おもてなし規格認証取得企業事例セミナー
イベント報告レポート おもてなし規格認証

2019/08/14 更新

おもてなし規格認証

※記載されている会社概要や役職名などは、イベント(掲載)当時のものです。ご了承ください。
経済産業省創設「おもてなし規格認証」は、『おもてなし規格認証取得企業事例セミナー』を2019年7月18日に開催しました。本記事はその模様をレポートするものです。

NPO法人日本ホスピタリティ推進協会 理事長 斎藤敏一氏:ご挨拶

経済産業省が2017年に創設した「おもてなし規格認証」は、安倍総理の「我が国の経済が持続的な成長を続けていくために必要な残るピースは何か。それはサービス産業です。(中略)『日本再興戦略』に、サービス産業の生産性向上を経済成長の切り札の一つと位置付けました。(中略)今こそ、『サービス生産性革命』を起こす時であります」※1という発言から動き出しました。現在では、サービス産業を中心に12万事業所※2が認証を取得しています。また、今年はラグビーワールドカップ、さらに来年にはオリンピック、パラリンピックを控え訪日外国人の増加が予想されています。本認証の取得を目標に努力しますと、各土地で国内外のお客様を温かく迎え入れていただくための「おもてなし(顧客満足度の向上)」と、「(サービス産業の)生産性向上」が培われます。本日は、インバウンドの先進的な取り組みもされている4社の講演を参考に、認証取得をご検討いただければ幸いです。

※1平成27年3月2日、日本生産性本部主催「生産性運動60周年記念パーティー」でのスピーチより。※2令和元年6月1日現在

NPO法人日本ホスピタリティ推進協会 理事長 斎藤敏一氏

経済産業省 商務・サービスグループサービス政策課長(併)教育産業室長 浅野 大介氏
―「おもてなし」と「生産性向上」―

サービス業はGDPベースで約75%(約360兆円)と、わが国の経済の大半を占めています。しかし、他の産業と比べて非常に生産性が低く、ほとんどの方が満足な賃金をもらえていないのが現状です。もっと国民が給料を稼げる豊かな国をつくりたい。そのためには付加価値の向上(おもてなし)と、労働投入量をどれだけ効率化できるのか、この両方を追求していく必要があります。さらにちゃんとした労働分配率を掛け算することによって、給料に反映されます。それが従業員のモチベーションとなり、さらなるサービスイノベーションが起こると、それを高い値段で買ってくれる人が現れ、給料に反映される、そんな好循環が生まれる社会のシステムをつくりたいと考えております。

本認証は、審査の過程そのものが業務改善に向けた意識の浸透につながります。現在のサービスの在り方を見直し、生産性を上げ、努力して取得した認証は、従業員の勲章です。そこに価値を見出す企業が多く、現場改善の勢いをつくるために使われています。こうした企業の取り組みをこれからもご支援していきたいと考えています。

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経済産業省 商務・サービスグループサービス政策課長(併)教育産業室長 浅野 大介氏

一般社団法人サービスデザイン推進協議会理事 平川健司氏
―おもてなし規格認証 制度概要―

国内のサービス産業事業者のサービス品質を「見える化」するために「おもてなし規格認証」を創設しました。本認証は、紅・金・紺・紫の4つのレベルに分かれています。WEB上でセルフチェックをすると取得ができる「紅」認証のほか、日本ホスピタリティ推進協会をはじめとした認証機関による審査によって取得ができる「金」「紺」認証、また認証機関と認定機関の審査による最上位の「紫」認証があります。設問数は30項目あり、各認証において必要な基準を満たすことでマークや登録証または認証書を取得することができます。「情報提供」「設備」「職場の環境」「業務改善」「ツール導入」「人材育成」「顧客理解」等の観点で構成された項目をチェックすることで、自社の強みや、改善すべきことを見直していただけます。さらにオプションでインバウンド対応10項目のチェックを受けると「トラベラー・フレンドリー認証」の取得ができます。

組織の実行度合いを計るチェックツールとして、取り組みを継続的に行う体制づくりや標準化といった経営層向けの項目と、現場で改善活動が行われているかどうかを確認する項目をつくることで、現場が無理なくモチベーションをもって業務改善に取り組めるように設計しています。第三者機関の審査を上手く活用し、現状把握や改善の促進に役立てていただけますと幸いです。

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一般社団法人サービスデザイン推進協議会理事 平川健司氏

株式会社 西村屋 代表取締役社長 西村 総一郎氏
―城崎温泉を代表する旅館における おもてなし教育と経営革新―

城崎温泉があります兵庫県豊岡市は観光が基盤産業となっており、2018年実績で宿泊者数62万人、日帰り者数27万人にお越しいただいています。また、2020年はオリンピック・パラリンピックを見据えて、城崎温泉年間宿泊客数80万人、そのうち外国人宿泊客数10万人を目指しております。

