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お客さまに寄り添うBCの存在があるからこそ、 スタイリストも自信を持って提案できる

有限会社JAM's company

http://www.jams-hair.net


『季刊MS&コンサルティング 2015年春号』掲載
取材:角俊英、宮口侑莉/編集:西山博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

有限会社JAM's companyはビューティ・コーディネーター(以下、BC)の提唱・育成を行う日本ビューティ・コーディネーター協会(以下、JBCA)に加盟し、1期目は、MS&Consulting主催のCSマネジメント研修(※1)に参加しながら、BCを中心としたサロンマネジメントの改善に取り組んだ。2期目の2014年には個人・組織ともに成果が出始め、ミステリーショッピングリサーチ(以下、MSR)の結果が飛躍的に向上。2013年1月~12月は13調査で平均点171点だったのが、2014年1月~9月には10調査で平均点180.5点という高得点を記録した。どのような取り組みで今回の成果が発揮されたのか。スタイリスト佐郷光治氏とBC山本あゆみ氏に話を聞いた。
(※1)CSマネジメント研修:顧客満足向上へのサロン経営とノウハウを学ぶ研修

CSマネジメント研修に参加したことでどのような気付きがありましたか。

山本氏:まず、全体的にPDCAサイクルが出来ていなかったことに気がつきました。P(計画)とD(実行)は意識していても、C(評価)とA(改善)が実行出来ていなかったのです。そこで、いろいろな取り組みをしていくうちにスタッフの自主性が育ってきました。

具体的にはまず、各個人の取り組み内容を記入するためのワークシートを作成しました。次に、朝礼で一日の目標を決めて、終礼で確認。スタイリストやBCなどのセクション毎に、取り組み内容やレッスン表も壁に貼り出しています。カルテもアイウエオ順だったものを、ロイヤルカスタマーと1カ月サイクルで来店してくださるお客さま、2カ月サイクルで来店してくださるお客さまをシールで色分けして移動カルテにしました。その結果、失客しているお客さまのカルテを見つけやすくなり、誰が見ても重要度が一目で分かるようになりました。

BCは、お客さまの要望をヒアリングし、各スペシャリストとの架け橋となって、お客さまのライフスタイルに寄り添った提案を行う(写真はBCの山本あゆみ氏)。


スタイリストのカウンセリング前に行う、BCのプレカウンセリングの内容も見直されたと伺いました。

山本氏:BCでもカウンセリングの内容がお客さまによってまちまちだったので、内容を統一できるようにマニュアルを作成しました。また、お客さまをお待たせしないように、お店の状況を見ながらカウンセリングの時間はコンパクトに、質問の内容は簡潔にしています。その中でも、お客さまの要望はしっかり聞いてメリハリを付けるようにしました。また、プレカウンセリングの中で、トリートメントなどのプラスアルファの提案を最初にお伝えするようにしました。それによってお客さまに考える時間が生まれます。スタイリストにパスを出すイメージです。あくまでBCがするのは説明、メニュー決定はお客さまとスタイリストだと考えています。

BCのパスによってスタイリストがお客さまに積極的に提案できるようになってからは、以前よりお客さまに次の来店を楽しみにしていただけているように思います。それが自分たちにとっても良い刺激になっていると感じています。

CSマネジメント研修を受けて行った社内勉強会の様子。お客さまにまた来たいと思っていただけるようなサロンに向けて、マネジメントを任せられる人材の育成を目的に開催されている。


BCとしてどのようなことを意識されましたか。

山本氏:BCはお客さまとの最初の接点になるので、顧客心理ステップ(※2)の考え方を参考にして、まずはお客さまとの会話ができる状態をつくることを心がけるようにしました。スタイリストがいくらいいスタイルを提供したとしても、お客さまの不安や悩みが解決されていなければ感動にはつながらず、リピートもしてもらえません。研修を受けてBCの必要性を改めて認識しました。

BCはお客さまに寄り添う必要な存在ですが、お客さまにとって一番近い存在であるためには、もっと勉強しなければいけません。BCはお店の顔となるのだと意識して、今も様々な改善に取り組んでいます。

(※2)顧客心理ステップ:提案のステップに対して、それを受けたときのお客さまの心理状態を体系的に整理した考え方。

同社では、お客さまへトータルビューティーを提案し、「ライフスタイルパートナー」として一生寄り添える存在となるべくスタッフ一同研鑚を積んでいる。


BCの活躍によって、スタイリスト側にはどのような成果がありましたか。

佐郷氏:予めBCがカウンセリングしてくれているおかげで、ある程度細かい要望が分かっているので自信を持って提案できるようになりました。お客さまのリクエストを真摯に聴いて表現して、お客さまに満足感を得てもらおうという気持ちでカウンセリングに入ることができるようになりました。

ダメージを抑えた施術で、自宅での再現性に優れたスタイルに。経験豊かなスタッフが、お客さまに似合うデザインを提案する(写真はスタイリストの佐郷光治氏)。


店舗でのヘアケア商品等の販売(店販)比率も上がったそうですね。

佐郷氏:それまでは押し売りになるのではないか、勧めすぎるとお客さまが引いてしまうのではないかという気持ちがありました。研修を通していろんなサロンさんの意見を聞いて、ご自宅での再現性や美しさを継続していただくためにも商品のご案内が必要だということが分かってきました。実際、店販比率、店販売上も上がり店販売上にお客さまの信頼が反映されているように思います。ですので、今使っていただいている商品の他にも、より髪の状態に合わせた商品や新商品も提案するようにしています。

