上質を極めた世界観を創り上げ、花嫁を最高に輝かせたい



株式会社トリート

東京都港区南青山3-17-7
会社ウェブサイト:http://www.treatdressing.jp/


『季刊MS&コンサルティング 2013年秋号』掲載
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承下さい。

「日本の花嫁はもっと美しくなれるはず」、そんな想いで、世界中の最旬ブランドを集めるウェディングドレスのセレクトショップ「THE TREAT DRESSING」は、創業10年を控えて多くの花嫁からますます熱い支持を集めている。立ち上げ時からプロデューサーを務める山城葉子氏に、その世界観の構築や維持の秘訣について、また今後の展望をうかがった。

福岡の新ホテル内にドレスショップを立ち上げ

やましろようこ
株式会社トリート 取締役。THE TREAT DRESSINGプロデューサー兼バイヤー。商品の買付や、お店のデザイン、細かいディテールまですべてを監修。2010年にはジュエリーブランド「Joie de treat.」、ユニフォームブランド「grandir by Treat」を発表。「もっと日本の衣裳業界をおしゃれに、華やかにしたい」 その想いでオリジナルドレスブランド「Leaf for Brides」を発表。2012年に独立し、『YOKO YAMASHIRO Designs』を設立。ドレスというカテゴリーに留まらず、多方面で女性ごころをくすぐる世界を創造し続けている。


2005年、株式会社トリートの立ち上げを任される形で、株式会社プラン・ドゥ・シーから出向しました。いちウェディングプランナーから、福岡でのドレスショップの立ち上げ責任者へと、27歳だった私は大きな転機を経験しました。

当社はその頃、全国への事業展開の拡大を受けて、社内に全国のプラン・ドゥ・シーのクオリティを統一するチームを発足させました。私はそのチームに加わることになり、現場を一旦離れ、当社が手掛ける各地域の結婚式場のパンフレットや、ブライダルフェアのテーブルコーディネートからお花までをチームで改善していきました。

その中で2004年、野田((豊加:プラン・ドゥ・シー代表取締役)が福岡に当社初のホテル「WITH THE STYLE」を立ち上げた際、そこでのウェディングにふさわしいパートナー選びに加わることになりました。しかし、ドレスショップについてはどうしても納得できるパートナーが見つからなかったのです。そこで野田に「ドレスショップを立ち上げるから任せる」と言われたのが、当時は困難であると言われたドレスのセレクトショップ「THE TREAT DRESSING」の発端であり、プロデューサーとしての私のキャリアのスタートでした。

立ち上げてからは、「日本の花嫁はもっと美しくなれるはず」という立ち上げ時の想いを胸に、すぐに世界中に買い付けに行くようになりました。ヨーロッパやアメリカには、たくさんの素敵なドレスがありましたが、やはりサイズも違いますし、一度きりの着用を前提として作られていることが多いので、日本でのレンタルに耐えられるような品質ではなかったりもして、こちらの事情を分かってもらうために一つのブランドと何度も何度も話をしながら、進めていきました。

規模が広がる中で迷った“100人の壁”

多くの方に支えていただき、「THE TREAT DRESSING」はこの10月の「ザ・トリート・ドレッシング バーニーズ ニューヨーク横浜店」への出店で全国10店舗目となります。04年当時は、トリートを立ち上げたらプラン・ドゥ・シーにまた戻るつもりでいたのですが(笑)、スタッフや店舗数が増えていくにつれて、「乗った船だから」と腹を括る気持ちになっていきました。今では社員が200人まで増え、新卒採用にも力を入れています。若い男性社員も少しずつ増えており、彼らの「事業を拡大したい」という想いに応えたいとも感じています。


でも、数年前までは、あまり多拠点展開をするつもりはありませんでした。社員数に関しても、“100人の壁”がありました。社員がそのくらいの規模になると、私が描いている「トリートの世界観」を皆で共有し大事にしていくことが難しくなると思っていたのです。

