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変わり行く時代に合わせた、デベロッパーとテナントの共存を実現

社団法人日本ショッピングセンター協会(ショッピングセンター)

社団法人日本ショッピングセンター協会

東京都中央区勝どき3-12-1 フォアフロントタワー13階

会社ウェブサイト:http://www.jcsc.or.jp/

『季刊MS&コンサルティング 2011年秋号』掲載
聞き手:土田賢志、文:高島知子
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
現在全国各地で展開されているショッピングセンター(以下SC)は、デベロッパーとテナントが協動して顧客に向かい合う独特の形態だからこそ、その展開には学ぶべき点が多い。日本で初めて開設されたSCである玉川高島屋SCに開発当初から携わり、現在も業界の発展に寄与されている日本ショッピングセンター協会顧問(前専務理事)の大甕聡氏に、お話を伺った。

デベロッパーとテナントの関係がSCの活況を左右する

今、SCという形態は非常になじみ深いものですが、ビジネス視点で見ると都市型、郊外型、オープンエアモール型などさまざまなタイプが展開されています。現在の状況をどのように捉えていらっしゃいますか?

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大甕聡氏。1941年生まれ。64年小樽商科大学卒業。69年東神開発(株)入社。88年(株)総合都市開発代表取締役社長。2000年東神開発(株)代表取締役。02年(社)日本ショッピングセンター協会事務局長。03年同協会専務理事を経て11年より現職。

その地域のお客様の特徴や要望、また他店との競争などの環境要因に応じて、各事業者がさまざまな方針でSC形態を展開していますが、一部では淘汰が起こっているのも実際のところです。

SCというのはデベロッパーとテナントの両輪によって成り立っている独自の形態ですから、その関係性は事業の活況に大きく影響します。もちろん、施設の設計や交通条件などもお客様にとっては大事な要素ですが、にぎわっているSCというのはそうしたハード面だけでは決して創れません。

当協会では、SCの発展においてデベロッパーが適切にテナントをサポートすることは不可欠だと考えています。そこで、SCに携わる者同士の研鑽と交流をモットーとして、その経営課題を解決するためのセミナーやビジネスフェアの開催、ロールプレイングコンテストなどの事業を行っているのです。

異業種や外資系企業の参入などもあり、業界は今、非常にバラエティに富んだ状態ではありますが、昔から日本に根付いているデベロッパーとテナントとの互助共栄の意識が薄れてくると、経営に少なからず影響を及ぼすのではないか、と思っています。

ただし、昔ながらのやり方をただ守ればいいというわけではありません。グローバルスタンダードを見据えた新しい考え方や施策を臨機応変に取り入れながら、「ネオ・ジャパニーズ・スタイル」とでもいうべき経営指針を作り上げていくべきなのではないかと考えています。

日本で最初に根付いたSCの形態は、アメリカで生まれたタイプとは少し異なるものだったそうですね。

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フランクフルトで、歩行者天国となっているツァイル地区に位置するツァイルガレリー。間口は狭いが奥が広く、全長800 メートルのモールになっている。展望テラスからは市全体を見渡せる。

ええ。SCは1922年に北米で生まれたビジネスモデルで、当初はスーパーマーケットを発展させた形のネイバーフッド型(近隣型)・コミュニティー型(地域型)が中心でした。かなり遅れて1950年にモール型と呼ばれる百貨店を核店舗とし、多くの専門店や、銀行、証券会社、旅行代理店、フィットネスなど、生活に必要なあらゆるものが揃う小さな街のような、リージョナル型(広域型)のSCが登場しました。それを契機に1960年代はその数を爆発的に増加させ、またたく間に全米を席巻し、SCは巨大な産業に成長していきました。

ただ、いずれも北米の車社会の話ですから、基本的にお客様は車で来店しますし、敷地も日本では考えられないほど広い。それに、食料品ひとつ取っても、向こうの人はまとめ買いに抵抗がありませんが、日本人は新鮮なものを求めてこまめにスーパーに足を運んだりしますよね。そうした消費者行動の違いから、アメリカのSCをそのまま日本に応用するのは無理だという見方が一般的でした。

