【第5回外食クオリティサービス大賞レポート】 “任せる”店舗運営で前年比2倍の業績を実現



有限会社森口

本社所在地:静岡県浜松市松城町200-15 Tビル2F
サイトURL:http://www.tororoya.com/
設立:1996年8月8日/資本金:300万円/店舗数:直営4店舗
経営理念:『食』という字は『人』を『良』くすると書きます。身体に良い安全な食材を使った手作りのお料理と、気持ちの良い笑顔の接客で、お客様が心地良くお食事をしていただけるよう、スタッフ一同心がけております。これはお客様にとって『良い』ことですか?常にそう考えることが私たちの仕事です。
展開する全ブランド:とろろや、自然のごちそう きなこ


※記載されている会社概要や役職名などは、講演(掲載)当時のものです。ご了承ください。

静岡県浜松市でとろろ料理専門店「とろろや」、自然食居酒屋「きなこ」を展開する有限会社森口は、前回の外食クオリティサービス大賞でも最終プレゼンテーションに進み、準賞を受賞している。


前回は、社長の森口愛氏が築き上げた事業をさらに発展させるため、幹部からアルバイトスタッフにまで立場に合った権限を委譲する一連の取り組みを中心に発表。今回のプレゼンテーションでは、さらに次元の高い権限委譲のケースとして、3店舗目の「とろろや」となる「とろろや三方原店」の企画から開店・運営を森口氏に頼らず行ったことが紹介された。昨年2月に開店した三方原店は、驚くべきことに、2010年の同社の売上総利益を前年対比194%に押し上げる原動力となった。


2009年の取り組みで、同社は全スタッフに対し、経営理念である「食とは人を良くすると書く。食を通じてお客様に心地良さを提供すること」の理解・浸透が評価された。今回、商圏分析から店舗レイアウト、一切の教育に至るまでの新店企画が任されたのは、こうした背景があってこそだった。三方原店・店長の小川氏は、「どの選択がとろろやらしいかを女将抜きで判断していくことは、これまで自分たちが会社をどう捉えていたかを試されているようなもの。責任重大でしたが、守るべき理念と、効率化するべき仕組みの両方を熟考し、常に女将だったらどう考えるかを意識しながら取り組みました」と話す。

特に重視したのが、新人教育の仕組みだ。概念的な経営理念を行動に反映するのに効果的なOJTとして、一人の新人に対して一人の教育担当者を定めた。そうすることで、マニュアルだけでは理解しにくい属人的な企業風土を伝え、教育担当も自身の行動を振り返ることで、互いに成長する機会とした。


開店に漕ぎ着けた三方原店は、想定の1.8倍もの顧客が来店するという好調な滑り出しを見せたものの、大きな課題が発覚。顧客アンケートの結果、本店に比べて満足度が明らかに低かったのだ。一見、サービスに落ち度がないようでも、店全体に顧客が期待する“とろろやらしさ”が浸透していなかったことが原因だった。

そこで、新しいスタッフが少しでも早く“らしさ”を身に付けられるように、スタッフ間で「とろろやテスト」を企画。顧客の指摘に対しては改善内容を返信し、日々のチェックを心がけた。時間のなさを補う電子日報の導入なども奏功し、CSは急激に改善、前年対比2倍という業績を成し遂げたのだ。


スタッフに指揮一切を任せて見守り続けた1年を振り返り、初めはつらかったと森口氏は語る。「でも、客として訪れた新店で直接指導をしていないスタッフを見たとき、しっかり“とろろや”の顔をしていると感じました。そのときは本当に嬉しく、任せるという方針が間違っていなかったと実感しました」。その言葉に、今後のさらなる発展がうかがえた。

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