トリートのプロデューサー兼バイヤーとして、立ち上げ当初から私がこだわってきたのは、“女性の誰もがこころをくすぐられる空間づくり”です。ドレスがメインではありますが、それだけでは不十分です。ショップの内装、流れる音楽や香り、お出しする飲み物やグラス、添える砂糖の一つにまで、日本では簡単に手に入らない“手に届きそうで届かないもの”を揃えたい。五感に関わることすべてに妥協をしたくない。それが、かけがえのない日である結婚式で、花嫁さんを最高に輝かせることにつながると思うからです。

そんな気持ちで、小物の一つひとつまで私が選び、ディレクションをしていたのですが、当然、一人では規模的に限界があります。一生懸命に働いてくれるスタッフの姿を見ても、私一人がいなくなって回らないような組織ではいけない、という想いもありました。

そこで、ショップが7店舗くらい、社員が100人程度になったときに、今後について皆でディスカッションをしました。そして、お客さまに求められているのだから、広げられるならそうしようと。その分、トリートの世界観を守るために体制を整えよう、という結論に至ったのです。

“手に届きそうで届かない”花嫁を輝かせる独自の世界観を深く共有

まず、私のイメージを深く共有してくれるチームをつくるために、最初に一人を片腕に、次にもう一人と、世界観を任せられる人を育てていきました。それが今ではプロデューサー室という9名のチームになっており、言葉にならない部分も含めて理解し合える良いチームができていると思います。また、プロデューサー室、各店舗のMD(マーチャンダイジング)担当、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)担当、そして人事などのリーダーが連携し、現場にまでトリートの世界観が浸透するようにしています。各店舗のマネージャーたちとも同様に、密にコミュニケーションを図り、経営戦略のトップとともにミステリーショッピングリサーチの結果を共有したりもしています。

私たちは普段現場にはいませんが、「今シーズン、どのブランドをトリートとして推していくか」をいつも考えながら世界を回っています。「これがトリートの格なんだ」という想いを持って商品の買い付けをしていて、それが最終的にお客さまに支持されるトリートを創り上げているのだと信じています。その想いや考えをプロデューサー室以外のスタッフにも分かってもらうために、具体的には年2回の総会や毎月の社内新聞の発行、各店MD同士のブランドやセールストークの勉強会などを行なっています。また私のブログも、私の想いをスタッフに知ってもらうのに少しは役立っているかなと思います。

社風の継承には、親子制度という独自の仕組みも効いていると思います。新卒・中途を問わず、入社した人に誰か“親”をつけるのです。いわゆるOJTよりも、想いや大切にしたい価値観など、もっと深いところまで面倒を見るようなイメージで、本人が伸びていけるようにフォローしたり、人事と相談してケアをしたりします。

実力次第で、2年目の社員に親を任せることもあります。実力といっても営業成績などではなく、大事なのは、トリートの世界観を理解してちゃんと伝えられることですね。採用時にも、社風とその人自身が合うかどうかを、2時間の面談を4回ほどと時間をかけてお互いを理解していきます。私や幹部の仕事は、お客さまへの姿勢同様、そうやって入社してくれたスタッフにも、ここで働いていることに誇りを感じてもらえる“こころをくすぐられる”ステージを生み出すことだと考えています。

常に最高のクオリティを追求し、ドレス業界の発展に貢献したい

世界を回ってファッションを勉強していくと、私の好みはこちらだけどお客さまはこちらだろう、また学生の方が好むトーンはこのくらいだろう、と感度が研ぎ澄まされていきます。でも、自分を客観的に見ると、商品のバイイングも内装も経営や教育も70点くらいで、突出してはいないと思っています。一つひとつを見れば、もっと感性の鋭いスタッフが当社にはたくさんいます。彼女たちはトリートの財産なので、感性を磨くことをいつも促しています。

今後取り組みたいことは、当社と接点のなかったお客様にアプローチすることです。オリジナルブランド「Leaf for Brides」の展開がその具体例ですが、より多くの地域の方に私たちの想いを伝えられたらと考えています。もう一つは、アジアへの進出です。ごく一部ですが、中国や香港には、わざわざ自分でニューヨークやパリに出向いてドレスを購入される花嫁さんもいます。そういう方々にも、当社のドレスは自信を持ってお勧めできますので、ショップの展開を目指したいですね。常に最高のクオリティを追及していくことで、日本のドレス業界全体のクオリティの向上に少しでも貢献できるような存在でありたいと願っています。

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