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売上安定の基盤は、指標を明確にしたCS・ESの取り組み ~一次的な流行に左右されない安定した売上を実現する秘訣に迫る~

情熱ダイニング株式会社​​​​​​​

http://www.ko-z.com/


※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
取材:相崎 哲史  文:宮本 紗和

関西エリアに7業態、8店舗を展開する居酒屋チェーン「情熱ダイニング株式会社」。今期、SNSによるキャンペーン企画やアプリポイントによる会員獲得施策により業績向上を実現した同社だが、これらの施策が成功した背景には、「顧客満足」という強固な土台があるという。同社代表取締役 池原晃喜氏にお話を伺った。

――今期注力されている「業績向上」に向けた、店舗や事務局での取り組みについて教えてください。

まず、事務局から「翌年度のブランド別戦略・ターゲット・コンセプト」といった経営方針をスタッフに発表した上で、店舗ごとに「店舗目標・店長目標・個人目標」といったビジョンを作成しています。次に、このビジョンを達成するために、月次の行動に落とし込むための計画シート「実行計画書」を各店舗で作成します。

この実行計画書には、「アピール販促」「イベント企画」「Jポイント会員獲得」「物的環境整備」「人的環境整備」という5つの指標があります。中でも、最初の3つは店舗の売り上げにつながる戦略的な部分と捉え、事務局も介入して取り組んでいます。

お話をお伺いした、同社代表取締役 池原晃喜氏


最近では、事務局の広報担当が中心となって、SNSによるお客様への情報発信に力を入れています。たとえば、20代女性がメインターゲットのお店「八百屋ファーム」では、インスタグラム(以下、インスタ)の活用に力を入れています。2月には、バレンタインやチョコレートに関する写真を店内で撮影し、インスタに投稿していただいた中で「いいね」の数が上位だったお客様にお食事券をプレゼントするという企画を実施しました。このように、インスタ映えのするメニューをつくったり、お客様に拡散していただけるようなキャンペーン企画を考えることで、グルメサイト・アプリへの広告費の削減、さらには売り上げの向上にもつながりました。このように、事務局が戦略を策定する一方で、その武器をどのように使っていくか、たとえば「キャンペーンを盛り上げるための店内装飾」や「新メニューのご案内トーク」といった戦術の部分は、各店舗で検討しています。

「八百屋ファーム」店で行われた販促キャンペーン。インスタや店内チラシ、会員向けメルマガなどにより告知。店内で撮影した写真をインスタにアップし、「いいね」の数が上位だったお客様にお食事券をプレゼントするという企画。


そのほか、情熱ダイニング公式アプリ「Jポイント」の会員獲得は、今期の重要施策として会員数1万人の獲得を目標に取り組みました。会員向けにイベント情報を1つ発信するにしても、会員数が増えれば、その影響力は断然大きくなります。この会員獲得施策により、お客様を飽きさせることなく、他の店舗に回遊していただく仕組みができ、売り上げ向上に大きく貢献しました。

このような戦略が打てるようになる前は「物的環境整備」(整理・整頓・清潔)と「人的環境整備」(礼儀・衛生・規律)の2つで回していました。どちらも、やればできることではあるのですが、私は実はこれが一番重要だと考えています。たとえば、落ちているものや物の配置が違うことに気付けない人は、見えないお客様の気持ちに気付けるわけがないですよね。そのため、「まずは見えるものから気づけるようにしましょう」と伝えています。

この2つの項目の現状を把握するのに役立っているのが、導入して約14年となる顧客満足度調査「ミステリーショッピングリサーチ」(以下、MSR)です。「物的環境」に関する不満が起きていないか?狙い通りに名物商品がお客様の印象に残っているか?また「人的環境」では、チームワークの悪さやスタッフ同士の不満により、お客様の満足度に影響を及ぼしていないか?お客様とのやり取りや会話が、喜ばれるレベルになっているのか?など「モノ」・「ヒト」両面での「不満解消」・「感動創造」ができているかどうかが重要です。その検証と改善に向けた話し合いは「お客様の印象」をコメントで深掘りできるMSRだからこそ可能だと考えています。具体的にイメージできるようなコメントになので、話し合いもし易いですね。