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ニューヨーク、マンハッタン対岸に100ヘクタールに及ぶ面積をもつニューポートセンター。分譲・賃貸マンション、オフィスビル、ホテル、商業施設を含む大規模コミュニティーの核を成す超広域型SC

1969年、高島屋を母体としたデベロッパーの東神開発が、日本で初めてのSCとして玉川高島屋SCをオープンさせました。これは、北欧はスウェーデン、ストックホルムの駅の裏手にあるSCをモデルにしたものでした。

このまったく新しい形態の開発の立役者となったのは、倉橋良雄氏という高島屋の企画室長(後に代表取締役専務、社団法人日本ショッピングセンター協会 第二代会長)でした。当時の高島屋の社長に命じられて欧米に視察に行った倉橋氏は、車メインではなく公共交通機関での来店が中心となっていたストックホルム郊外の中規模のSCにヒントを得て、同じ形態ならば日本で実現できると踏んだわけです。私は彼の下で仕事をさせていただきましたが、彼の行動力は社内どころか当時のビジネスマンとして群を抜いていたと思います。

具体的には、どう日本に適したビジネスモデルを構築されたのですか?

倉橋氏は、立地条件などは北欧のSCを参考にし、SC事業そのものの理論はアメリカに学びましたが、いわゆるマネジメントシステムは独自に構築しました。

着眼点は、日本ならではの互助共栄の精神です。どのSCも基本的に、デベロッパーが貸借人となってテナントを誘致し、テナントからの賃料で事業を運営するわけですが、この関係は欧米では非常にドライなものとなっています。売れなければ出て行ってもらう。確かに、ビジネスですから、当然の話かもしれません。

ですが日本では、デベロッパーとテナントの関係は持ちつ持たれつ。共同事業として互いに協力し合って、いかにお客様に価値を提供できるかをともに考えていくべきだ、というのが私たちの打ち出したコンセプトでした。そこで、欧米で主流の固定家賃収入を導入せず、賃料の最低ラインは設けつつも売上歩合で変動するようにし、テナントが事業を運営しやすいような仕組みを整えたのです。

相互の信頼と、互助共栄の精神、そして自主性の尊重。この3本柱をデベロッパーとテナント各店の双方で共有して事業にあたるという、非常に日本的なモデルが誕生しました。

日本独自のマネジメント「互助共栄」の精神

なるほど…。現在も行われている、デベロッパーによるテナントへの教育支援なども、当時の発想に根ざしたものなのですね。

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1969年、日本初のショッピングセンター形態の商業施設として、玉川高島屋SCが誕生した。北米のSCとは異なり、公共交通機関での来店を主に見越して開業した。

そうですね。今は日本にも都市型や郊外型など、 その地域の特性に合わせた様々なタイプのSCがありますし、競争が激しい場所ではその分厳しい方針があるでしょうが、少なくとも私がずっと関わっていた玉川高島屋SCは、一店たりとも退店させないことをポリシーとしていました。

とはいえ、どうしても各店の売上には好不調が出てくるものだと思うのですが、具体的にはどのような支援をされていたのですか?

t37-04それはもう、考えうる限りのことをしていましたね。貸借区画を小さくしたり移したり、店長などの人材を派遣したり、帳簿を丸ごと預かって指導したこともありました。また、SCに来店するお客様のリストは基本的にテナントを含めた皆の財産ですから、売上が厳しいテナントについては、そのリストを活用してダイレクトメールを打つなど、集客面でも可能な限りサポートしました。ミステリーショッピングリサーチの活用も大変有効だと思います。

逆に、家賃をまけるというのは、即効性があるように見えますが、基本的に避けてきました。なぜなら、家賃を下げたところで、テナント側ではその浮いた分は本社サイドでの何か他の補填に使われ、新しい営業施策につながっていくことはほとんどありません。家賃を下げるのは、SCのその個店のためには、ほとんど役立たないのです。

