「再来店意思・総合得点・基本項目」から見る覆面調査レポート

『超優良店ガイドブック2010』掲載
監修:コンサルタント 高野俊一/分析・解説:西山 博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

2007年1月~2009年12月のミステリーショッピングリサーチの結果から、お客様の「また来たい」という気持ちの強さを表す「再来店意志」と総合評価である「総合得点」、および外食店舗における基本項目である「美味しさ・気配り・(スタッフの)表情・雰囲気・提供時間・清潔度」の5項目に着目して傾向の分析を行った結果を解説します。



■対象期間:2007年1月~2009年12月
■調査方法:ミステリーショッピングリサーチ
■対象業態:外食業態
■分析データ数:2007年/24,768レポート、2008年/39,701レポート、2009年/46,396レポート
※全調査の内、比較分析が可能な一部のレポートを対象に分析


まず、総合得点と再来店意志の全体的な推移を把握するために、冬期(1月~3月)、春期(4月~6月)、夏期(7月~9月)、秋期(10月~12月)の4半期毎の平均点を【表1】【表2】にまとめました。

覆面調査レポート


【表1】では、全調査レポートに対して総合得点(200点満点)が150点以下、180点以上のレポートの割合の推移を表しています。ミステリーショッピングリサーチ導入企業の多くは継続して改善活動に取り組まれていますが、その結果、総合得点が150点以下のレポートの減少傾向が見られ、「優良店」と言われる総合得点180点以上の企業の比率が上昇していることが分かります。2007年通期の平均と2009年通期の平均とを比較すると、150点以下のレポートの比率は約3%下がり27.2%に低下し、180点以上のレポートの比率は1.4%上昇し24.4%となりました。

また、それに伴って総合得点、再来店意志(5点満点)の平均点も上昇傾向にあります【表2】。2007年冬期(1月~3月)の総合得点平均は158.59、再来店意志平均は3.86から始まり、2009年秋期(10月~12月)の総合得点平均は162.58、再来店意志平均は3.91まで上昇しました。2009年通期の総合得点平均は160.88、再来店意志平均は3.89となっています。2007年と比較すると調査数は約2倍に増加していますが、顧客満足向上に取り組まれてきた企業の改善努力が全体の平均点を押し上げる結果となりました。

不況の中でオペレーションの効率化を図りつつも、お客様の総合的な満足度を向上させる取り組みに成功している企業が増加していることが分かります。

次に、2009年度のデータを用いて、再来店意志の得点分布の傾向を見ていきたいと思います。ミステリーショッピングリサーチには「1:絶対に来ない」「2:たぶん来ない」「4:また来たい」「5:必ず来たい」の4つの評価がありますが、【表3】を見ると、お客様が店を利用する際、4軒に1軒は「5:必ず来たい」と思い、5軒に3軒は「4:また来たい」と感じるという結果になっています。

グラフ


ミステリーショッピングリサーチのモニター会員511名に対して2009年12月22日~28日に行った外食機会に関するアンケートによると【表4】、20代~60代男女のひと月あたりの外食回数の1位は月2~3回で40.0%、2位は月1回程度で26.7%、週1~2回利用する人は3位で18.8%に留まりました。このように限られた外食機会の中で、4軒に1軒の確率で「必ず来たい」と思う店が現れるのであれば、「また来たい」と思う“普通の”店にわざわざ意識して出かけることはなかなか考えられません。つまり、店を繁盛につなげるには、いかに多くのお客様に「必ず来たい」と思ってもらえるかがポイントとなります。


グラフ


ここでは、再来店意志に影響を及ぼす要素について探っていきます。【表6】は、再来店意志が「5:必ず来たい」の評価のとき、基本項目(※)の各要素が満点であった割合を業態別に比較したものです。この割合が大きいほど、当該要素が再来店意志「5:必ず来たい」の評価に与える影響度合いが強いことになります。逆に、この値が小さいほど、当該要素が再来店意志に与える影響度は小さいことになります。合計欄は、全項目の数値の合計値を示しています。この合計値が高い程、お客様はその業態の店に行く際に高い期待を持っていることが分かります。

グラフ

※ミステリーショッピングリサーチでは、「美味しさ・気配り・(スタッフの)表情・雰囲気・提供時間・清潔度」の5項目を外食におけるテーブルサービスの基本項目として調査を行っています。


また、項目別の各業態と全体平均との差異を【表7】に表しています。この結果を見ると、業態によって期待されている項目にはそれぞれ特徴があることが分かります。和食においては、特に「美味しさ」に関する評価が満点でなかったとき、「必ず来たい」と思う割合は50%を切ってしまいます。一方、バーにおいては、味や提供時間はもちろん大切ですが、それ以上に気配り、スタッフさんの表情、店の雰囲気といった項目が重要な要素となってくるようです。また、各項目の数値が全て低い業態では、価格や立地などの利便性や、その店独自の個性などが再来店意志に比較的大きな影響を与えていると推測されます。

グラフ


ここまでご紹介した内容は蓄積されたデータから見られる傾向にすぎませんが、優秀店舗の研究を行ったり、自社のミステリーショッピングリサーチの結果をより細かく見ていくことによって、顧客満足度を向上させるための自社業態ならではの強化目標がより明らかになってくるはずです。優良店ガイドブックの中には、差別化に成功しお客様からの高い評価を安定的に集めている店舗が多数掲載されています。是非、改善活動の参考にして頂ければ幸いです。


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