事業ドメインを活かして自社ならではの支援策を


ガリバー×タッグプロジェクト 復興支援、車100台の使い道、あなたと決める。

一般からの意見のほかにも、企業・団体からの協力の申し出が挙がっているので、連携しながら恒常的に機能する仕組みをつくる意向だ。

株式会社ガリバーインターナショナル

東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルディング25階
会社ウェブサイト:https://www.idom-inc.com/


『季刊MS&コンサルティング 2011年夏号』掲載
取材:西山博貢、文:高島知子
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

株式会社ガリバーインターナショナルは、震災3日後の3月14日、支援策として被災地へ中古車1,000台の提供を発表。翌月11日には「TAG PROJECT」と称して、一般生活者から被災地での中古車の使い道アイデアを募集する場をWEB上にオープンした。この迅速な動きを可能にした背景と、そこに込めた思いを、同社マーケティングチームリーダーの北島昇氏に伺った。

社会との対話を通して課題を解決していく

各社が義援金拠出などの名乗りを挙げる中、自社の事業を活かした「中古車を提供する」という支援策は、メディアでも注目を集めました。実現までの一連の動きをお教えください。

当社は福島が創業の地で、現会長をはじめ経営陣には福島出身者がいるので、震災直後から「当社は何をすべきか」ということに皆の意識が向いていました。3月14日(月)には緊急役員会議が開かれ、「中古車1,000台の提供」が決定しました。その策の実行を私が預かることになったので、すぐにリリースの準備をしながら、現地の情報収集を開始したのです。


とはいえ、混乱が続く中では被災された方々に直接役立てていただくアプローチが困難だったため、現地で支援活動を行っているNGO、NPO団体への貸与から着手しました。また、4月には、一般生活者の皆様と中古車活用について話し合うために「TAG PROJECT」を立ち上げました。こちらには1,000台のうち200台を充て、使い道に関するアイデアをWEB上で受け付けています。


義援金などではなく「中古車1,000台の提供」という支援策に踏み出したのは、どのようなお考えからなのでしょうか。

役員会議では、義援金や支援金の拠出についても議論されましたが、最終的には、自社の事業ドメインを活かすべきとの結論に至りました。

そもそも企業とは、何らかの社会の課題を解決することにその存在意義があります。我々の場合ですと、車の流通を変えたい、車との新しい付き合い方を提案したいという想いをビジネスの根幹に据えています。ですから、今回の災害は未曾有の事態ではありますが、この新たな社会的課題に対しても、自社のビジネスの延長上で取り組むべきだと考えました。自ずと、今回の課題解決に対する当社の適切な答えとして、中古車の提供が決まったのです。


今回の災害において、行うべきことの優先順位をどのように考えられていたのでしょうか。

第一に、本業を立て直すことです。我々は全国に店舗がありますから、東北・北関東の店舗の営業再開をまず最優先としました。

次に、自分たちの存在意義と合致した支援策を実施することです。特に、それにはスピードと実効性の高さが重要であると私たちは考えました。

三つ目に、その支援の仕組みが社会に根付き、継続的に行われるようにシステム化することです。今回は実際に1,000台を提供するだけでなく、WEB上に「中古車がどのように被災地支援に役立つか」について意見を募る場を設けたことで、新たなアイデアや他社との協業案も生まれつつあります。


今回のように迅速に対応できた理由は、どのような部分にあるのでしょうか。

まず一つは、まだ18年目の若い会社なので、結束力が強いことが挙げられます。特にイントラネットに力を入れたり、全国の支店をテレビ会議で結んで朝礼を行うなど、普段から社内広報に重きを置いていることもその要因の一つです。経営陣の考えが社員に伝わりやすい素地ができていますし、トップの判断にもぶれがないため、社員も迷わず動くことができるのだと思います。

もう一つの理由としては、昨年から着手していた企業コミュニケーションの見直しが大きく影響していると考えています。実は、当社では昨年から、経営とコミュニケーションを近づけたいという考えの下、組織改編の準備やソーシャルメディアを用いたPR施策などに取り組んでいました。

企業の本当の姿が良くも悪くも明るみになっている今、経営とは世の中とどうコミュ二ケーションを取っているか、それを通してどのような価値を生み出しているかということ自体を指すようになってきています。

そこで、例えば昨夏には中古車の魅力を伝えるキャッチコピーをツイッター上で募集するなど、実験的な試みを通して世の中との対話を模索してきました。その中で、これからの時代に求められる企業とは、自社の事業軸、コアバリューを明確にした上で、広く世の中と問題意識を共有し、より良い価値の実現に向けて社会と共に歩むべきものだと確信し始めていたのです。そうした考えをトップとも共有した矢先の出来事だったので、TAG PROJECTのようなコミュニケーション施策にもすぐに着手することができました。

震災翌日の土曜日、電力不足が指摘され始めたので、我々が出稿している屋外広告などのライトをすぐに消しに行ったのですが、それをツイッターで報告したところ、瞬く間に拡散して驚きました。こうしたことからも、世の中と対話することで想いや姿勢を伝えることが結果的にブランディングにつながる時代なのだと実感しました。


最後に、今後の支援に関する展望をお教えください。

中古車の提供については、現在ようやく地方自治体とも連携が取れ始めているので、本当に必要な方々にきちんと届くようさらに尽力していきます。TAG PROJECTでは皆様からさまざまな意見をいただいているので、仕組み化できる部分は仕組み化しながら、当社ならではの活動を拡大していきたいと考えています。

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