これらができるようになると、店舗の売り上げは安定していきます。つまり、この取り組みは、売り上げを上げるためのベースです。土台をしっかり作っておかないと、どんな戦略も上滑りしますので。これらを徹底してやる、という文化をつくるまでに、数年かかりました。今も完璧ではないですが「物的環境整備」・「人的環境整備」がある程度できてきたからこそ、「アピール販促」「イベント企画」「Jポイント会員獲得」などの戦略的な部分が結果に現れてきているのだと考えています。

同社が運営する店舗共通のアプリポイントは、貯めたポイントをどの店舗でも使えるほか、来店頻度が上がると還元率が上がりポイントが貯まることで、他店舗への回遊を促進している。


――取り組みの実行度を確認する仕組みはありますか?

毎月店舗ミーティングを実施し、実行計画書に基づき、私が5段階で実行度を評価しています。これは、店舗での最重要ミーティングと位置づけていて、アルバイトに対しても業務の一環として時給も払い、全スタッフの出席を推奨しています。もちろんアルバイトの場合はそれぞれ都合もあるので無理は言えませんが、出席率の良いアルバイトに対しては人事考課でプラスするなどの配慮をしており、参加率は80%となっています。
店舗ミーティングに継続的に参加してくれるアルバイトスタッフたちのマネジメントスキルは非常に高くなります。そのため、社会人になって他の会社に就職したスタッフからは、「新人賞を取りました」などという声をよく聞きます。他のステージでも活躍しているという話を聞くと、私も嬉しいですね。

期初に各店舗が作成する「実行計画書」。7年間継続して、この作成を行っている。


――御社の組織体制はどのように作られているのでしょうか?

当社では、アルバイトを含む全スタッフの思考タイプを、分析ツールを使って把握しています。これは、人をコンセプト型、分析型、構造型、社交型の4つの思考スタイルに分ける考え方です。たとえば店舗内に分析ができるスタッフがいなければ、他店のスタッフと入れ替えたり、逆にチームがバラバラだと感じるときは、似たような思考のスタッフを入れて空気感を良くするなど、組織体制の参考にしています。

また、この結果をもとに、違うタイプのスタッフを集めてのワークショップ形式で、思考の違いを学ぶ研修を5時間くらいかけて行っています。1回につき20~30人を集め、全スタッフが受講できるように年4~5回開催しています。私たちの仕事では、人とのコミュニケーションやスタッフ同士の信頼関係が重要ですので、この機会を通して、それぞれが担っている業務を尊重し合い、お互いの得意な部分を認め合うことができるようになってほしい、と考えています。

スタッフさんは、お客さまと接するときは笑顔で、動作や話し方も丁寧でした。また、野菜も、それ以外のお料理も美味しく、ぜひまた来店して他の料理も食べてみたいと思いました。(農家うたげ:MS通信の感動コメントより抜粋)


――来期のテーマを教えてください。

神戸周辺の業態レベルが上がってきているので、ただ戦略を立てるだけで競合に勝てるとは思っていません。今期のテーマにしていた「業績向上」はゴールが見えてきたので、来期は原点に立ち返り、さらに強固な「顧客満足」の基盤をつくろうと動き始めています。手始めに今期10月頃より、ランク制度を導入し、店舗ごとに3つのチームを作りました。初級スタッフは物的環境整備チーム、凡事徹底ができるようになると人的環境整備チーム、しっかりと理解しているメンバーは事務局施策の戦術的な部分を担うCISチームとして、それぞれ改善活動をしています。店舗内で5:3:2くらいの構成にしており、CISチームは他のスタッフからちょっと憧れられる存在になってきていますね。このテーマに合わせて、来期は店舗スタッフの報酬を顧客満足に対するものに切り替えていきたいと考えています。

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