は常連さんがつきやすく、それだけ長持ちするというのが私の持論です。

具体的な工夫としては、まず陳腐化しないようにメニュー替えを頻繁に行うこと。それから、コンセプトをぶらさないこと。鳥番長のコンセプトは“昭和の居酒屋”ですから、そんな時代に出来合いのポテトサラダはないわけなので、手間はかかりますが、芋をふかすところから店で仕込んでいます。また、常連さんとのコミュニケーションも大切です。新規顧客を軽視するわけではありませんが、スタッフの教育も常連さんを重視して行っています。

現場主義の実践でスタッフの自主性を引き出す

既存業態の新店オープンと違い、新業態の立ち上げは、運営スタッフに不安や戸惑いが生じることも少なくないと思います。スタッフとの関わりについては、どのような部分を心がけられているのでしょうか。

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1号店「鳥番長」。日本橋・馬喰町に2009年2月にオープン。収入が下がるにもかかわらず、かつての部下達が付いてきた。現在のバイタリティ社員16名の内、13名がかつての部下

新業態店をスムーズに運営するには、そこで働くスタッフが納得していることが最も大きなポイントになります。また、業態も「社員が心からやりたい」というものでないとうまくいきません。ですから、社長や店長がすべて決めるのではなく、できるだけ現場の意見を盛り込むようにし、スタッフにも企画・運営に参加してもらうのです。現場から離れている社長の言う通りにするより、よほど成功の確率が高く、スタッフのモチベーションも上がります。

たとえば、メニュー一つ開発するときも同じです。シーズンごとのメニューや細かい業務の改善などは、基本的に現場の意見を尊重し、私はそれを受けて判断をするというスタンスを取っています。そうするとスタッフに「自分の店だ」という思いが生まれ、オーナーシップも育ち、どんどん活気がある店になっていくのです。

お話を伺っていると、業態開発の成否にはいくつかの定石と共に、それを手がける人の志向性も大きく関わるのではないかと思えます。指示を待つのではなく、自ら考えて動ける人、またそういう人材を育てられる人が適任だということですね。

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「日本焼肉党」。2010年8月にオープンした2業態目、大衆肉酒場「日本焼肉党」は浅草橋で10坪の2階建て物件。山形牛1頭買いがウリ。計20坪で初月1090万円を売った(写真は日本焼肉党:浅草橋)。

そうですね。さまざまな業態の立ち上げを経験してみて、自分が状況をどう捉えるかで、次の一歩も最終的な結果も大きく変わってくると思いました。それはきっと、経営者でも、いちスタッフでも同じではないでしょうか。

だから、私は自社の社員に対しても、それぞれの自主性を大事にしてもらいたいと思っているんです。もし社員から新業態の提案があれば真剣に検討しますし、独立志向の強い人が多い業界ですから、将来はFC化もあるかもしれない。ただ、独立するのなら、明確なビジョンを描き、相応のリスクを背負って勝負を賭けるべきだと思いますね。自分も歩んできた道ですが、やはりそれが飲食業の王道なのではないかと思っています。

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