【第3回外食クオリティサービス大賞レポート】 自立型全員経営の組織作り



有限会社キープ・ウィルダイニング

URL:http://www.keepwill.com/
本社所在地:神奈川県海老名市東柏ヶ谷3-1-13-2F
設立:2004年10月10日/資本金:300万円/店舗数:6店舗(炎家、八氣、夢丸、寅次郎、勝男、魚健)
経営理念:
(1)お客様に最大限の幸せの時間提供…「幸せだな」と思ってもらえる事に最大限の努力を尽くす。飲食のエキスパートとなり妥協のない開発と提供をする。
(2)社員を輝かせ物心両面で幸せにすること…良い思考を身につける。想いを実現させる。社員とその家族を大切にする。
(3)国のためになる企業となる…感謝心・愛国心を身につけ日々感謝できる企業となる。何かしてもらうか。ではなく何ができるのかを考える企業となる。虚偽や不正を働かず誠実な企業となる。小さくとも国のためになる事に尽力できる企業となる。


※記載されている会社概要や役職名などは、講演(掲載)当時のものです。ご了承ください。

多店舗展開を進める時に誰もが悩む、「全店に目が届かなくなること」がもたらす業績悪化やサービス力の低下―。
有限会社キープ・ウィル ダイニングも同じ壁に突き当たっていた。そこから始まる逆転劇の鍵は、主体性を土台とした自立型組織の実現であった。主体性を引き出し成果につなげる仕組みが、昨年対比122%の好業績を生み出した。昨年、理念を変更した有限会社キープ・ウィル ダイニングの発表は、「自立型の組織」を実現するためのヒントに溢れている。

理念・価値観

これまでベースにしていた「一斉独立」を昨年変更し、「夢溢れる地域社会の実現」をベースに、合宿により幹部メンバーで行動規範を策定した。企業活動の全ては理念と行動規範によって行われる。社長が元々カリスマ性の高い人物であったが、その考えを詳細に明文化することで、社員のよりどころとなっている。さらに、理念会、志塾、店長塾等、アルバイト・社員・店長向けに社長が自ら研修を行い、価値観の共有を行っている。


経営計画

誰にでもイメージしやすいように、詳細に立てた経営計画を全社員の名前が入った小説風に表現する等、ビジュアライズにも力を入れている。名前が入った組織図を用意することで、埋まるポストと空いているポストを明らかにし、社員に求める像を示している。経営計画に対する社員の共感度は高い。


業態コンセプト

地域一番店を目指すという理念から、出店はローカル立地に絞っている。地域では他社の追随を許さない状況になってきており、それと連動して業績は好調。ローカル立地では客単価2000~2500円の居酒屋が主流となってきているが、レストラン型のローカル居酒屋を目指し、客単価3500円を実現させている。

業態開発に向けては、部門会というプロジェクトを立ち上げ、改善運動をベースに磨きをかけている。商品開発班ではシーズンの3ヶ月前からメニュー開発を行い、DMの反応率によってメニュー開発の成果を検証している。また、本部も一緒になって「一斉法人営業」を行い、地域との連携を強めている。各店舗の月次メニューは、料理班がメニューコンテストを毎月店舗内で開き、テストを行った上でリリース。ローカル業態として様々なニーズに応えるためメニューをあえて絞り込まない等、立地特性を活かしたメニュー開発を行うようになってきている。本部主導で業態開発を行うのではなく、現場の業態開発力を伸ばす方針だ。


オペレーション・サービス

週に1回必ずミーティングを開き、オペレーションの改善を行う仕組みとなっている。また、月に1回の社員総会にはアルバイトも含め全社員が参加しなければならない。採用時から既に社員総会への参加を条件にしているため、必ず全メンバーが出席する。

優秀なメンバーはあえて外部研修や他の飲食企業に修行に行かせるなど、視野を広げる教育を行うことで人材のレベルを高めている。また、慣れないメンバーがいる店に、同年代のベテランメンバーを配属するなどして、組織的に成長スピードを引き上げる工夫も行っている。


マネジメントの仕組み

年2回の予算会議では、社長の立てた草案を基に店長が検討し、ディスカッションによって予算を決定。権限委譲の幅が広く、店長は理念を守り、予算を達成すれば何をしても良いことになっている。予算に対する毎月の目標数字は、店長総会にて店長が全店長・幹部に対してパワーポイントでプレゼンする。それに対し、参加者が細かいところまで互いに意見し合う。達成率はオープンボードで管理され、本部も一緒になって追いかける体質となっている。


販促は本部が仕組み化しており、お店のアンケートから顧客情報を入手・管理し、計画的な販促によってリピーターを増やす仕組みとなっている。それに加えて、販促と売上の理論的な教育も徹底して行っている。また、社員が主体性を持ち、自ら成長しようとする組織風土をベースに、業績管理・組織作り・業態開発・地域貢献等のために数多くのプロジェクト・イベントが行われているが、全てを習慣化し、スケジュールに落とし込んでいる。

09年8月には、創業当時より標榜していた「一斉独立」の制度により創業メンバー5人が独立する。人が抜けるのは大きな負担となるはずだが、理念の実現に近づければ良いと考える、ブレのない組織だ。その徹底振りこそが、社員の主体性を引き出す一つの鍵ではないだろうか。

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