【第7回クオリティサービス・フォーラムレポート】 行動指針と優先順位を示し 社員のホスピタリティを醸成する



株式会社Zoff

URL:http://www.zoff.co.jp/
代表者:上野剛史 代表取締役社長
所在地:東京都港区北青山3-6-1 オーク表参道6階
設立:1993年3月
事業内容:メガネ・サングラス、ケース、クリーナーなどの販売、その他の付属品の販売、その他の付帯する一切の業務
展開するブランド:Zoff
社員数:1128名、アルバイトを含む(2013年4月現在)


※『季刊MS&コンサルティング 2014年冬 特別号』掲載
※記載されている会社概要や役職名などは、講演(掲載)当時のものです。ご了承下さい。


人材育成によって企業競争力を高める

眼鏡をファッションアイテムとして、TPOに合わせて掛けかえるという新しいライフスタイルを提案する株式会Zoff(ゾフ)。その革新的なコンセプトが若者を中心に話題を呼び、1993年の創業時から行列のできる繁盛店となった。2010年に売上は100億円に達し、2012年には社員数が1,000名を超えた。現在は、日本で146店舗、中国で23店舗を構えるグローバルブランドへと成長を果たしている。しかし、業態を真似て参入する企業も現れ、市場の奪い合いは激化。また、企業の拡大にともない、社員一人ひとりに目が行き届きにくくなり、マネジメントの強化という課題も浮上した。こうした背景から、2009年にミステリーショピングリサーチをスタートさせた。


ゾフの店舗運営責任者で事業本部 本部長の山本直樹氏は、「商品や売り場の工夫だけでなく、改めてホスピタリティを追求し、人による差別化が必要と考えました。お客さまの満足を追求しているだけでは、大満足はいただけても、感動は生まれませんし、業績も上がりません。各スタッフが自分で考えて行動し、良いサービスとホスピタリティの両方を持ち合わせた人材の育成を目指しています」と話す。同社ではそのために、スタッフの自主的な行動を促すための「行動指針」「クセ付け」「サポート」という、3つの仕掛けづくりに取り組んできた。


行動指針を策定し社員へ判断基準を提供

『行動指針』の取り組みとして、同社では優先順に、まず相手の立場で行動しようという「Interest」、プロ意識をもつ「Professional」、迅速かつ効率的な対応を求める「Speed」の3つの頭文字をとった「IPS」という呼称で社員へホスピタリティの基準を示し、浸透を図るようにした。「IPSによって、お店を運営する仲間たちが共に進む、1つの不変的な方向性を示せたことで、自主的な学びが加速することを期待しています」と、代表取締役社長の上野剛史氏は語る。


行動指針を定める前の同社は、企業規模の急拡大を背景に経験者採用や若手新卒社員の店長登用が増え、さまざまな価値観をもつスタッフが、顧客を満足させるための活動を自身で優先づけしながら、思い思いに取り組んでいるような状態だったという。そこで、全スタッフが一丸となって行動指針の策定を行なった。その際にこだわったことは3つ。1つ目は”皆で指針を決める”ということだ。全国からエリアマネージャーを集め、何度となく会合をもって徹底的に議論。最終的に、IPSが決まるまでに2か月を要した。

その意図について、山本氏は、「たとえ時間がかかっても、皆でコミットした行動指針をつくらなければ、実行に結びつかないと考えました。この策定作業が何より苦労しましたが、決めた後の浸透度は速く、スタッフ同士でIPSを使った会話が自然と生まれているのを見ると、苦労の甲斐があったと思っています」と話す。2つ目は、表彰における工夫。毎月開催する店長会において、顧客からの感謝のコメントやクレームなどを集め、IPSのどの要素に該当するのか分類したり、成功点や改善点を議論し合う。そして、その中でIPSを基準に審査を行い、特に優秀な接客事例に対して「ホスピタリティ賞」を授与する。また、3つ目は、IPSという言葉を積極的に使うこと。IPSを共通言語として会話で用い、浸透を図っていくのが狙いだ。


IPSを現場のスタッフまで落とし込み、成果に結びつけるために、IPSに沿った自発的なホスピタリティを習慣づける『クセ付け』も実施している。その一例として、毎年ロールプレイング大会を開催。3回目となる2014年度の参加者は251人。スタッフの4人に1人が参加するようになっている。「IPSを審査基準とすることで、スタッフの行動をそこに集約させていくことができました。10年もの間、顧客に感動していただくためにどのように動いたら良いか分からなかったものが、IPSの設定以降は1年程度でそれを一人ひとりが整理でき、動けるようになってきたのは、大きな価値です」と上野氏は語る。


参加を促す施策は、受賞者をとにかく褒めること。受賞者を店長会に招いて社長から表彰したり、時には研修で講師として登壇してもらうこともある。「参加意識をもって積極的にロールプレイングに取り組み、お客さまを満足させ、会社に認められるスタッフの姿を皆の前に示すことで、努力した人の社員満足度を高めるほか、社員全体に企業の評価軸を理解してもらう機会にしています」と、研修を担当するゾフ教育部 マネージャーの関田誠氏は説明する。

さらに、IPSを現場に落とし込む『サポート』のために、店長に向けた研修を実施。10名ほどのグループでケーススタディを通してIPSを議論し、店舗でもスタッフとIPSについて話し合えるようバックアップしている。


こうした取り組みを通じて、顧客からの感謝コメントが少しずつ増加。2013年9月時点で44件に上っている。半数弱の店舗で、年1回は顧客からの感謝エピソードが生まれるようになった。また、リピーター率も着実に伸長。前年比を上回る成果を出し続けている。MSでも毎月、好スコアを維持できるようになり、クオリティサービス・フォーラムにも選出された。顧客に喜んでもらうことで心が通い、互いに満足を共有し合える。そんな環境が整いつつある。


株式会社MS&Consulting 常務執行役員 渋谷 行秀より

ゾフ様は、行動指針に独自の優先順位をつけていらっしゃることが素晴らしいと思いました。特に、ホスピタリティを無関心と興味共感という軸にまとめられている点はさすがです。第一に「Interest」、お客さまに関心をもつということを優先されています。それがなければ大満足があっても感動はありません。私も何度かゾフ様の研修にお邪魔していますが、一人ひとりが主体性をもって参加されているので、見ていてこちらまで楽しくなります。その精神がゾフ様の改善活動を下支えしているのだと思います。


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