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「PDCAサイクル」を理解する ◆データサイエンティストが解説!◆

ほとんどの方がおそらく一度は耳にしたことがあるだろう「PDCAサイクル」という言葉。今日はこの「PDCAサイクル」について、僕が大学の品質環境マネジメントの講義で学んだ考え方を紹介します。


『PDCA』は何のために行うのか。その『目的』を言えますか?

PDCAに対する一般的な認識はどのようになっているのでしょうか?早速Google先生に「PDCA」と質問し検索結果を一通り確認しました。しかし、僕が調べた範囲では、PDCAは何のために行うのか、その目的について正しく書かれているページはありませんでした。


例えば、WikipediaにはPDCAについて次のように書いてあります。


『Plan(計画)→Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4段階を繰り返すことによって業務を継続的に改善する』


これを読むと「業務を継続的に改善する」ということが目的と取れますが、これは方法論の目的としては曖昧です。改善の手法はPDCA以外にも数多くあり、「この目的だと別にPDCAじゃなくてもいいのではないか?」という疑問が湧いてくるわけです。特に気になるのは「どのように改善するのか?」「業務のどの部分を指しているのか?」という2点です。


『PDCA』の本来の目的

さて、業務は「プロセス」と「結果」に分解することができます。「このプロセスを実践したら、この結果になった」という具合です。そして、PDCAの主目的はこのうちプロセスを改善することにあります。ただし、プロセスの改善は結果を検証して進められます。つまり、PDCAサイクルを回す目的は『結果に基づくプロセスの継続的な改善』です。


『PDCAサイクルの目的:結果に基づくプロセスの継続的な改善』


PDCAの正しい回し方

ではどのようにしたら、本来の目的である『結果に基づくプロセスの継続的な改善』を実現できるのか?という点について表形式で紹介します。

表1.PDCAの手順

※第6176回QCサークル静岡地区秋桜大会 2019年10月25日「JHS部門における改善活動の進め方~未然防止型QCストーリーを中心にして~(中央大学理工学部  経営システム工学科  中條武志)」より弊社作成。


この表は、PDCAサイクルの手順を「プロセス」と「結果」に分解して整理したものです。PDCAサイクルが自ずと『結果に基づくプロセス改善』となります。PDCAサイクルの真の目的を達成できるのです。

​​​​​​​今までの認識と比較してみて、いかがでしょうか?表の右側「結果」だけを回すことがPDCAだと説明されているケースが多々見受けられます。表の左側「プロセス」を回すことも忘れないでください。


ちょっと練習✍

『PDCA』にトライしたいテーマを何か1つ思い浮かべてみてください。仕事でも趣味でも何でも良いです。決まったら、表2の右上①に目標を書き込み、②から順に⑩まで脳内シミュレーションをしながら埋めていってみてください。



★表を埋めるポイント ★

①なるべく測定可能な目標を定めます。結果と目標の差が測れないような目標はナンセンスです。

②プロセスは行動ベースで詳細に定めます。「注意深く行う」等の曖昧なものは、結果を測ることができないので、なるべく入れない方が良いです。

⑤目標に対する結果とプロセス解析に必要な結果を測定します。プロセスに従って実施されたかも測定項目に含まれます。

⑥目標と結果が一致しているか判定するルールを事前に定義しておきます。目標が達成されている場合はここで終了です。

⑦なるべく根本にある原因を結果から特定します。事実と考察は分解して記録しておくと振り返りやすいです。

⑧応急処置をする場合、それを応急処置と明確にしておくことが重要です。

⑨プロセスに(原則)残すべきと判断したものが恒久的な処置です(残さないものは応急処置)。僕自身の経験では「このアクションを取ることによってプロセスの根本的な悪さが取り除かれ、しかもこのアクションは新たな問題を生まない」と考えると取り得る手段が見つかりやすかったです。

⑩恒久処置が機能するか検証します。機能しないと判定された場合は⑨に戻ります。


PDCAで大切なことは、この表の①~⑩を1サイクルとして何周もぐるぐるさせることです。僕個人の経験では、1つのプロセスに対し3~7周程度で標準(管理)状態に到達するケースが多いです。

やってみるとわかるのですが、意外と埋まらないものです。僕が初めの頃、特にうまく埋められなかったが⑦と⑨でした。でも続けて使ううちに使いこなせるようになります。この表が自由に使えるようになったら業務改善の幅が広がります、あきらめずに何度か使ってみてください。


まとめ📓

□PDCAサイクルを回す目的は『結果に基づく継続的な業務改善』

□具体的には表1のことをする

□表を埋めてみると意外と手強い、しかし、続けるうちに使いこなせるようになるのであきらめない


【おまけ】2種類のPDCA

補足として『2種類のPDCA』について、要点のみをお伝えできればと思います。

①改善のPDCA

目標を一段高いところに定め、プロセスを変えて目標を達成する活動。

②管理のPDCA

目標を現状あるいは延長上に定め、達成した目標を維持する活動。改善がほぼ完了し、標準化された状態を維持する場合に用いることが多い。

①と②両方やらないとPDCAは理想的な機能を果たすことができないため、注意が必要です。


※第6176回QCサークル静岡地区秋桜大会 2019年10月25日「JHS部門における改善活動の進め方~未然防止型QCストーリーを中心にして~(中央大学理工学部  経営システム工学科  中條武志)」より弊社作成。


PDCAを回していると途中でやめてしまうことがあります。僕もそうなのでよくわかります。その場合①,②のどちらかだけを行っている可能性が非常に高いので、「改善が継続しない」と感じたら思い出してください。


​​​​​​​ 【第1回】はじめての「RPA」

【第2回】はじめての「AI」

【第3回】「偏差値」を理解する


データサイエンティスト 鎌形真聖
データサイエンティスト 鎌形真聖
中央大学理工学部を卒業後、2019年に株式会社MS&Consulting入社。在学中は統計学や機械学習などデータ分析について幅広く学ぶ。卒業論文のテーマは「ロバスト統計学」。入社直後からその専門性を活かし、顧客満足度や従業員満足度、売上など多種多様なデータを用いた高度な分析を担当している。千葉県柏市出身。 所属:株式会社MS&Consulting テクノロジーイノベーション事業本部

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