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フランチャイズ企業の理念経営

株式会社丸道

http://www.031.co.jp/


『季刊MS&コンサルティング 2012年冬号』掲載
取材:西山博貢、文:高島 知子
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

株式会社道とん堀が展開するお好み焼きレストラン「道とん堀」の、主に首都圏のフランチャイズ(FC)展開を担っているのが、株式会社丸道だ。現在、1都3県に21店舗を運営している。近年、丸道は炭火焼居酒屋やリフレクソロジー店のFC経営も始めており、安定した業績を上げている。こうした経験を元に著書『それでもフランチャイズを選びなさい』を上梓した、同社代表取締役の丸山忠氏に、FC企業における理念経営について伺った。

当社はお好み焼きレストラン「道とん堀」のFC企業として創業し、現在はほかに炭火焼居酒屋とリフレクソロジー店をそれぞれ2店舗ずつ展開しています。形態は違いますが、いずれもサービス業なので、飲食において“おいしさ”を提供するということは、リフレクソロジーに当てはめれば“技術”を提供すること。ブランドごとの理念は違っても、考え方は同じです。それぞれ適した言葉でブランド理念を立て、アルバイトを含めた店舗スタッフと共有するものとしてはブランド理念を、丸道の社員をまとめる際には会社の理念を念頭に置いています。

私が自分の会社を創業し、経営していく中でいつも意識しているのは、ともに働く仲間の中にも温度差があって当然だということです。

私は現在30代後半ですが、我々の世代はちょうど、熱い世代とクールな世代に挟まれています。いま当社の店舗で働いている若いスタッフたちは、いわゆる根性論では動きません。熱く語っても、こちらの期待通りに納得してはくれないので、彼らが受け入れられる形で分かりやすく理念を伝えていく必要があります。

人事理念として掲げている、「セクシー&スピリット」というのも、そのひとつです。人間性が優れた人になってもらいたいと思っても、そのままでは伝わりません。人間的に魅力があることを、彼らに伝わる言葉に置き換えたら、「セクシー」という表現になったのです。

仕事の質を取っても、そもそも「これでいい」と思っている清潔さや食材の状態が異なっていることもあります。そうした場合は、自宅ではよくても店舗で付加価値をつけてお出しするレベルにはならないということを、たとえば食材でも悪くなるぎりぎりのものを手に取らせたりして、教えていく。実体験させることが、最も有効な策だと思っています。

若手スタッフに限らず、分かりやすくというのはポイントですね。当社は全スタッフの8、9割がパートやアルバイトなので、聞いてすぐに理解でき、自分の行動に落とし込めないと意味がありません。なので、CSにしてもその概念を教えたりするのではなく、「自分の大切な家族や友人と同じように、お客様に対応してほしい」と言うほうがずっと理解しやすい。基本的に、現場ではこのような指導を心がけています。

株式会社丸道 代表取締役社長の丸山忠氏:株式会社道とん堀の創業当初から参画し、22歳でFCオーナーとして独立。外食のみならずリラクゼーションサロンなどのFC店も複数店経営し、成功するフランチャイズビジネスの専門家として知られる。


横のつながりをつくることも、研修の目的のひとつ

研修を充実させると離職率が若干上がりました。ただし、店にいてほしい人材は残っている。つまり、理念教育を含めた研修についていけない人だけが、辞めているという状況です。

とはいえ、私は現場のスタッフを指導する立場ではないので、会社の考え方をしっかりマネージャーや店長に浸透させ、それを現場に確実に反映できるように、以前から社内・外部を問わず研修制度の充実に力を入れています。

特にこの2、3年の間では、社内企画の研修制度を強化しました。以前は2種類でしたが、現在は店長研修、社員研修、そして新人アルバイトやパートのための基礎研修の3種類を設けています。いずれも1日5講の講義を3日間で1セットとし、それを5ヵ月間続けます。

研修は、主体性のある参加を促すため、原則的に7人程度の少人数で行っています。人数が多いと、どうしても参加意識にばらつきが生じ、傍観者のようにただ座っているだけの人も出てきてしまいます。しかし7人程度なら、その中で今回の研修におけるリーダーとサブリーダーを決めて課題の管理などを担当させることで、一体感が出てくる。その人数なら眠くても寝ていられませんしね。

研修制度を改善してから、全体のスタッフの質が上がったという手応えがあります。特に、店長については強くそう感じているところです。基礎的な部分の見直しもでき、腕が上がってきています。課題図書を挙げてレポートを書かせたりもしますので、確実に知識がつき、それが現場に表れているのだと思います。

