ホスピタリティの最高峰を選ぶ S1サーバーグランプリ

『季刊MS&コンサルティング 2009年夏号』掲載
取材:西山博貢、文:藤平吉郎
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

サーバーの認知度アップとモチベーションの向上が目的

飲食店で接客を担当する「サーバー」の日本一を競う第4回S1サーバーグランプリ全国大会が3月8日、名古屋名鉄ホールで開催された。主催はNPO法人繁盛店への道で、これまであまりスポットを浴びることのなかったサーバーの認知度のアップを図ることと、モチベーションを高めることを目的としている。年々、規模が拡大し、飲食業界の注目度が高まっている。

まず、グランプリまでの流れ、仕組みについて紹介しよう。全国からエントリーしてきたサーバーに対して一次審査が行われる。1つが、接客で心掛けていること、将来の夢などを記述する筆記試験。もう1つは、調査員がエントリー先のサーバーを訪ねる訪問審査。覆面ではなく、正体を明かして対面で行うもので、アポイント段階の電話の対応から審査が始まる。調査員が接客を体験し、数々のチェック項目で評価する。筆記と訪問の合計で、成績優秀者が地区大会に進出する。


地区大会は、今年は北海道、東北、関東、東海、関西、四国、九州・沖縄で開かれた。ここでは、審査員と対面で行う規定審査と、大会に集まった来場者の前でのデモンストレーション審査があり、各地区No.1のサーバーが全国大会に出場する。

全国大会は、クレーム対応やお勧めメニューなど「接客8シチュエーション」による規定審査と、サーバーが過去にしたサービスを披露する自由審査により行われる。これを、好感度、ユニークさ、清潔感、信頼度、感動の5つのカテゴリーによって「また逢いたい度」の総合審査により、グランプリが決定される。


気付き度を高めて“また逢いたい”接客を目指す

NPO法人繁盛店への道の柴泰宏理事長に、S1サーバーグランプリ開催の経緯と、その他の活動について、お話を伺った。

「私は株式会社柴田屋酒店の3代目です。飲食店の市場が厳しくなっている中で、何とかしなければと、試飲会、勉強会などを実施してきました。しかし、酒屋で飲食店をバックアップするのには限界があると感じて、仲間を募り法人を立ち上げました。S1の役割は、他流試合です。他社のお店と自分のお店の接客レベルを、客観的に評価するということに意義があると考え、スタートしました」

そして、S1は1位を決めるのが最終目的ではない、と柴理事長は言う。

「大会に参加することで、それぞれのサーバーに気付いてもらいたいからです。チェックシートは全員の手元に戻しています。客観的な評価から、自分に何が足りなかったのかを検証して、明日からの営業活動に活かしてもらいたい。一つひとつクリアしてレベルが上がれば、お店の他のサーバーの刺激となって、その先のお客様の満足につながる。そしてお店の繁盛につなげて欲しい。何より〝学び〟を大切にしています」


では、どうしてサーバーに着目したのかについては、こう語る。

「繁盛の要素には、料理の美味しさや、食空間などがありますが、これらは時代の変化の中で大きくトレンドが変わります。実は、私がよく行く店で、かつてビールをこぼされたことがありました。接客技術としてはノーですが、また行くんです。それはなぜかと考えると、人なんですね。良い会話ができ、気遣いがあって、〝また逢いたい〟と思える接客に魅かれるからです。お店の差別化のための変わらぬ武器は、人です」


まず人を創り、感動・未来創りにつなげる

繁盛店への道では、サーバーを対象にしたS1アカデミーも開いている。各支部が主催しているもので、東京では5月25日に実施し、100人ほどが参加した。グランプリにエントリーした人や、参加を迷っている人、グランプリとは何なのかを知りたい人などを対象にしている。グランプリのDVDを見ながら事例を紹介する座学や、サーバーがどんな思いで接客をしているのか、過去のファイナリストを招いて感想インタビューなども行っている。

柴理事長は、その狙いについて、こう話す。「S1とS1の間の1年を、人財活性化プログラムと考えています。今年参加して、例えば80点だった人が、残りの20点をどうやって上げるか? 自分でできる人は良いですが、できない人もいます。そこで、グランプリを振り返り、他の店の接客を見ることによって、こういうところをお客様は喜ぶとか、今までやっていたことと違う点など、気付きをたくさん感じてもらう場として、アカデミーをやっています」

もう1つユニークなのが、サーバーカードだ。1年前、大阪支部の発案により始めたもので、メンバーが飲食店に出かけた時に、サーバーの接客に感動したら、カードにメッセージを書いて渡している。了承を得れば写真を撮って、ホームページに載せている。


「あなたの接客は私にとってベストサーバーですよ、というような感動を伝える手段や場所がなかったので、草の根運動として取り組んでいます。また逢いたいという嬉しい気持ち、頑張ってねという気持ちを渡しています」(柴理事長)。

NPO法人繁盛店への道の理念は、『人を創る、感動を創る、未来を創る』―。「人と人が触れ合ってコミュニケーションが取れると、感動が生まれます。感動を創れば、未来も創れます。やはり、最初は人を創ることなんです」と柴理事長は強調する。


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