いかに選ばれ、また来たいと思われるか―。 「お客様の生の声」を通じ、美容業界の活性化へ。

IBAA(International Beauty Association&Academy)

大阪府大阪市都島区都島本通4-24-19 都島TMビル2F


『季刊MS&コンサルティング 2008年秋号』掲載
取材:駒澤真由美、文:飯田沙織
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

全国22万件以上と増え続ける美容室。数年前より、美容業界では、お客様の生の声に耳を傾けるようとする取り組みが動き出している。そのような中、ミステリーショッピングリサーチ(以下、MSR)を通じて、美容業界の課題と目指すべき姿に向けての取り組み事例を紹介する。

お客様の声からサロンの方向性を策定し、美容業界の社会的地位向上を目指す。

美容業界の課題と目標とされている姿について、IBAA(International Beauty Association&Academy)代表の山下芳洋氏にお話を伺った。

今の美容業界について課題と感じていることを教えていただけますか?

全国的に美容室の店舗数が非常に多くなっている状況の中で、美容室側がお客様を選ぶというやり方はもう崩壊しています。それなのに、お客様からどう選んでいただけるかという取り組みが弱い気がしますね。価格的な選択肢が多くある中で、各サロンの主張やコンセプト、オリジナリティがきちんと風土として出来上がっていないサロンが目立つのでないかと感じます。

今、美容室は全国に22万件強で増えていく傾向にありながら、少子化の問題で美容師が減少しています。自分のサロンに合う新しい人材を発掘して育てていくことが難しくなっているのです。さらに、日々の売上の創造するため、金額的なサービス中心の営業戦略になりやすく、お客様に長期的に来店してもらうための姿勢が取りづらいのも現状ではないかと思います。こういう状況の中、私達は、できるだけ多くの美容室の皆様に対して、人材育成、人間力の向上に関するお手伝いをしていきたいと考えています。

代表 山下芳洋氏


IBAAが目標とされている姿はどのようなものですか?

以前、アンケート結果を、サロンの接客や方向性の参考にするという取り込みを実施したことがあります。常連のお客様を対象としたアンケートだったので、ほとんどがお褒めの言葉で、サロンの改善に役立つようなお言葉を頂けませんでした。今のサロンにとって必要なのは、お客様の生の声がリアルに取れることだと思うのです。お客様の生の声を活かして、それぞれのサロンが、店の色をベースにお客様との関係を構築していけるような運動をしていきたいですね。そして、3年後、5年後の美容業界の社会的地位の向上に貢献したいです。


指先から伝わる触感技術を、完成させるための心の教育。

有限会社フリゼーア小牧(ヘアサロン業態)
兵庫県西宮市大井手町1-13 小牧ビル
会社ウェブサイト:http://www.friseur.jp/

「人を育て、独立させる」という社員教育を、70年の創業当時から一貫して行う有限会社フリゼーア小牧。代表の小牧雅彦氏とマネージャーの向井健介氏に、2008年6月より取り入れたMSRの活用について伺った。


教育について具体的にどのようにお考えですか?

小牧氏:創業から一貫していることは人を育てるということで、つまり独立をさせたいという想いで取り組んでいます。そのために、技術は出来て当たり前ですが、さらに、その技術を活かすのに一番大事なのは心です。私達の仕事は、指先からお客様に伝わっていく触感技術です。この技術を完成させたいと思って心の教育に取り組んでいます。心の教育というのは、当たり前のことを当たり前にやるということです。

代表 小牧雅彦氏


今回MSRを導入されたきっかけと、ご感想をお聞かせください。

小牧氏:心の教育という視点で見たとき、MSRは自ら考えて、内から解決していくきっかけ作りになると思ったからです。周りから言われて成長するのではなく、自ら気付いて成長するのが教育の基本だと思っています。人が成長するには、主観的に見る自分と客観的に見る自分がいないとできないと考えているので、その両方を磨いていけるツールになると思いました。

向井マネージャー:実際にMSRを導入してからは、お客様との信頼関係を測る指標になる再来率や商品の購買率以外で、お客様満足度を皆で共有できる物差しができて良かったと感じています。再来率は3、4ヶ月後でないと結果は出ないのですが、MSRは毎月1回入るため、すぐに確認ができます。

マネージャー 向井健介氏


今回MSRを導入されたきっかけと、ご感想をお聞かせください。

また、店内にはレセプションがおりますが、今までは自分達が貢献できているかどうかを知る物差しがありませんでした。ですから、MSRによって、レセプションもすごく喜んでいるんです。

MSRのコメントが、取り組み成果の確認にもなっています。この間も本店の方で低い点数が出て、辛口のレポートがありました。店長が精神的に参っているではと心配したのですが、逆に「前々から気になっていたことを、はっきり書いてもらってすっきりした」と言っていました。さらにMSRによってミーティングの内容も具体的で、より明確になりました。

IBBAの中でもMSRを導入しているお店があるので、そこと一緒に活用方法や他にも成果を発表できれば、他店との交流や共有につながります。アウトプットすることはすごく勉強になるため、こうした機会を創ってあげるのもいいかなと思っています。


お客様の不安を取り除き、再来率と売上アップへ。

【企業情報:有限会社Lien(ヘアサロン業態)】
兵庫県芦屋市大枡町4-15
会社ウェブサイト:http://www.asha.jp

2008年1月よりMSRを導入した有限会社Lienでは、MSRを活用して、スタイリストとアシスタントの区別なく、「お客様に喜んでいただく」ための目標に向けた取り組みを行っている。その行動力を引き出す組織運営の裏側を、代表の下地宏和氏に伺った。


MSRを導入されてから、スタッフの方々の意識や行動にはどのような変化がありましたでしょうか?

