HOME > 導入事例 > 株式会社麺食(ラーメン業態)
株式会社麺食(ラーメン業態)

老舗ブランドだからこそ 働く人の姿勢から風土改善

株式会社麺食(ラーメン業態)

株式会社麺食

東京都大田区大森北2-14-2 大森クリエイトビル6・7階

会社ウェブサイト:http://www.mensyoku.co.jp/

『季刊MS&コンサルティング 2011年春号』掲載
取材:西山博貢、文:高島 知子
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
今年創業24年目を迎える麺食は、喜多方ラーメン店「坂内」「小法師」を全国で展開している。2010年の業績は昨年対比100.4%(既存直営合計)と、不況下で着実な業績を残している。同社は1年半前より、抜本的な事業改革を目指し、経営からサービスの質まで含めた改善活動に着手。今まさに成果が目に見える店舗が現れ始めているところだ。専務取締役の中原誠氏に、現在の手応えと今後の展望をうかがった。

改革体制を整えて抜本的なCS改善に着手

麺食本社を置く東京・大森の「坂内」にて、専務取締役の中原誠氏。エリアによって、近隣在住のシニア層の常連客が多い店では「シニア割」、若年層の来店に注力したい店では「学割」を設けるなど、店舗ごとに販促を実施している。

麺食本社を置く東京・大森の「坂内」にて、専務取締役の中原誠氏。エリアによって、近隣在住のシニア層の常連客が多い店では「シニア割」、若年層の来店に注力したい店では「学割」を設けるなど、店舗ごとに販促を実施している。

子どもから高齢者まで幅広い年齢層の顧客を抱える「坂内」と「小法師」は、いわゆる“流行店”として扱われる店とは一線を画す地域密着型のラーメン店だ。業績も上々で、昨年全体の売上は前年対比100.4%。しかも、昨年は55店舗中40店舗を占めるFC店舗の売上伸長率が直営店のそれを上回る月もあったというから、その勢いがうかがえる。

同社は2009年6月、全店を挙げてのQSCの見直しに着手した。専務取締役の中原誠氏をリーダーに、企業の経営活性化を手がける株式会社リヴァンプに経営面での改善サポートを依頼。また、リヴァンプが支援している「クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社」や「コールド・ストーン・クリーマリー・ジャパン株式会社」でCS向上のために導入しているミステリーショッピングリサーチ(以下MSR)を取り入れたほか、積極的な広報活動や物流の見直しなどにも同時に取り組んでいる。

こうした活動を始めるに至った背景を、中原氏は「業績が急激に悪化していないがゆえに、良くも悪くもおとなしい企業体質が定着していた」と語る。

「最近ではラーメンが大きなブームになり、テレビで特番が組まれるなど活況を呈していますが、実際のところ当社のように20年以上も続いているラーメン店は少ないでしょう。FC店にも長いお付き合いのオーナー様が多く、強い信頼関係ができている点は過去の経営陣に感謝すべき部分でもあります。ただ、平均してリピーターが6割以上もいるために、お客様の数が若干減っていても気が付かなかったり、年間の売上が前年比を多少割っても『今年も乗り切れたから』と見過ごしてしまうこともあった。居心地が良いことに慣れてしまった状態は、どこかで抜本的に改めなければならないと感じていました」。

20年後、30年後に生き残る企業になるために

麺食は商品力もさることながら、業態開発でも話題に。開放感のあるオープンキッチンを設置した新店舗は、新宿パークタワー店など都心を中心に展開。日経流通新聞や業界新聞など、多数のメディアで紹介されている。

麺食は商品力もさることながら、業態開発でも話題に。開放感のあるオープンキッチンを設置した新店舗は、新宿パークタワー店など都心を中心に展開。日経流通新聞や業界新聞など、多数のメディアで紹介されている。

近年、麺食はラーメン店にオープンキッチンという斬新な新店舗でも注目を集め、メディア掲載も珍しくない。ただ、そうした状況について中原氏は「新しいタイプの店はまだ55店舗中の3店舗に過ぎない。ほとんどは、常連のお客様が6割にも上る地域密着型の店舗です。商品開発や新業態開発ももちろん大切ですが、私たちの考えのベースにあるのは、商品力やサービスなどすべての面で、リピーターのお客様にいかに満足していただくかということです」。

そうしたサービスが「坂内」や「小法師」に決定的に欠けているわけではないし、あと数年ならば、このままでも良いのかもしれない。しかし20年後、30年後にも麺食が成長企業として生き残るためには、皆で進化しなければ―。そう危惧する気持ちから、新しいことへのチャレンジをためらいがちな風土から、 “攻め”の風土へと姿勢の転換を目指したという。

とはいえ、特別なことをしたわけではない、と中原氏は話す。「ラーメン業態以外の飲食業が普通に実施していることを実施し、そのQSCレベルにまず追いつこうとしたのです」。

ラーメン業態は、他の飲食業に比べて特殊な部分がある。たとえばMS&Consultingの調査によると、ラーメン店で再来店の決め手になるのは圧倒的に「味」であり、顧客にとって衛生面や接遇面は他の飲食業より重視されない傾向がある。長靴にハチマキという格好や、若干荒々しい対応でも通用するのはラーメン店ならではだろう。

