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国立研究開発法人産業技術総合研究所(研究機関)

【第9回クオリティサービス・フォーラム レポート】
サービス・ベンチマーキングによる
サービスプロフィットチェーンの高度化に向けて

国立研究開発法人産業技術総合研究所(研究機関)

国立研究開発法人産業技術総合研究所

URL https://www.aist.go.jp/

所在地:東京都江東区青海2-3-26
国立研究開発法人産業技術総合研究所は、我が国最大級の公的研究機関として、日本の産業や社会に役立つ技術の創出とその実用化や、革新的な技術シーズを事業化に繋げるための「橋渡し」機能に注力しています。本共同研究を行う人間情報研究部門サービス設計工学グループでは、サービスの観測、分析、設計、適用のためのサービス工学技術を開発し、人間行動の理解とサービス現場の支援を行っています。

『季刊MS&コンサルティング 2016年冬号』掲載
※記載されている会社概要や役職名などは、講演(掲載)当時のものです。ご了承ください。

サービス・ベンチマーキングによるサービスプロフィットチェーンの高度化に向けて

【図表1】分析対象となった従業員満足度診断データの業種別内訳(単位:人)

私たち産業技術総合研究所(以下、産総研)は、今年の8月よりMS&Consultingさんと共同研究を開始いたしました。

この研究の目的は、次の3つです。

【1】これまでに蓄積された顧客満足度・従業員満足度に関するデータを対象として大規模な分析を行うことで、各調査分析手法の高度化を図る。
【2】業種別に従業員満足度と顧客満足度との連動、顧客満足度と業績との連動等の構造を分析することで、サービスプロフィットチェーンの成功要因・重点項目を明らかにする。
【3】各業種、業態の特徴を考慮しながら、さまざまな指標(顧客満足、従業員満足、経営指標等)を標準化し、各企業の強み・弱みと今後の経営戦略の立案を支援するサービス・ベンチマーキングの方法論を確立する。

 

【図表2】 4つの因子

本日は、このうち従業員満足についての分析結果をご発表します。
この研究では、MS&Consultingさんが2011年から2015年までに取得した従業員満足度診断(HERB診断)のデータ約15万件(図表1)を対象として分析いたしました。

まず、標準版の従業員満足度診断(HERB診断)の43項目について因子分析を行ったところ、次の4つの因子を発見することができました(図表2)。

 

【図表3】 いくつかの業種のESの特徴:※各因子ごとに得点の高い方から回答を5等分し、5点~1点と点数を振り直し標準化したものの業界平均値

次に、この分類に基づき個々人の因子ごとの得点の強さを計算しました。計算方法としては、その因子得点が母数15万人のうち上位20%に入ると5点、下位20%に入ると1点として計算しました。そしてこの点数を使い、業種ごとに平均して比較したものが図表3です。
業種間を比較すると、いくつかの特徴が見られます。

たとえば「ヘアサロン」「アパレル」「エステ」などの顧客接点が比較的多い業種では、「自分の行動に対する納得感因子」が高いことがわかります。一方で顧客接点が比較的少ないと思われる「スーパーマーケット」「ドラッグストア」の業種では、従業員満足度が高くない状態にあります。「外食(上場・非上場とも)」では、第3因子(チーム・組織環境因子)、第4因子(職場・会社の評価(働きがい)因子)が高いことがわかります。このように一口に従業員満足と言っても、業種ごとにその質が違うという実態が見えてきました。

本日のフォーラムでは離職率の問題に言及されている方が多くいらっしゃいますが、このデータから「どうすれば従業員は職場へ愛着を感じ、定着してくれるか?(=帰属意識を高められるか)」を分析することもできます。

 

【図表4】 「帰属意識」を高めるために影響を与えている項目

それを分析した結果、「帰属意識」を高めるために最も大きな影響を与えている項目は、「改善意識」であることがわかりました。それ以降は第4因子に分類される項目が並びますが、トップは第2因子である「改善意識」でした(図表4)。

この傾向は業種ごとに見ても大きく変わりはありません。業種ごとにいくつかの項目の違いはあるものの、1位が「改善意識」であることは共通しています。

 

【図表5】 「改善意識」を高めるために影響を与えている項目

では、「改善意識」を高めるにはどうすれば良いかという話になりますが、これを分析したところ、残念ながら「帰属意識」を高めることがもっとも影響力があるという結論(トートロジー)となりました(図表5)。ただ、2位以降に目を向けると第2因子が多いことから、自分の仕事への納得感を高めることが「改善意識」を高め、それが「帰属意識」の向上にもつながるということが言えるでしょう。

今回は従業員満足についての分析を行いましたが、今後は顧客満足と従業員満足、さらにそれらが経営指標に与える影響について分析していきたいと考えております。

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