レポートを見て、お客様の気持ちが手に取るように想像できたので、今まで以上に、お客様に対して本当に優しい接客になってきたと感じています。また、取り組みの内容も毎月レベルアップしてきました。最初は、基本システム、施術の順番など、初めてのお客様の不安要因を把握できたことで、出来ていなかった部分を徹底して洗い出して、改善案を実行するようになりました。3ヶ月くらい経った頃には、取り組みに対するお客様のお褒めの言葉に少しずつ実感が沸いてきて、お客様に喜んでもらうための具体的な行動が出てきました。

代表 下地宏和氏


具体的な行動とは何でしたか?

たとえば、アシスタントがカウンセリングをすることがあるのですが、初めてのお客様にはそのことが分かりません。来店してそのままカウンセリングに入ることで、「この人がしてくれるんだ」と思ったのに担当が代わるという不安を与えてしまっていました。MSRを導入してからは、カウンセリングの前に「今回の担当は店長ですけれど、先にカウンセリングさせていただきます○○です」と一言添えることにしました。さらにMSRでは、4、5回までは『料金の説明がなかった』と書かれていましたので、料金とかかる時間を徹底してお伝えしています。

また、ミーティングでは店長を聞く側に回し、私が書記をして、議長をアシスタントに変えました。すると、スタイリストもアシスタントも関係なく発言をするようになりました。

たとえば、スタッフ間の伝達を徹底しようという意見が出ました。実は、営業中にスタイリストがアシスタントに指示をするのですが、伝わりにくいことが多く、アシスタントは今まで我慢していたのです。お客様に喜んで頂くためと思うのならばちゃんとしようと、アシスタントが立ち上がりました。今まで、私たちの職場はなんでも言える雰囲気だと思っていたんです。しかし、それは私の勘違いだったのですね。MSRを始めてから、本当になんでも言える職場になりました。これはとても素晴らしいことです。


最近、スタッフさんに変化はございましたか?

お客様に喜んで頂くための取り組みの一環として、6月の目標をレポートに「「この人は仕事、お店が好きそうに見える」と書いてもらえる事にしました。スタッフからの提案で、そのために必要な行動は何か、たとえば、お店が好きな人はどんな話をするのか、どんな行動を取るのかをディスカッションしました。すると7月のレポートに「スタッフさん達のお店が好きという感じが伝わってきて、楽しそうな部分も良かったです」と書いていただいたんです。そこで8月には、「この人は、なぜお店がこんなに好きなんだろう」という言葉を書いてもらおうと目標を立てました。

最初は、半年も経てば飽きて、ミーティングも適当に行われるようになるのかなと思っていたのですが、7回目で点数がぐんと上がり、目指したとおりの結果が出ることで、さらにやる気になっています。

チラシを打てば、新規のお客様が集まる時代がありました。しかし、今は新規のお客様を集めることに目を向けるよりも、お客様にまた来ていただく行動が大事なのです。特に、新規のお客様が2回目来ていただく割合が半分上がれば、売上は30%上がります(表1)。

現在、新規と既存のお客様のデータを分けて管理していますが、今の取り組みが新規のお客様の来店と再来率に繋がっているのがわかります。客数や客単価も上がっており、売上も好調です。

表1


ミステリーショッピングリサーチ ~before&after~
※コメントは、有限会社Lienで働くスタッフの『MSR導入活用法』より抜粋

導入前
課題
ミーティングは店長一人が話す感じて、特に意見がでない。
計画は立てるが、その後の実行がとれていない。
導入後
新規のお客様
不安な気持ちに気づき、解消する対応ができた。
どのような気持ちで来店されたのかを考え、気配りができた。
説明
カウンセリング時に料金と時間の説明ができるようになった。
解説的な会話が増えてより理解していただけるようになった。

時間
時間を気にされている方が多い事に気づいた。
予約電話の際、時間の説明ができて、終了時間も重視した。
スタッフ
スタッフ全員がお客様と関わるようになった。
チームワークが良くなり連携がとれるようになってきた。

ミーティング
楽しい雰囲気になり、誰もが発言しやすくなった。
オーナーや店長に前向きな意見を言えるようになった。
行動
自ら考えて発言・行動し、また反省できるようになってきた。
お店のこだわりを自身を持って言えるようになってきた。
新たな気づき
新規・既存客の再来の大事さがわかった。
お客様が私たちをよく観ている事を知り、言動を意識した不満に答えるより、どうしたら喜んでもらえるかを考えた。



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