それから、デベロッパー側のテナントに対する方針も、一律ではうまくいきません。デベロッパーとしては、一店ごとに収益を上げてもらいたいのはもちろんですが、その利益の積み上げだけで使命が果たせているというわけではありません。SCの目的は、お客様にSC全体として価値を提供することであり、デベロッパーはテナントのセレクション(リーシング)や全体の活性化を通してそれを実現しているのです。

ですから、採算重視の店、売上はそこそこでもライフスタイルの提案として誘致している店、あるいは将来的に成長してもらいたい店など、各テナントのSCにとっての意義を明確にしておく必要があります。それがあって初めて、取るべき支援策の判断や振り分けができるのです。

テナントとデベロッパーの立場の違いから、利害が一致しないシーンも出てくると思います。そうした状況にはどう対応されているのでしょうか。

おっしゃる通り、賃料を言い出せば利害は相反しますし、そういう部分はほかにも少なくありません。そこで機能しているのが、テナント同士だけで組織する「商店会」です。これはデベロッパーとは独立させて、さまざまな課題に取り組んだり仕組みをつくったりしながら、純粋に自分たちテナントの事業を通してどうやってお客様や地域社会に貢献するかを考えるための組織です。自主性を持ってもらうためにも、SCのガバナンス上でも、私は必要な組織だと考えています。

ですが、最近では商店会を解体したり、会長がデベロッパー側の人だったりと、この形態がもっとも良いとも言えなくなりました。このあたりも、最初にお話しました「ネオ・ジャパニーズ・スタイル」としてはどのような形態が最適か、考えていかなくてはならない部分でしょう。

明確なグランドデザインを元に、顧客との関係を更新

これからのSC経営には、互助共栄という日本で生まれたSCの概念と、変わりつつあるビジネス環境や社会の状況を融合させながら、新たな形を打ち出していく必要があるということですね。

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玉川高島屋SCの現在の様子。今から20 年も前に、環境を意識したリニューアルを実施し、動線やグリーンなどの装飾にこだわって顧客に心地よい買い物空間を提案している。

そうですね。今は日本にも都市型や郊外型など、 その地域の特性に合わせた様々なタイプのSCがありますし、競争が激しい場所ではその分厳しい方針があるでしょうが、少なくとも私がずっと関わっていた玉川高島屋SCは、一店たりとも退店させないことをポリシーとしていました。

に、環境を意識したリニューアルを実施し、動線やグリーンなどの装飾にこだわって顧客に心地よい買い物空間を提案している。

玉川高島屋SCの例で言いますと、20年ほど前に、より顧客視点の施設になることを目指して「NewAdult Garden City 玉川」とのコンセプトを打ち出し、都市計画の専門家の協力を得て全面的にリニューアルしました。屋内にもグリーンの要素を取り込み、通路も公園の小路のように演出するなど、来店される体験自体をもっと楽しんでいただきたい、という意図で展開しました。

いくら地域密着とはいえ、地域の方の100%が来店しているわけでは決してありません。消費の低迷が言われてはいますが、まだまだ打てる策はいくらでもあると思っています。

様々な店が入居するSCには、お客様との関係構築の方法についても学ぶべき点が多いのではないかと思います。最後に、CS向上という点から、SC事業において大切にされてきた価値観を教えてください。

私が長きにわたってスタッフにいつも話していたのは、「下手なことをしたらお客様が許さないよ」ということです。たとえ社内の者をごまかせたとしても、ずっとご愛顧いただいているお客様はほんの少しの質の低下もお見通しなのです。これは、テナントさんとも共有させていただいていることですね。

もちろん、今は多様化の時代ですから、流行を追うSC、効率主義のSCなど色々あっていいと思います。ただし、どの事業者にもいえるのは、グランドデザインをしっかりと構築しておくことが、非常に重要だということです。楽な商売ができる時代では決してありませんから、状況が厳しくなったときに、原因と改善策、数値目標とそのための組織などのプランニングを即座に行う必要があります。そのときに拠り所になるのが、グランドデザインです。

確固たるグランドデザインを描き、それをテナントと共有しながらお客様と理想的な関係をつくっていくことは、今後も変わらないSC経営のスタンダードだと考えています。

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