理念・価値観
コンセプトは、「プロの肉屋がうなる焼肉屋」。商品力をベースにしたマネジメントシステムが特徴である。
経営計画
出店計画を含めた3ヵ年の経営目標が立てられており、年度計画の中では月毎の具体的なアクションプランまでが策定されている。この経営計画は管理職7名が一緒になって策定しており、ミーティングと社内情報システムを徹底活用することでアルバイトを含む全社員で共有している。
業態コンセプト
萬野屋の店舗では80種類もの肉のメニューを擁し、技術・知識にも徹底的にこだわっている。全スタッフが肉のプロとしての教育を受けており、そのレベルは他社からも研修の要請があるほどだ。
オペレーション・サービス
特筆すべきは、愛顧客化戦略である。アンケートとDMを効果的に活用した〝One to Oneマーケティング〟であるが、これはただのアンケートとDMによる販促戦略ではない。
まず、“常連になって欲しい”というお客様から一日10組に、「つーしんぼ」というアンケートをお願いしている。アンケートではなく「つーしんぼ」という名前にすることで、お客様は、熱心に接客するスタッフの通信簿(評価)という意識から、より誠実に回答し、スタッフは、これをきっかけに会話の中からお客様の好みや改善点を聞き出す。まさに「接近戦営業」が実践されているのだ。
さらに、その会話の内容を盛り込んだDMを2週間以内に手書きで送る。この時点で、一律のDM販促ではなく、個別のコミュニケーションが成立している。その結果、通常であれば1~2%程度のDM反応率が萬野屋では20%にも上る。
しかし、このような密度の濃い取り組みを全てのお客様に対して継続して行うことは難しい。一日10組と決めることで、月300組のお客様に対する着実な“One to Oneマーケティング”を継続して実践することに重きを置き、10年間継続している。その仕組みが愛顧客化戦略であり、全売上高に占めるリピート比率は昨年一年間だけでも44%から50%に増加した。
マネジメントの仕組み
毎週の店長会議では、着地売上、FL数値に加え、全品の棚卸し結果とその他経費についてまで細目に渡り確認する。ミステリーショッピングリサーチの結果についても、調査結果が上がってから1週間以内に、全スタッフがミーティングにより共有する。
評価面では、社員は4段階、アルバイトは6段階の資格が存在し、プロとしての知識を強化するため、筆記テスト・実技テストを含む審査が行われる。さらに、店長一人ではなく、管理職全員がアルバイトを含む全社員について知識面も含めた総合的な評価を行うため、高い納得感が得られ、プロを目指す意欲が高まる。
そうして日々工夫されるオペレーションに対して、出勤した全員が毎日、社内の情報システムに日報を書き、管理職が必ずフィードバックするという仕組みになっており、それによって日常的なノウハウ共有が行われる。また、店長は自店に一週間のうちの半分しかシフトを入れず、残りは他の4店に入ることになっている。これらのルールは、適正評価の実現に寄与するのみならず、スタッフ全員のスキルアップとマネジメントノウハウの共有に大きく貢献する、萬野屋の重要なシステムである。
このような多角的なマネジメントの仕組みがあった上で実行される愛顧客化への取り組みが、多くの顧客から愛される萬野屋の強みであると言える。