BCがプレカウンセリング時に使うカウンセリングシートの一例。お客さまの要望を的確に把握し、かつ分かりやすくスタイリストのもとへ届ける重要な役割を果たしている。


研修を受けた前後で、お客さまとの関係性も変わったようですね。

佐郷氏 関係作りが上手にできるようになってきたと思います。今までならば『お任せするよ』と言われても新しい提案はせず、前回と一緒にしがちでした。それに、自分の頭の中でイメージするだけで、それをお客さまに伝えていませんでした。今では、プロフェッショナルの自分だからこそできる提案をお客さまにお伝えしています。お客さまのご希望のイメージを伺い、納得していただきながら施術を進めることによって、お客さまに『私のためにここまでしてくれてありがとう』と言っていただけたときは、成長を実感しました。

また、技術や仕上がりに満足して任せていただく機会が増えた気がします。例えば、あるお客さまは私が休みの日には違う担当者に任せるということもあったのですが、その方が私の出勤日に合わせて予約を取っていただけるようになりました。そんな時は、自分じゃないといけないんだという責任感と喜びが溢れます。

それに、以前は探り探り話していた会話の内容も、今ではお客さまのために、こういうことを話そうと最初から考えて話せるようになりました。使うスタイリング剤やシャンプー、施術内容も具体的に説明することで、次回予約や、将来をイメージした中長期的な提案につなげやすくなります。

たくさんのお客さまにご来店いただけるよう、敷地面積350坪、店舗面積120坪、駐車場23台を併設するJAM’s company。郊外のサロンとしてもかなりの大型店舗だ。


中長期的な提案につなげるために、どのような接客を心がけていますか?

佐郷氏:まずは、その方の悩みがその時解消できるものかを考えます。ご来店いただいたその日に解決できないことであれば、それを解決するための技術と、実際に効果が出る期間を提示します。例えば、ボリューム感が少ないと気にされているお客さまにヘッドスパを勧める場合は、早くても3カ月、標準的には6カ月ほど見ていただかないと効果は期待できません。そうしたことを説明して次回の提案につなげていきます。せっかくやった技術が効果が出る前に終わってしまったら、お互いにやった意味がなくなってしまいます。


MSRを利用するようになってから変わったことはありますか。

佐郷氏:実はサロンのなかに毎回MSRの点数の高いスタイリストがいて、彼女に対してはすごいと前々から感じていました。店販比率もずば抜けていました。MSRによってその人の接客が点数やコメントとして目に見えるようになったり、BC中心の改善活動を行うようになああってきたら、彼女が今までどういうことをしていたのかが見えてきました。彼女はMSRに参加していない時から成績が良かったのですが、周りの人にもプライドがあります。負けたくない。正直、彼女のやり方を受け入れ難く思っている側面もあったと思います。しかし、それが数字として表れてくると、見習わないといけないなと周りのメンバーが素直に思えるようになったと思います。

MSRでは点数が悪い時もありましたが、印象が悪かった理由をしっかり伝えてもらえるし、それを改善するためにどうしたら良いかのヒントも教えてもらえます。指摘されたところに気を付けていくことができるので、すごく助かっています。

託児付きのチャイルドルームやセミプライベートルームも完備。未就学児から高齢の方まで、様々なお客さまに快適に過ごしていただけるよう工夫がなされている。


研修では他のサロンとの交流の機会も多くありますね。

佐郷氏:他のサロンさんと交流が持てるようになって、同じような地域で頑張っているスタイリストさんを見て、もっと上を目指さないといけないなと思います。研修や他のサロンさんとの交流を通してお客さまに喜んでいただくためのやり方がだんだん分かってきて、スタイリストとして目指す姿が明確になってきました。


最後に、スタイリストとして成果の上がった要因を教えてください。

佐郷氏:自信を持った接客と提案が成果をもたらしたのだと思います。自分の接客や提案に自信がないと、お客さまも納得感が得られず、仕上がりを見ても不満に思われてしまうかもしれません。研修を受けて成長したことで自信を持つことができました。

また、研修を受けていて、もっと知識を身に付けようという気持ちにもなりました。なぜなら、長期的なスタイルの提案をするなら責任を持たなければいけません。責任を持つためには知識や技術が必要です。無責任にお勧めするだけではお客さまも戸惑ってしまいますし、信頼してもらえません。

自信を維持しようという意欲も湧いてきて、仕事が楽しくなりました。ただし、今日やったからといって次の月に成績が急に良くなるというものではありません。研修で学んだことをやって本当に伸びるのか、疑心暗鬼になる時もあると思いますが、まずはやってみることが大事だと思います。やることで自信は確実に付いてきます。

2011年に全店舗を統合してオープンしたJAM’s hair&spaは、ヘアメニュー、ヘッドスパ、エステ、ネイル、アイラッシュの個室を備えたトータルビューティーサロンだ。


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