このような背景の中、創業150余年となる旅館を運営する当社は、城崎温泉の街全体を牽引する立場として、人口減少で財政も厳しい今を生き抜くために、3つの戦略を考えました。

まず1つ目の戦略は、「リピーターづくり」です。お客様アンケートをとったところ、「〇〇さんにお世話になりました」といったスタッフとの交流の部分に一番感動していただいていることがわかりました。そこで、スタッフが接客に時間を使うことができるように、IT導入補助金によりITシステムを導入しました。これにより、フロントスタッフ、部屋案内係、客室係等の各スタッフと宿泊客との緊密なコミュニケーションによって得られた情報が顧客データベースで管理できるようになりました。また、独自のシフト管理システムを活用することで、次回の宿泊時に個別化されたおもてなしができ、スタッフの担当配置の最適化にもつながっています。このようにIT化していくことで、スタッフはお客様との交流に集中することができ、働き手の満足度向上と、お客様のリピートにつなげられるようになりました。

2つ目の戦略は、「インバウンド需要の開拓」です。対外的には、認知度向上に向けてミラノの展示会で日本料理の実演、対内的には日系アメリカ人社員の採用や、語学系出版物の制作・販売をする株式会社アルクとの教育プログラムの開発を行い、訪日外国人客への接客能力の向上に努めました。

3つ目の戦略は、「温泉街の付加価値向上」です。街の飲食店不足解消と滞在の魅力向上を目的に、但馬地方を中心とした食材・食文化・生産者にスポットを当てた当社初の食ブランド「さんぽう西村屋本店」を出店しました。

これらの取り組みにより、宿泊客だけでなく、訪日外国人宿泊客の割合が5年連続で前年度比を上回り、売り上げは5年前と比べて21.9%アップしました。また、おもてなし規格認証では、西村屋本館で最上位の「紫」認証、西村屋ホテル招月庭で「紺」認証を取得しました。

今後はさらにデジタルツールを活用し、その分スタッフにしかできない付加価値をお客様に提供することで、滞在日数や消費額を促進し、さらなるリピーターにつなげていきたいと考えています。

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株式会社 西村屋 代表取締役社長 西村 総一郎氏

株式会社 鹿沼カントリー倶楽部 代表取締役社長 福島 範治氏
―理念経営による経営改革とゴルフ業界をリードする様々なイノベーション―

栃木県鹿沼市にあるゴルフ場「鹿沼カントリー倶楽部」は、業界初となる「紺認証」を取得しました。ゴルフ場業界は、1995年をピークにゴルフ人口が減少し、ゴルフ会員権のマーケットも年々減少しております。当社もこの煽りを受け、2004年には民事再生法による自主再建をしました。そして2008年には「また来たいと思ってもらえるゴルフ場を目指して」というビジョンを掲げ再スタートしました。ゴルフは伝統やルールを大事にする文化ではありますが、他のサービス業と同様にこれからはお客様と向き合う時代が到来していると考え、おもてなし規格認証の取得にチャレンジしました。

取得に向けて、6つの取り組みを行いました。まず、「ビジョンの浸透」に向けた取り組みです。当社では、行動指針をまとめた「12の約束」という信条があるのですが、毎日の朝礼で「12の約束」に沿った体験談を持ち回りで発表し、最も良かった事例は毎月全社員の給料袋に入れて配っています。このように、目に見える形でビジョンを伝えていくことで、チェック項目にある「ビジョンの共感度」で全体平均4.16点(5点満点中)を獲得することができました。2つ目は、「お客様の声」カードの取り組みです。このカードのポイントは、お客様に記入いただくのではなく、“スタッフがお客様の声を聞いて記入”することです。現在では3コースで年間8500枚程集まるようになっており、日々の改善に役立てるだけでなく、“自然にお客様と会話するツール”になっています。また3つ目は、「新卒採用」です。地方のゴルフ場で新卒採用は珍しいかもしれませんが、新しい世代のお客様にもゴルフを楽しんでもらいたい、という思いから新卒採用を続けております。4つ目は、「会員メンバーの維持・獲得」です。現在在籍する4874名を維持するため、メンバーはゲストより安く回れるほか、年3回のイベントに参加できる、といった特典を付けています。また、スタッフがメンバーとの交流時に名前を覚えていただけるよう、名札を大きくし、仮名をふるなど工夫をしています。さらに、メンバー紹介キャンペーンを行い新規メンバーの獲得にも取り組んでいます。5つ目は、「コース管理改革」です。経験や勘でつくられたコースから、科学的に管理したコースに改良することで、生産性の向上に成功しました。6つ目は、「当社独自のゴルフ企画」です。たとえば、35歳以下の会員制度の構築や、地域の子供向けにゴルフ場で遊ぶイベントなどを企画しています。

