外食店舗における新型コロナウイルス対策調査の傾向分析レポート

緊急事態宣言が全国で解除されて1か月。街やお店にも徐々に人が戻ってきました。そんな6月に弊社が実施した外食店舗へのミステリーショッピングリサーチ(覆面調査)の結果を分析すると、今の消費者が期待している新型コロナウイルス対策の水準が分かってきました。どこまでが「できていて当たり前」と感じ、どのようなアクションは「より一層安心できる」対策なのでしょうか。 文:データサイエンティスト 鎌形真聖 

対象期間  … 2020年5月28日~6月18日(n=318)

対象調査数 … 212店舗

1.3割弱の店舗でお客さまは「感染症の不安」を感じてしまっている

調査には、まず「感染症の心配なく、店舗を安心して利用できると感じましたか。」という設問があり、4つの選択肢(非常に安心だった、問題なし、やや安心感に欠けた、非常に不安を感じた)から1つを選んでもらいます。

5月28日から18日の間で調査が行われた318店舗において「やや安心感に欠けた」と答えた人が全体の24.2%、「非常に不安を感じた」と答えた人が全体の4.1%で、合わせて計3割弱(28.3%)の人が来店した店舗で飲食をする中で不安感があった、という結果になりました。


図1 6月の飲食店調査における感染症対策の安心感 回答分布


2.感染症対策の安心感が再来店意思に与える影響は大きい 

3割弱の人が飲食をする中で不安感があったと答える一方、「非常に安心だった」と答えた方も3割弱(28.6%)そして「問題無し」と答えた人が4割強(43.1%)と、店舗による差が大きいことが分かります。そして、データをより詳しく見ると、この「感染症対策の安心感」は「このお店にまた来たいと思ったか」という再来店意思とも連動していることが分かりました。

図2 感染症対策の安心感別の「必ずまた来たい」獲得率

*不安・・・非常に不安を感じた or やや安心感に欠けた

  • 問題なしと感じる店舗では、32.1%の人が「必ずまた来たい」と回答しており、これは平常時の外食平均である37.7%とほぼ同水準だった。
  • 非常に安心と感じる店舗では、61.5%もの人が「必ずまた来たい」と回答しており、これは問題なしと感じる店舗よりも「必ずまた来たい」と答える人の割合が29.4%高かった。
  • 不安に感じる店舗では、14.4%の人しか「必ずまた来たい」と回答しておらず、これは問題なしと感じる店舗よりも「必ずまた来たい」と答える人の割合が17.7%低くかった。

つまり

店舗利用時にお客さまが感じる感染症への安心感は、離反要因にもリピート要因にもなりえる。

ということが分かります。


3.お客さまへの積極的な働きかけは、できていない率が高い傾向

では、具体的な感染症対策の中で「多くの店舗で実施できているもの」「できていない店舗が多いもの」「できている店舗とそうでない店舗のばらつきが大きいもの」は、一体どうなっているのでしょうか。それをまとめたものが下記の図3になります。

図3 感染症対策設問における「できていない」店舗の割合

一口に感染症対策設問と言っても、店舗での実施状況には大きなばらつきがありました。特にスタッフからの「感染症対策の説明」や「消毒液の案内」については70%以上の店舗で「できていない」という結果になっていました。


4.スタッフや店舗から「積極的に伝えること」が安心感をつくる

それでは感染症対策に対して「非常に安心」という高評価を受けている店舗では、一体どのような項目が特に実施の徹底がされているのでしょうか。逆に不安を感じさせてしまっている店舗では、どのような項目が特に実施の徹底がおろそかになってしまっているのでしょうか。

それらを表1と表2にまとめました。


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この結果を見ると

  • 「触れやすいものはきちんと消毒されている」「分かりやすく消毒液が設置されている」「顧客同士の距離が適切に保たれている」「十分換気ができている」といった項目は「できていることが期待水準」となっており、ここができていないと「安心感が欠ける、不安」という気持ちになってしまう。
  • 一方「注意喚起の案内やPOPが目に入りやすい」「スタッフから感染症対策に関する説明がある」「スタッフから消毒液の案内があり、分かりやすい」といった項目は「できているとより安心を感じられる」効果のある行動だと考えられます。

つまり、

まず感染症対策を徹底し、不安を取り除いた上で、

スタッフや店舗から積極的に伝え、安心してもらうことが重要

だということが分かります。


5.まとめ

緊急事態宣言解除を受けて営業を再開する飲食店も多い中、今回の調査で感染症対策の実施度には店舗によってかなりばらつきがあることが分かりました。また、その実施度はお客さまの「安心感」につながり「また来たい」「もう来たくない」という再来店意向へつながっていることも分かります。しかし、お客さまの不安を払しょくするには、コロナ対策を徹底するだけではなく、それらの対策が「お客さまに伝わっているのか」を確認していくことが重要です。​​​​​​​

チーフデータサイエンティスト 錦織浩志
チーフデータサイエンティスト 錦織浩志
東京大学大学院工学系研究科を修了後、2012年に株式会社MS&Consultingへ入社。産業技術総合研究所との共同研究にプロジェクト開始当初からプロジェクトリーダーとして参画。社内初のデータサイエンティストとして大量の顧客満足度や従業員満足度の調査データ分析を担当。

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