しかし、当社の研修は、決してぴりぴりした雰囲気ではありません。それは、研修に「学ぶこと」だけでなく、「横のつながりをつくること」という目的を持たせているからです。いわば、交流の場として考えているのです。店舗経営の業態ですから、働く場がそれぞれ違うと、同じ立場の者同士が会う機会がなかなかありません。そうした状況に、横串を通すような仕組みをつくるのも、経営側のすべきことだと考えています。

社内研修の様子:頭で分かっても、いざ現場に出ると無意識に楽なほうへ流れてしまうのが人間だと丸山氏は話す。現場での指導のチャンスを見逃さず、研修で学んだことを習慣化できるほど繰り返し教えていくことが大切だ。


知識とセンスと人間性が育つ環境を整える

こうした社内外の研修には、店ごとに見ても常に誰かしらが参加しているような状態になっています。それは、店のスタッフ全体によい刺激をもたらしているようですね。

研修の期間以外でも、もちろん、現場には日々教育するチャンスがあると思います。しかし、それを見極められるかどうかは、店長をはじめ、上に立つ者にかかっています。そうした目配りのセンスも、身につけてほしいところです。

知識とセンスと人間性。この3つが完璧に備わっているのが理想ですが、足りない要素があってもうまく補完し合えれば、お客様にご満足いただける対応ができるというのが私の考えです。当社の社員・スタッフには、いろいろな方法で、この3つを磨いてもらえるようにしたいと思っています。

実は、研修を充実させるようになって、離職率が若干上がりました。ただし、店にいてほしい人材は残っている。つまり、理念教育を含めた研修についていけない人だけが、辞めているという状況です。私としては、これはポジティブな傾向として捉えています。

若手スタッフに対する姿勢として私が常々考えているのは、「悪いことは勝手に覚えるが、良いことは強制的にさせなければ覚えない」ということです。たとえば、会議中に突発的に考えを話させたりする。人前で瞬時に自分の考えを話すのは、社会人としていいトレーニングになりますが、そういう状況にならなければやりませんよね。

それから、独身の社員には必ず定期預金をさせています。当社は実力主義なので、仕事ができる者は20代そこそこでもある程度稼げるようになる。すると、自分も身に覚えがありますが、使ってしまうんですね。余計なお世話かもしれませんが、貯金ができるに越したことはないので、有無を言わさずさせています。それから、これには会社としてのリスク管理の意味もあります。現金商売ですから、金銭的に困窮した者が店舗にいるのは好ましくない。お金のトラブルの防止という意味でも、預金を勧めているのです。

豊富な研修制度に加えて、3カ月に一度は例会、半年に一度は総会を行っている。働く場が離れているからこそ、横の交流を生み出すのは経営側が配慮すべきことだという考えだ。


一人ひとりのスタッフが主体的に働けるように

MSRを使ったミーティングで改善を図るだけでなく、MSRの結果を人事評価の指標のひとつとし、一人ひとりの人事評価に反映させていく計画です。

具体的なCS向上策としては、ミステリーショッピングリサーチ(MSR)を道とん堀で導入して3年になります。先日からは炭火焼居酒屋とリフレクソロジー店のほうでも始めました。MSRを使ったミーティングで改善を図るだけでなく、今後はMSRの結果を当社の人事評価の指標のひとつとし、一人ひとりの人事評価に反映させていく計画です。

評価指標の具体的な内訳は、売上利益で5割、仕事のプロセス系で1割、会社の方針に沿っているかというロイヤルティで2割、そして残り2割をMSR、クレンリネス、QSCチェックによって総合的に評価しています。

また、当社では損益計算書を公開して、エリアごと、店舗ごとに主体性を持って仕事ができるようにしています。ボーナスも、年間の利益から会社として支払える額を計算し、エリアマネージャーを交えてそれぞれの売上に応じて分配を決めていきます。もちろん、簡単には決まりませんし、納得できない人もいるでしょうが、本来、経営というのはそういう面も伴うものです。給与にしても、会社からもらっているというよりも、この額が飲食サービスの市場における自分の価値だと思ってほしい。一人ひとりに、多かれ少なかれオーナーシップの意識を持ってもらいたいですね。

いまの日本市場を見る限り、目先の儲けに飛びつくより、市場を見極めながら健全に出店をするのが得策だと思うので、これからも理念教育を続けながら、着実に展開していきたいと考えています。


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