このような取り組みの結果、メンバー入会者が前年比156%、来場者数は前年比101%、売上は前年比103%と堅調に伸びています。今後も、IT導入補助金によるデジタル化、そしてこれまでのノウハウと若手スタッフによる新しい風により、新規・リピーター・メンバーへと育成する仕組みづくりを強化していきたいと考えています。

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株式会社 鹿沼カントリー倶楽部 代表取締役社長 福島 範治氏

神戸牛 吉祥グループ トレーニング部 兼 人財開発部 部長 橋本 峻氏
―神戸牛をメインとした、卓越したインバウンド対応と人材育成―

すき焼き、しゃぶしゃぶ、焼肉、ハンバーガーなどの神戸牛を扱うレストランを展開する当社は、5年連続売上増、店舗数も5年で9店舗から52店舗へと年間10店舗ペースで拡大しています。現在スタッフは450名でその内、約半数がアルバイトという構成です。しかし、こうして個店から組織に成長していくにあたり、大きく3つの課題が顕著になってきました。そこで、全国の基準で自社の「取り組み」や「活動」を評価いただくことで社内の統率を図りたい、という思いからおもてなし規格認証に挑戦しました。

1つ目の課題は、「価値観の齟齬」でした。有休取得や給与査定の基準など、組織変革にあたってルールを設けた際に一部から反発がありました。そこで、当社の目指す方向を「見える化」するために、おもてなし規格認証にチャレンジする店舗を選抜制にしました。最終選考の結果、47店舗中7店舗での実施が決まりました。このように選抜にしたことで競争意識が芽生え、「来年はうちもチャレンジしたい」といった店舗が出てくるようになり、組織として価値観の統一が出来てきました。

2つ目の課題は、「ブランド維持向上」でした。たとえば、A5ランクのお肉でも食べる部位によってお客様が抱く神戸牛ステーキのイメージにギャップが生じます。神戸牛をお客様に伝える方法は、メニュー説明などの 「直接接客」と、キッチンから聞こえるスタッフ同士の声や、鍋で焼くジューっという音などの「間接接客」の大きく2つあります。しかし、直接接客ができる時間は10~15分程度。つまり、多くは間接接客です。このような課題に対し、MS&Consultingが提供するお客様アンケート「カスタマーリサーチ」に取り組んだ結果、8カ月間で調査項目「お料理の味・見た目」は8.86%アップ、「提供タイミング」は8.82%アップ、「お店の雰囲気」は7.65%アップさせることに成功しました。

また、お客様への通訳や店舗へのアテンド対応をする部署「神戸牛コンシェルジュ」では、新たな価値創出として海外スタッフがメインで活躍しているのですが、立ち上げ当初はこの取り組みは売り上げにつながるのか、などと他部署から疑問視されてきました。しかし、この部署がおもてなし規格認証で紺認証を取得したことで、社内から一目置かれる存在になりました。

3つ目の課題は、「サービス品質の向上」でした。選考プロセスの中で、店長と面談をしていく内に、売上管理、食材管理、人件費など店長が追いかけるべきKPIがたくさんあり、優先順位が付けられない状態であることがわかりました。そこで会議や面談などを通して、売り上げ最優先の意識から、顧客満足度向上の先に売り上げがあることを伝えていきました。すると、日本人社員からも「海外のお客様とコミュニケーションをとりたい」という意見があがり、社内のネイティブスタッフが講師となり、中国語、英語講座を開講したり、外部講師による(言葉、表情、動作などの)接遇研修にも自発的な参加が見られる様になりました。

このように、一つひとつの取り組みの意味や価値を見える形で伝えていくことで、顧客満足度の追求という言葉がスタッフに浸透していったことは大きな成果だと考えています。

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神戸牛 吉祥グループ トレーニング部 兼 人財開発部 部長 橋本 峻氏

株式会社ワンダーテーブル 代表取締役社長 秋元 巳智雄氏
―外食業界におけるホスピタリティ経営の神髄と先進的なインバウンド戦略―

当社はニッチトップブランド戦略により、10カ国125店舗(国内51店舗、海外74店舗)で、売上200億円規模の飲食店経営をしています。昨年の訪日外国人数は3100万人ですが、その内の約39万人に当社の店舗へお越しいただいており、国内51店舗を展開する内、11店舗はトリップアドバイザーでエクセレンス認証を取得しています。また、おもてなし規格認証は2018年に全店で取得、2019年には外食業界で初の紫認証を2店舗で取得しました。