だが、同社の中心顧客は近隣に住んでいるか、勤めている人。家族で訪れたり、同僚と皆で来店したりと、一般の飲食店と同じように受け入れられているため、「ラーメンが食べたい」とふと思ったときに思い浮かべてもらえるようなサービスの質も重要なポイントだ。そのため、再来店を促すサービスの質を維持・向上させることが先決だと判断した。

現場でのサービス改善にMSRを活かす

同社ではFC店舗の割合が多いが、本部とオーナーの信頼関係は強固。ミーティング方法を含め、本部で成果が出た施策について、結果が出る策だとオーナーが判断すれば現場への導入も早い。

同社ではFC店舗の割合が多いが、本部とオーナーの信頼関係は強固。ミーティング方法を含め、本部で成果が出た施策について、結果が出る策だとオーナーが判断すれば現場への導入も早い。

CS改善の第一歩としたのは、現状を把握するための出口調査だ。09年6月、ベンチマーク対象とした10店舗・500人の顧客に対し、中原氏を中心に社員やアルバイトスタッフが総出でアンケート回答を依頼。年齢層やリピート率、支持要因などの実態をつかんだ。「これまで捉えていたリピート率や支持要因などは、あくまで現場の感覚知レベルでした。一斉に調査をしたことで、本部や各店舗で共通認識を確立することができました」。

一方、現場でのサービス改善活動に活用しているのがMSRだ。アンケートは傾向や割合を数値化するものだが、MSRは店ごとに点数の推移をチェックしたり、個別の意見を踏まえて現場でPDCAサイクルを回すという一連の仕組みとして捉えている。以前からCS調査は実施していたが、一般生活者による覆面調査ではなくプロによるものだったため、スタッフにも顔が分かり形骸化してしまっていたという。

MSRで得られるサービスに対する顧客の意見は、仮に一人の意見だったとしても、「その後ろに同じ思いをしているお客様がどれだけいるか分からないし、その一人の方にもしも同じ対応をしてしまったら二度と来店されないでしょう」と中原氏。MSRを使って、こうした説明をすることで、現場のスタッフも日々の改善がどれだけ大切かを理解することができる。

FC店に対しては、以前から販促ツールの提案・提供や、直営店での成功事例の共有などの働きかけを実施してきた。しかし、基本的に採用の判断はオーナーに任せているこれまでの取り組みと異なり、MSRに関しては全店に一斉に導入したという。

ただ、MSRの結果を店舗で共有し、PDCAサイクルを確立するにも、全店舗で一律にとはいかない。運営歴が長いFC店には10年以上の付き合いのパートスタッフもおり、“あうん”の呼吸で日ごろのコミュニケーションが十分に取れているため、朝礼やミーティングといった機会をわざわざ設ける習慣がないからだ。

「コミュニケーションが円滑なのは誇るべきことですが、若い学生アルバイトや外国人スタッフが加わった場合にギャップが生じてしまうのは以前からの課題でしたし、MSRを活用しようにも、ミーティングをどう設けていいのか分からないという声もありました。幸い、現在のFC店オーナーとの関係は良好なので、スーパーバイザーなどを介して店舗ごとのMSRの活かし方を検討し実践しているところです」。

FC店と一丸となり100店舗を目指す

スタッフ間のコミュニケーションが十分に取れている老舗店ほど、「ミーティングの仕方が分からないというケースが起きてしまった」と中原氏。店舗ごとにMSRの導入・活用をサポートしている。

スタッフ間のコミュニケーションが十分に取れている老舗店ほど、「ミーティングの仕方が分からないというケースが起きてしまった」と中原氏。店舗ごとにMSRの導入・活用をサポートしている。

導入して約1年半、すでに一部の店では目に見えて結果が現れている。直営店15店舗のうちでは3店舗ほどが安定して高い点数を獲得しており、また導入時に100点を割っていた店舗でも(200点満点)、右肩上がりを続けて160点台になっている例もある。

時折混じる顧客の厳しい意見は、「スタッフには刺激になっていると思いますね」と中原氏。その指摘内容から、自分が対応していた時間帯だと気付いたスタッフが奮起して、周囲が驚くほど意識が変わったケースもあるという。今日のサービス改善が、すぐに点数や売上に反映されるわけではないからこそ、今日の目標ができていたかを自分たちでチェックしていけるようになるのが理想だ。

直営店での好事例をFC店に展開することで、忙しさに追われがちな店長も積極的な姿勢に変わりつつある。「価値観や危機意識を共有する過程は、スタッフ一人ひとりの意識がかかわることですから、戸惑いもあるかもしれません。ですが、そうした過渡期もCS改善活動の一部だと思いますね」。

昨年6月、FC店オーナーを一堂に会して同社初の“FC大会”を実施。今後はさらにFC店との連携を強め、皆で一丸となって向上していこうというキックオフの意味合いを込めた。今後はFC店向けの広報誌やCSに特化した冊子などを通した情報発信、コンテスト形式のイベント、成功事例発表会なども視野に入れている。

「目標は100店舗」と、中原氏は力強く話す。FC店と意識を共有し、商品力を最大限に活かすことで、顧客の心をつかむ店としてのさらなる進化と事業の拡大を見込んでいる。

導入事例の詳細検索

業態別・導入サービス別・掲載季刊誌の掲載別で事例を絞り込んで閲覧できます。