当社では「外国人スタッフへの理念浸透」に向けた取り組みとして、雇用している外国人の国籍に併せて7カ国語で理念(クレド)を作成しています。また、店長による教育のばらつきがないように、企業理念、初期教育(ハウスルール)、各ブランドのSOP(基本的な業務手順)などはEラーニングを実施し、店舗ごとに何人見たのか、どの項目を見たのかを把握できるようにし、その後確認テストをしています。さらに、10年以上継続している「ウィークリートップメッセージ」の配信や、274名いる社員全員と一人ひとり「トップ面談」を実施し、理念の浸透を図っています。そのほか、外国人にとって居心地のよい環境をつくるため、まかない料理には、牛肉のメニュー、豚肉のメニューなどをつくり、外国人の宗教や文化に配慮しています。

店舗の取り組みとしては、今回紫認証を取得した「モーモーパラダイス歌舞伎町本店」の事例をご紹介します。同店は、単価3000~4000円のしゃぶしゃぶ業態で、年間6万人が来場。日によっては8割が外国人のお客様で賑わっています。そこで、外国人スタッフにも調理補助、洗い場、さげものといった業務だけでなく、店舗運営の戦力となってもらうために、外国人アルバイトを中心に構成したインバウンド対策チームをつくりました。お客様の入店~退店までの基本的な流れを英語で書いたハンドブックをつくり、それを使ってロールプレイングをします。また、多言語対応スタッフは、レセプションにいながら他のアルバイトスタッフの教育もしています。入店から退店までのきめ細やかな顧客フォローの動画を撮り、スタッフ間で共有し同じサービスが他のメンバーにもできるようにしました。たとえば、入店時に席までご案内しながら「Where are you from?」と聞き、「I am “from” Thailand. .」と返答があれば、「サワディカップ(こんにちは)」と一言添えるといったカジュアルトークをするだけでとても喜んでいただけます。母国語で食べ方の説明など一通り行ったあと、最後に記念撮影のコーナーへご案内すると、お客様が勝手にSNSなどに上げて宣伝してくださいます。単価アップの対策としては、短角牛オリジナル和牛のコース(6500円)をお薦めしています。折角だからオリジナルの和牛を食べてみようと思ってくださり、結果的に単価が上がります。それがまた、トリップアドバイザーのコメント評価につながり、ランキングが上がっていくという仕組みです。

このようにして、39万人(歌舞伎町店では6万人)の外国人を接客しています。今後も訪日外国人が増える中で、会社がいかに外国人スタッフを採用・育成し、外国人観光客をもてなせるようになるか。おもてなし規格認証にはたくさんのチェック項目があるので、お店のレベル、企業のレベルを上げるためにも、活用いただけるのではないかと思います。

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株式会社ワンダーテーブル 代表取締役社長 秋元 巳智雄氏

NPO法人日本ホスピタリティ推進協会 理事/株式会社MS&Consulting 常務取締役渋谷行秀氏
―おもてなし規格認証取得の効果について―

おもてなし規格認証の認証機関である当協会は、1992年に設立されました。主にホスピタリティの啓蒙のため、ホスピタリティ資格認定「ホスピタリティ・コーディネータ(以下、HC)」、「アソシエイト・ホスピタリティ・コーディネータ(以下、AHC)」の普及活動をしています。このHC、AHCは、「紺」認証以上を取得する際の人材要件にもなっています。人材要件とは、「ホスピタリティ・コーディネータ」もしくは「アソシエイト・ホスピタリティ・コーディネータ」の取得を指します。HC取得者は、自社でAHC資格の認定が可能となりますので、会社の中で誰かお一人が取得をすると、他店舗への教育もできるようになります。書類審査、現地審査、人材要件をクリアしていただくと紺認証が取得できます。

おもてなし規格認証の効果について「企業単位ではなく、各店舗(施設)単位で認証されるため、国の認証を自分たちで獲得した、という従業員のモチベーションにつながる」という声を多くいただいています。本認証は、取り組みが各店舗の中できちんと構築されていないと取得できないようになっています。さらに、各店舗の強みと弱みを把握するだけでなく、経営のアドバイスもしてもらえることがメリットとおっしゃる経営層、本部スタッフの方もいらっしゃいます。このように、店舗任せにするのではなく組織として全店舗の底上げをしたい、と考える企業に役立てていただきたいと考えています。

渋谷行秀のロゴ

NPO法人日本ホスピタリティ推進協会 理事 株式会社MS&Consulting 常務取締役渋谷行秀氏